往年の銀幕スター、エリザベス・テイラー。類稀なる美貌と達観した演技力で、ハリウッド黄金時代を支えた名女優。生涯で七人の男性と結婚した恋多き女性であり、無類の宝石好きだったことでも知られる。その並々ならぬ情熱は、恋の数だけジュエリーを持っていたといわれるほど。華々しい活躍の裏ではスキャンダルが絶えず、アルコール依存症や過食症など壮絶な闘病生活を繰り返し、波乱に満ちた人生を送っていた。それでも度重なる困難を乗り越え、自らの欲望に正直に生き抜いた彼女は、永遠のミューズとして世界中の人々から愛され続けている。
そんな大女優、エリザベス・テイラーに着想を得たのがノルウェー発の人気ブランド、トムウッドの「Liz(リズ)」。彼女のニックネームを冠したコレクションだ。スターリングシルバーにゴールドのコーティングを施した大小のフープが連なるピアスは、リズのタフな生き方を反映したようなチャンキーで力強いデザイン。ぎっしりと敷き詰められたジルコニアは、彼女が愛して止まなかったダイヤモンドの輝きを彷彿させる。エリザベス・テイラーという世にもドラマティックな女性の人生がトムウッドのクリーンな世界に映し出され、モダンなジュエリーとして見事に表現されている。
「偉大な女性には巨大なダイヤモンドが必要よ」。これは生前にリズが残した有名な言葉。天真爛漫な彼女らしい大胆で強気な発言だ。他の人が言えば嫌みに聞こえるかもしれない。仮にもし、セレブなママ友に同じことを言われたらマウント行為にしか思えないだろう。数々の栄光と苦悩を経験したエリザベス・テイラーの言葉だからこそ清々しいほどの説得力を持ち、名言として語り継がれている。
凡庸な私には巨大なダイヤモンドなど身分不相応だが、リズのような「強さ」には憧れる。40代の頃から精神的に病み、過食による体重の増減を繰り返していたリズは、体重が80キロを超えた時期もあったという。それでも一念発起して大幅な減量に成功。晩年もダイエットやオシャレを決してあきらめなかった。自分の過ちを素直に受け入れ、そこから果敢に這い上がろうと努力することは、歳を重ねるほど難しくなっていくものだ。でもリズの生き様を知れば、「強さは失敗から生まれる」ということに改めて気づかされる。
しなやかな輝きを放つ「Liz」のジュエリーには、リズのポジティブな姿勢が投影されているようにも思える。そのアンドロジナスなたたずまいを見ていると「ジュエリーに性別なんていらないわ!」という彼女の朗らかな声が聞こえてきそうだ。美しさと貫禄を備えたこのピアスを身につけたとき、いつもより凛々しい気持ちで前を向けそうな気がする。
ステディ スタディ(トムウッド)
https://www.tomwoodproject.com/
03-5469-7110
illustration:Uca text:Eimi Hayashi