『探偵！ ナイトスクープ』の大ファンである。万が一知らない人のために説明すると、視聴者から寄せられた個性強めの悩みや疑問を、探偵局員たちが依頼者とともにマジメに究明するという視聴者参加型のバラエティ番組だ。関西が誇る長寿番組で、物心つく頃から毎週家族でみていた。お腹がよじれるほど笑えるおバカな依頼もあれば、涙が止まらないくらい感動的な展開もあり、今でも毎週欠かさずみている。
つい最近放送されたのが、家の中で脱走したペットのヘビを探して欲しいという依頼だった。ヘビといっても手のひらサイズで、見た目はなかなか愛らしい。番組の中で、飼い主がその小さなヘビを自分の耳のきわに這わせている写真が出てきた。細長い体を器用にくねらせ、耳たぶの後ろからニョロリと頭をのぞかせている。はて、どこかで見たことのある光景だ。どこで見たんだっけ？ 結局思い出せないまま番組は終了し、数週間が過ぎた。
さて、毎晩ベッドの中でネットショッピングをするのが日課となっている私は、その日の就寝前もいくつかのオンラインストアを漫然と眺めていた。そしたらついに、あの“見覚えのあるカタチ”と再会したのだ。ドイツ出身の同名デザイナーが手がける、アンマンズのピアス。そうだ、私はあのときナイトスクープをみながら、このピアスを思い出したかったんだ！ 探偵に依頼せずともモヤモヤを解消することができ、無事に溜飲が下がったのだった。
アンマンズのモダンで有機的なジュエリーは、自然界の植物がインスピレーション源となっている。確かにそう言われてみれば、耳たぶから垂れ下がるニョロニョロのフォルムがつる草のようにも見える。複雑にねじれた曲線は生命体のようで、放っておくとどんどん伸びていきそうだ。職人による手仕事でひとつひとつ丁寧に、そして着実に、無機質な金属に命が吹き込まれていく。
いつかデザイナーに会う機会に恵まれたら、ナイトスクープのヘビの話をしたいと思っている。彼女は何と答えるのだろうか。もしも大のヘビ嫌いだったらどうしよう。気まずい空気が流れないように、そこだけはちゃんと調べておく必要がありそうだ。
https://annemanns.com/collections/pre-order/products/akdh-kh
illustration:Uca text:Eimi Hayashi
