酸素や水のように、当たり前の存在として日常に溶け込むジュエリーをつくりたい。そんな願いから、オー(oeau)というブランドは生まれた。酸素を表す元素記号「O」と、フランス語で「水」を意味する「eau」を掛け合わせた造語。デザイナーのメッセージが込められたひねりの効いたネーミングに、思わず「Oh!」と歓声が漏れる。
デビューコレクションからおもに使われている素材は、上質でクリーンな18Kホワイトゴールド。展示会を訪れ、新作に触れるたびに心がすぅっと浄化された気分になる。デザイナーの意図とはズレるのだが、私が勝手に抱くオーのイメージはサマージュエリーだ。夏といえばシルバーと思い込んでいた私に、ホワイトゴールドというワンランク上の涼やかな選択肢を与えてくれた。みずみずしく気品あふれるオーのジュエリーは、蒸し暑い季節にそっと涼を運んでくれる。
ところで、「水も滴る」という表現があるが、“drip" というネックレスを初めて見たときはまさにそれだ! と膝を打った。繊細なロングチェーンの先にツンと伸びたしずくのモチーフ。今にもポタリと落ちそうで落ちない。でもこのままずっと眺めていると落ちるんじゃないかと錯覚すら覚えながら、すっかりオーの世界に入り込んでしまう。シンプルで華奢なデザインにほんの少しの遊び心を忍ばせるのは、このブランドの得意技だ。
見ているだけで体感温度が下がりそうなしずくのネックレスを、夏の着こなしにぜひ取り入れたい。首のつまったトップスにこれひとつをさりげなくまとうのも素敵だが、ポスト・コロナの今こそ挑戦したいのが「オンライン映え」を意識したネックレスの重ねづけ。スタイリストの友人いわく「デザインは華奢なもので統一しつつ、チェーンの長さを変えることで、バランスのとれた表情豊かなデコルテになる」という。
重ねづけは人によってベストバランスが異なるらしく、実際にいろいろ試してみるしかない。さっそくジュエリーボックスをあさって、しずくのレイヤード仲間を探してみる。もう何年も眠りっぱなしのチェーンが、ついに日の目を見るときがきたと言わんばかりに数本出てきた。「こんなの持ってたっけ」というほぼ初対面に近い再会に、棚からぼたもち的な幸運を感じた。夏本番を前に、自分だけのクールな組み合わせを編み出したい。
illustration:Uca text:Eimi Hayashi