#37 眠らないダイヤモンド【カーボン&ハイド】

「ダイヤモンドの指輪」といわれると、それだけでちょっとかまえてしまう。ブライダルジュエリーのイメージが強いせいか、人生の大きな節目で出合うべきものであって、特別なとき以外は気軽に手を出せる相手じゃないような気がしてしまうのだ。

あの純白の輝きを目の前にすると、緊張はさらに高まる。「あなたは私に見合うほど、清廉潔白な心の持ち主ですか?」とダイヤモンドに問われているようで、見惚れるよりも気後れする方が勝ってしまう。そういった意味では、ほかのどのプレシャスストーンよりも眩い存在に思えてならない。

そういえば、日本には「眠れるダイヤモンド」がたくさんあると聞いたことがある。何も地中に埋まっているということではなくて、多くの女性たちがタンスのこやしにしているという話し。永遠の愛を誓ったフィアンセからダイヤモンドつきの指輪をプレゼントしてもらっても、日常的につけるのはもったいなくて大事にしまわれっぱなしになっているらしい。せっかくもらったのに普段使いに抵抗を感じてしまうのは、日本人ならではの心理なのかもしれない。

高価なものは、人からもらうよりも自分で買う方が気楽でいい。そう思ってしまうのは私だけだろうか。一生ものといわれるダイヤモンドジュエリーだって、本当は愛だの純潔だのとしかつめらしいことは考えず、シンプルに「毎日身につけたい!」と思えるものを選びたいところである。

ダイヤモンドをカジュアルに楽しみたいなら、カーボン&ハイドのジュエリーをぜひ見てみて欲しい。オレン・カッツとヤルデン・カッツ姉妹が家業のブライダルビジネスを引き継ぎ、地元LAで2013年に立ち上げたブランド。二人が手がけるジュエリーはすべて14金ゴールドとダイヤモンドで作られている。

どのアイテムも煌びやかで迫力があり、決して手頃な価格ではない。でもそれでいて普段の着こなしにも浮くことがない。公式サイトには、Tシャツ&デニムスタイルに自身のブランドのジュエリーをラフにまとうカッツ姉妹のツーショットが掲載されている。その二人の姿が象徴するように、デイリーにさらりとなじむモダンさがこのブランドの魅力だ。

個人的に惹かれたのは「スローン リング」。パヴェセットされたダイヤモンドが、異なる3つのモチーフにかたどられ、指と指の間を浮遊するようにきらめく。まるで夜空にまたたく星屑を指でキャッチしたかのような、ロマンと愛嬌のあるデザイン。繊細なのにパンチが効いており、冬場は量感のあるニットの手元にもマッチしそうだ。

ハレの日の装いの盛り上げ役にももちろん素敵だが、リモートワーク中や近所のスーパーに買い出しに行くときにだって、気を張らずに身につけてみたい。ファッションにTPOは必要だが、指先の自己満足も諦めたくはないのである。一度輝きだしたダイヤモンドは、眠ることなど決してないのだから。

リング〈WG、ダイヤモンド〉2,990USD
リング〈WG、ダイヤモンド〉2,990USD

https://carbonandhyde.com/