#49 躍る、イニシャル【:CAFCA】

先日実家の荷物を整理していたら、小学生の頃大流行りしていた「プロフィール帳」を見つけて、思わず片付けの手を止めてしまった。クラス替えや卒業のタイミングでクラスメートと交換し合うもので、雑に例えるならフェイスブックのアナログ版といったところでしょうか。今思えば、SNSのない時代ならではの「人との繋がりを楽しむ術」だったのかもしれない。私が持っているのはサンリオキャラクターのハンギョドンのもの。表紙に青いビーズが入っていて、持つたびにシャラシャラと音が鳴る。綴じられた用紙には、住所や電話番号、将来の夢、好きな人のことなど、パーソナルな情報を根掘り葉掘り聞き出すための質問がびっしり。読み返してみて、みんなわりと真面目に書いてくれているのが驚きだった。しかも、当たり前だけど全部手書きで、それがなんとも味わい深い。それぞれの筆跡に人となりがにじみ出ていて、今やプロフィール帳の誰ともリアルに繋がってはいないのだけど、そこには確かなぬくもりを感じた。

「書は人なり」という言葉があるが、イニシャルジュエリーもそれに通じるものがあると思う。手書きの文字でこそないが、同じアルファベットなのに生み出されるものは作り手によって千差万別。それが、どこかデザイナーの筆跡のようにも感じられて、ほかのジュエリーにはない独特の趣がある。今回ご紹介したいのは、日本発の「:CAFCA(カフカ)」というブランドのネックレス。

 

展示会で初めてコレクションを見たとき、「ん?」と思った。26のイニシャルモチーフが、続け字のようにチェーンと一体化していて、一見なんなのかわからない。でもよくよく見ると、それがアルファベットだと気がつく。「わー、Zさんが流星なみに流れてる」「Gさんは踊ってるみたいだよ」と、展示会場にたまたま居合わせたスタイリストの友人とその場でキャッキャしてしまった。アルファベットという極めてシンボリックなものが、デザイナーの井上善博さんのフィルターを通すことで見事に抽象化され、素肌に重ねるとその遊び心が実にいい仕事をしてくれる。

モチーフの部分には、K18とプラチナが手作業で接合されていて、かすかなグラデーションが生まれるという粋な計らい。直線的でクールなデザインなのに、目を凝らすとハンドメイドのゆらぎがあり、手書き文字のような体温がある。年中かすみ目の私としては、「ジュエリーはある程度の主張がないと、もはや見えない」というのが本音ですが、カフカのイニシャルネックレスを見て「あえてわからせない」のも素敵だなと実感した。「さりげない」とはひと味違う、暗号のような謎めいた存在感。身につけると自分自身との距離が縮まったような感覚があって、ちょっとニヤついてしまう。はっと周りを見渡すも、マスクで表情がバレずひとあんしん。それって、いいんだか悪いんだか。

「26letters Z」ネックレス〈K18PG, K18YG, PT〉¥30,250

:CAFCA
https://www.cafca.jp/cafca/



illustration:Uca text:Eimi Hayashi

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