今リアルに一番欲しいジュエリーは? と聞かれたら、答えは間違いなく「ココ クラッシュ」のリング。質問が終わる前にかぶせるくらいの勢いで、歯切れよく即答したい。
「ココ クラッシュ」は2015年に発表されたコレクションだが、もっと昔からなかったっけ? と思うくらい、すっかりメゾンのアイコニックな存在となっている。当時はちょうど30歳の節目を迎えたタイミングでもあったので、自分への投資に! と意気込んでいたはずなのだが、どういうわけかまだ手もとにはひとつもない。あの日の決意を昨日のことのように覚えているのに、もう7年も経ってしまっていることに自分でもびっくりです。
リングに刻まれているのは、メゾンを象徴するキルティングパターン。この規則的なラインを見ただけで、誰が見てもシャネルだとわかる。「泣く子も黙る」という枕詞をつけたくなるデザイン。抜群のオーラを放つと同時に、どこかキスの略語の“xxx”にも見えて、チャーミングな一面ものぞかせる。さらに心惹かれるのが、指につけたときに感じられるぷっくりとしたボリューム。アイコンバッグの「2.55」を彷彿させるキルティングの質感が見事に再現されている。ゆるやかな曲線のフォルムと直線的なラインとの対比を見て、惚れぼれしない人っているのでしょうか。「ココ クラッシュ」は“ココに夢中”という意味だけれど、まさに言い得て妙だなと思うわけです。
ちなみに、マドモアゼル シャネルが初めてキルティングのモチーフをウェアに取り入れたのは1920年。それから約1世紀後に、まさかこうしてファインジュエリーにも採用されることになるとは、さすがの彼女も予想していなかっただろうか。100年の時を超えてもまったく色褪せることなく、むしろモダンにアップデートされ続けている奇跡。「ファッションは移り変わるが、スタイルは永遠。」という言葉を遺した彼女なら、もしかしたらそんなこともお見通しだったのかもしれない。
さて。そんなわけで、今年こそは何としても手に入れたい「ココ クラッシュ」のリング。ホワイト、イエロー、ベージュの悩ましすぎる三択だが、ファーストアイテムはやっぱりシャネルオリジナルのベージュゴールドかな。肌なじみがいいというか、素肌と同化してしまいそうなニュアンスのあるカラーは、やわらかくて気品があり、18Kゴールド本来のしなやかな輝きをいっそう引き立たせている。
程よい主張のあるミディアムモデルなら、レイヤードも自由自在だ。指につけると「どうぞお気に召すままに」と囁かれているような気持ちに。マドモアゼル シャネルなら、どんな重ねづけを楽しむのだろう。「ラグジュアリーとは心地よいもの」という彼女の言葉にならって、自分が一番心地よいと思えるバランスを見出したいものだ。