ジュエリー好きのエディターさんに教えてもらった「noguchi BIJOUX(ノグチ ビジュー)」というブランド。名前こそ知ってはいたものの、実はアイテムをちゃんと拝見したことがなかった。ジュエリー連載を書いている身でありながら、なんたる不覚。ボーッと生きていてスイマセン。青山にあるショップを覗きに行きたいなあと思っていたのが、つい先日のこと。ちょうど打合せの前に空き時間ができて伊勢丹新宿店をフラフラしていたら、偶然にもそこで巡り合えちゃったんですよ、ノグチさんのジュエリーに。しかもその日はたまたまポップアップ期間中。新作からセミオーダーアイテムまでじっくり堪能できるという思いがけない幸運に恵まれた。ひそかに思いを寄せていた人にバッタリ街で出会って、その流れで食事までご一緒できちゃったような気分。とにかくそのときはブワッと興奮したのだった。
ブランド名ではあるけれど、「ノグチ」と呼び捨てにするのはどうも憚かられるので、ここでは「ノグチさん」と呼ばせていただくことにする。ショーケースに並ぶノグチさんのジュエリーは、どれもあたたかくてやさしいなと思った。最近はミニマルでコンテンポラリーなデザインを目にする機会が多いけれど、ノグチさんはそのトレンドとは一線を画したスタイルを貫いている。レースのように細やかで、クラフト感ただよう意匠からは、職人の手のぬくもりが伝わってくるよう。いい意味でメタル感がなく、身につけるとほわんと体温を感じるような、不思議な心地よさがある。
心打たれたのが、「Tsubu(ツブ)」と名付けられたリング。ホワイトダイヤモンドの清きツブツブがいっぱい! はじめて見たとき、少女漫画に出てくるキラキラの瞳みたいだなと思った。『ベルサイユのばら』のマリー・アントワネットってこんな目じゃなかったっけ? とか妄想し出すと、キラキラの奥に確かな情感が潜んでいるような気がしてくる。
ランダムにつなぎ合わさったつぶつぶのダイヤは、ひとつひとつが14Kホワイトゴールドのクリーンな地金に埋め込むようにセットされている。それは燦然と輝くというよりも、ナチュラルにきらめくという方がふさわしい。なぜならラフな服装に合わせても、とってつけたような違和感がまったくないからだ。「私を見てくださいな!」と主張する目立ちたがり屋さんではなく、「あくまで装いの一部ですので」といわんばかりの品のよさ。ファッションと喧嘩せず、どんな相手ともスマートになじむ名助演っぷりだ。「身につける人の着こなしに寄り添うジュエリーづくりを大切にしている」というデザイナーの野口さんの思いが見事に体現されている。キラキラのパッチリおめめのようなインパクトでも、さらっとウィンクするぐらいの軽やかな気持ちで、普段着のように毎日を共にしたい。
リング〈K14WG、ホワイトダイヤモンド〉¥286,000
noguchi BIJOUX
https://www.noguchibijoux.com/
03-6673-9648
illustration:Uca text:Eimi Hayashi