顔のパーツが全部丸いのが長年の悩みだ。輪郭だけでなく目も鼻も丸いし、唇も分厚くて丸みがある。十代の多感な時期から「お餅」や「たこ焼き」などのあだ名がつけられ、何十年も丸顔コンプレックスを抱えて生きてきた。むなしい努力もさんざんしてきた。高校のときに好きだった人の理想のタイプが中島美嘉さんだと知り、どうにか彼女の雰囲気に寄せたくて切れ長メイクを研究し、ひたすら虚ろな目で過ごしていた時期もある。二十代になり髪を思い切ってベリーショートにした翌日、当時付き合っていた彼に会ったら開口一番に「顔まるっ!」と笑われ、その翌日に急いでエクステを付けに行ったこともある。思い返せば、実に無益なことに時間とお金を費やした青春時代だった。好きな人に振り回されていた恋愛体質な自分がバカだなと思うし、ちょっと微笑ましくもある。
三十代になって結婚や出産を経験し、恋愛とはすっかり無縁の生活を送っている。もはや自分の顔の丸さなど、気にならないわけではないが、わりとどうでもよくなった。そして半ばあきらめの境地に達すると、丸いものに驚くほど寛容になった。ドット柄や丸メガネ、サークルモチーフなど、丸みを帯びたものはいっさい顔まわりに置くまいと敵視してきたが、今となってはむしろ仲間意識を感じて愛着が湧く。そんなわけで、私が今モーレツに恋する男性ならぬ「ジュエリー」も見事に丸い。
ロサンゼルス発、スピネリ キルコリンのギャラクシーリング “Acacia (アカシア)”。三つのシルバーリングをつなぐのは、イエローゴールドの小さな輪。さらにローズゴールドの小さなアクセントリングが二つあしらわれている。とにかく丸の要素しかないリングだ。絵の上手な友人がたまに私の似顔絵を描いてくれるのだが、彼女の描く私の顔はいつも大きさの異なる「◯」だけで構成される。「あんたの顔は丸だけで描けるわぁ」という彼女の誇らしげなセリフを、この幾何学的フォルムのギャラクシーリングを見ながらふと思い出す。知恵の輪のように連なる大小のリングは、ひとつの指に重ねれば大胆さとボリュームをともない、三本の指にまたいでつければ軽やかなアレンジを楽しめる。いずれにせよ、丸の組み合わせだけでここまでモダンかつシャープにみせるデザインには脱帽するしかない。「丸いは、美しい」。秀逸なバランスをたたえたこのリングは、私にそう語りかけてくるようだ。
サザビーリーグ(スピネリ キルコリン)
https://www.spinellikilcollin.com/
03-5412-1937
illustration:Uca text:Eimi Hayashi