#40 一つで二度おいしいんです【リア・ディ・グレゴリオ】

以前こちらのコラムでスピネリキルコリンのギャラクシーリングを紹介したときに、自分の顔の丸さについて臆面もなく綴らせてもらった。読んでない人にはなんのこっちゃですが、要は丸いものに人一倍の愛着があるという話で、ジュエリーも例外じゃありません。

今回私が目をつけた“丸いもの"は、リア・ディ・グレゴリオの「NON STOP」リング。無機質なゴールドリングの重なりが有機的なシェイプを生み出す、コンセプチュアルなジュエリーだ。息子と一緒に毎週欠かさずみているアニメ『おしりたんてい』に、マルチーズしょちょうというキャラクターが出てくる。わりと高齢でエライ人（というか犬）なのに、丸いものを見つけると夢中で飛びついてしまう習性があってひそかに好感を抱いているのだが、そんなお茶目なマルチーズしょちょうがこのリングを見たらまさに“ノンストップ”で追いかけちゃうだろうなと思っている。

冗談はさておき、ブランドを手がけるのはミラノをベースに活動する同名デザイナー。以前とあるファッション雑誌のインタビュー記事を読んだことがあって、写真に映る彼女の屈託のない笑顔がとても印象に残っていた。飾らない表情から滲み出る確かな気品と、その中に見え隠れする少女のような遊び心。彼女のクリエーションにも通じる魅力をポートレートから感じ取り、会ったこともないけど好きだと確信した。

18Kゴールドの華奢なリングがいくつも連なった「NON STOP」。指に重ねてつけたときの量感と、ひとつひとつのリングが生み出す繊細な表情とのコントラストに惚れ惚れする。どこか儚げで、触れると簡単に崩れてしまいそうな気もして、まずはじっくり眺めてみる。ずっと見ていたら、スイーツのデコレーションに使われる飴細工が脳裏にちらつき、なんだかおいしそうに思えてきた。重なり合うリングの中に忍ばせるように配された一粒のパールを、そっとつまんで口の中に入れたい衝動に駆られるのは私だけだろうか。舐めると金平糖みたいに甘かったりしないかな。

リングは知恵の輪のようにつながっていて、広げるとブレスレットにもなるという贅沢な2way仕様。なんとも粋な計らい、ありがとうございます。一つで二度おいしいジュエリー。そういわれると、やっぱり食べたくなってしまうなぁ。