この秋に20歳を迎えたばかりの姪っ子に、ちょっといいものをプレゼントしようと思い、何が欲しいか本人に聞いてみると、「セリーヌのバッグ」と即答されてしまった。「そんな高価なもの、買えるわけないでしょうが」と笑って返すと、「え、でもファッション誌のエディターさんって、毎日セリーヌとかボッテガとか着て、有名人と仕事するんでしょ? かっこいいよね! 私もなりたいんだ!」と、キラキラした目で熱量高めに話され、かなり返事に困った。いやいや、現実はそんな華やかなもんじゃないっスよ……と言いたいところだったが、やさぐれた発言で未来ある若者の夢を壊すのもいかがなものか。こういうときって、どう返すのが正解なんですかね。
ところで、言われてみれば確かに、最近街でもよくセリーヌのバッグや小物を持った若者を見かけるようになった。颯爽と歩く彼らをよりフレッシュに輝かせているのは、鬼才エディ・スリマンのもとモダンに蘇った「トリオンフ」モチーフだ。パリの凱旋門を囲む鎖に着想を得て’70年代に誕生した、メゾンの代名詞的存在。長らく影を潜めていたこの伝統的なモチーフを、エディは2019年春夏の自身のファーストコレクションで大々的に復活させたのだった。
リュクスな「トリオンフ」をあしらったバッグやスモールレザーグッズに、老若男女が惹かれている様子。かく言う私もその一人ですが、個人的にはファインジュエリーとして身につける「トリオンフ」も強くおすすめしたい。今リアルに取り入れたいのは、「トリオンフ」を楕円形で囲ったスタッズピアス。タイムレスなモチーフと18Kイエローゴールドの上品な輝きが掛け合わさり、幅1.2cmのつぶらなピースでも抜群の存在感を放つ。クラシックであると同時に程よくミニマルでコンテンポラリーな趣もただよう、時代もスタイルも超越した普遍的なデザイン。ロックテイストから70sムード、さらにはティーンカルチャーまで、あらゆる要素を巧みにマッシュアップさせるエディの感性が息づいている。
それにしても、半世紀にわたり愛され続けてきた「トリオンフ」の威厳と説得力たるや。タイトにまとめたヘアの耳もとにプチッと添えるだけで、小粋なスパイスになってくれそうだ。どんな着こなしにも寄り添い、さりげなくパリシックな横顔に仕上げてくれるオールラウンダー。ちょっと待って、これこそまさに、セリーヌに憧れる20歳の姪っ子へのプレゼントにぴったりじゃないですか。そういえば「女性は20歳でゴールドジュエリーをもらうと幸せになれる」という話を聞いたことがある。こうなったら妹や親戚も巻き込んで、合同でプレゼントしようかな。いっそ華々しく、大人の仲間入りを果たしてもらうことにしよう。