We’re individual, but get along.「見た目は違うけれど、とってもなかよし」。日本語に訳すとそんな意味合いになるのだろうか。ふと思い出すのは、何年か前に話題になった名コンビ、福知山市動物園のみわちゃんとウリ坊のこと。ニホンザルのみわちゃんとイノシシのウリ坊は、ともに親と離れ離れになったものどうし。2010年に同じ園に引き取られ、一緒に育てられた。
みわちゃんがウリ坊の背中に抱きついたまま2匹で散歩したり、体を寄せ合って寝たりする姿がメディアで報道されるたびに、微笑ましい気持ちになった。成長する前に一度この目で見てみたいと思っていたが、残念ながら叶わなかった。思い出したら懐かしくなり、かつての2匹の仲むつまじい姿を画像検索して、しばし癒しのひととき……。いや、でも本題はそこじゃないんだった。冒頭で引用した英語の言葉は、トモコ フルサワ ジュエリーのコレクション名なのです。
見た目はまったく違う2種類のジェムストーンを寄り添うようにセットしたリングは、ジュエリーデザイナーの古澤朋子さんが手がける一点もの。色石がまっすぐ横に並ぶのではなく、ちょっと傾いている様子がなんとも愛らしい。「私たち、生まれも育ちも性格もまったく違うけれど、相性ぴったりで。古澤さんのおかげでこうして一緒になることができました!」耳をすませば、そんな石の声がかすかに聞こえてきそうだ。遊び心と可愛げを兼ね備えていながらも、どこか聡明に思えるのは、古澤さんの目利きで選び抜かれた天然石の美しさからだろう。
すべてを見透かされそうなほど澄んだアクアマリンと、金平糖みたいなやさしいきらめきを宿すドゥルージーアゲート。エメラルドカットによって引き出されたクリアな輝きと、自然の結晶の繊細な輝きが、実に優美なコントラストを生み出している。それぞれの個性を認めながらも、互いの魅力を存分に引き立て合っている。さらにはイエローゴールドのミニマルな地金が、よき橋渡し役に。これって人間関係に置き換えれば、最高のトリオなんじゃないかと思う。
指につけたときの、色石のリズミカルな表情にもうっとり。しかめっ面でデスクワークをしているときや、気分が滅入ってしまったとき、可憐な色石たちが視界に入ってきたら、それだけでそよ風が吹いたように軽やかになれるかもしれない。
ちなみに、アクアマリンの石言葉は幸福。ドゥルージーアゲートは人と人の結びつきを強める石とされている。2つを同時に身につけられるのだから、こんなに素敵なことはない。もしも世界中の人全員がこのリングを身につけたなら、みんな幸せな気持ちになって、争いや憎しみが減ったりするのだろうか。この2つの色石のように、私たち人間も、お互いを認め合えるようになれればいいのにな。
リング〈K18YG、アクアマリン、ドゥルージーアゲート〉 ¥143,000~
TOMOKO FURUSAWA Jewelry
https://tomokofurusawa.com/
illustration:Uca text:Eimi Hayashi