ところで、蜂も蝶も古くから幸運のシンボルといわれており、ジュエリーでは定番のモチーフとして愛されてきた。特に蝶は、サナギからドラマティックにその姿を変容させることから、「生まれ変わり」や「復活」の象徴ともされている。確かにあの劇的な変化は、かなうことなら自分も体験してみたいものだ。ある日長い眠りから目覚めたら、自分の容姿が突然レディ・ガガになっていた、ぐらいの衝撃なんじゃないかと思っている。
別に誰かに生まれ変わりたいわけではないし、ここまでいろいろ書いておきながら実は昆虫全般が苦手だったりもするので、はっきり言って蝶モチーフにはそんなに惹かれない。しかしマリーエレーヌ ドゥ タイヤック(MHT)の蝶は例外。幼い頃にクレヨンで描いた“チョウチョ”の絵のような、程よく抽象化されたチャーミングな意匠に心をくすぐられる。そこにリュクスな表情を添えるのが、22Kイエローゴールドのアンティークのような輝きと、タンザナイトとアパタイトによるブルーの美しい競演。「色石の魔術師」と呼ばれるMHTならではの神秘的な色使いが、吉兆を暗示するよう。
プレイフルだけれど、大人のさじ加減を心得ているのがMHTのジュエリーだ。気がつけば肩下まで伸びてしまった髪をラフに束ねて、タートルネックの耳もとにこの可憐な2頭を合わせてみたい。ラグジュアリーでありながら可愛げもあり、日常のエフォートレスな着こなしにもすんなりとマッチするインティメイトな存在。毎日を共にすれば、大事なシチュエーションでそっと何かを引き寄せてくれるかもしれない。