11月になるとどうしても卑屈になってしまう。もうすぐ1年が終わってしまうという抗いようのない事実を受け入れなければならないうえに、月末には自分の誕生日も迎えなければいけないからだ。といっても別に歳をとることを憂いているわけではない。むしろ自分の人生は大器晩成型であるはずだという全く根拠のない思い込みに支えられて生きているので、将来にはある程度の希望を持っている。そうだとしても、なんだかやさぐれてしまうのである。
11月といえば世の中はすっかりクリスマスムード。昔から自分の誕生日もだいたいクリスマスとセットで、というかクリスマスのおまけのような感じで祝われてきた。まだ1ヵ月も先のイベントなのに……。こちらとしてはそう思ってしまうのだが、その存在があまりに大きく輝かしいから仕方がない。毎年クリスマスのおかげで自分の誕生日を忘れられるか、あるいはずいぶん先延ばしにされるので、この時期の浮かれた街並みを見るとどうも興ざめてしまう。商業施設にイルミネーションを飾れるのは12月1日からという条例でもできれば、もっと素直にワクワクできるのに。
積年の屈折した思いを吐露してしまったが、とはいえもうこの歳になると誰に祝って欲しいとも思わなくなってきた。むしろ自分の誕生日は自分自身でちゃんと祝いたい。特に今年は本厄のせいか誕生日に漠然とした重みを感じており、石にもすがる思いで11月の誕生石を自分にプレゼントしようと心に決めた。そしてリサーチすること数ヵ月。ついに出合ったのがボロロのロックリングだ。
秋色に染まるイチョウ並木の風景を切り取ったような、黄金色のシトリンに心を奪われた。ラウンドカットによるぷっくりとしたシェイプは可憐で愛嬌があり、身につけるとホワンと指先が暖かくなってきそうだ。それでいて、地金と一体となった無駄のないフォルムには凛々しさをも感じる。厚手のニットにも負けない存在感でモダンな佇まいを見せるこのリングなら、冷え性で血色の悪い手元にも華やかさを添えてくれるに違いないと確信した。
思えば誕生石のジュエリーに興味を持ったことはこれまで一度もなかった。はっきり言ってシトリンもトパーズもなんだかパッとしない石だと思っていたからだ。どうせならダイヤモンドやルビーみたいなスター性のある石の月に生まれたかった。ずっとそう思っていたはずなのに、シトリンが放つ太陽のような輝きにすっかり魅了されている自分がいる。「ようやく気づいてくれたんだね。誕生日、おめでとう」。リングの石が明るく透き通るような声で、そう語りかけているような気がした。齢を重ねるのは、やっぱり悪くない。
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illustration:Uca text:Eimi Hayashi