特に心を動かされたのは、先の尖ったモチーフがいくつも重なった、「リネア」の集大成ともいえるペンダント。鋭く重みのある有機的な形状は、まるで何かの植物のトゲか、あるいは動物の牙のよう。長さも厚みもバラバラで、それぞれが思い思いの方向を向く様子は、人生の道しるべを示しているようにも思える。プリミティブなエッセンスとコンテンポラリーなムードを併せ持つだけでなく、ささやかな反骨精神も感じられる不思議な佇まい。鏡面仕上げが施されたシルバーの光沢も相まって、心地よい緊張感が漂ってくる。
首からかけるとみぞおちあたりまでくるロングタイプ。厚手のニットの上からでも確かな存在感を放ち、質感のコントラストを楽しめる。ひとつひとつのモチーフは位置も向きも自由に変えられるので、好みのバランスにアレンジできるのも面白い。さらに、先端のモチーフのみ裏側がフック状になっており、そこにコードを引っ掛ければチョーカーになるという裏技も。まるで変幻自在に姿を変える生き物を見ているようだ。オブジェのような重厚感がありながらも、柔軟で軽やか。相反する要素が見事に融合するエネルギッシュなデザインは、数々の時代の変遷を目の当たりにしてきたホアキン氏のしなやかな感性があってこそ、生み出せるものなのだろう。