耳もとに「輪っか」が欲しい。そう思ったのが数年ほど前で、以来フープ系イヤリングを地道に集めている。シンプルな王道タイプをはじめ、チャンキーなものからチェーン状に連なったデザイン、90年代風のビッグピアスまで、気がつけば充実した顔ぶれが揃ってきた。中には失敗した買い物もあるが、それでもコレクションが増えるのは嬉しいものだ。毎朝ジュエリーボックスを開けて、今日は何をつけようかと選ぶその数分間が、自分だけのひそかな幸せだったりする。
私はピアスホールが多いので、重ねづけがずっと定番スタイルだった。耳たぶから軟骨にかけて大小の輪っかやスタッズを組み合わせ、じゃらじゃらと飾ればそれだけでエンジンがかかる。だが、いつしかそこにマスクがついてくるようになった。両耳にピアスをいくつもつけていると、着脱時にどうしても邪魔になってしまう。たまのことなら仕方ないが、今やマスクは生活の一部。そうなれば耳のシンプル化はやむを得ない。着脱のたびに引っ掛けて、知らぬ間になくしてしまうよりはマシである。
さて。この春から耳飾り一点主義に切り替えたところ、新たな問題が生じた。相変わらずフープ系イヤリングが気分ではあるものの、手持ちのアイテムはどれも重ねづけ前提のミニマルなデザインゆえ、一点だけだとやけにさみしい。マスクの着脱がスムースにできる形状で、なおかつひとつでも存在感のあるものが必要だと確信し、しばらく地道にリサーチを続けた。そしていくつかの候補の中から最終的に選んだのが、ボッテガ・ヴェネタのピアスだ。
輪っかが変形したようなトライアングル状のピアスには、ゆるやかなツイストがかかっている。タイガーアイのこっくりとした色味も相まって、なんだか飴みたいで美味しそう。そのぐにゃりとねじ曲がったフォルムを見ていると、懐かしの「きな粉ねじり」が食べたくなる。小さいながらも確かなインパクトがあり、石の品格をさらりと香らせながら、ちょっぴりユーモアもほのめかす。今まさに「欲しい」要素がふんだんに詰め込まれたピースだ。クリエイティブ・ディレクター、ダニエル・リーのモダンな視点と一筋縄ではいかないクリエーションは、ジュエリーにもしっかりと反映されている
このピアスが大いに活躍することは言うまでもない。金茶色の天然石は肌なじみがよく、過度に主張しないルックスはシーンやスタイルを選ばず着用できる。それに何より、秋冬のシックな装いと相性抜群だろう。まだまだ手放せそうにないマスクとともに、長くストレスなく付き合っていける逸品だ。
ボッテガ・ヴェネタ ジャパン
http://www.bottegaveneta.com
0120-60-1966
illustration:Uca text:Eimi Hayashi