「パールってクラシカルなイメージだよね」とか言っていたら、「もう2023年になるのに、まだそんなこと言っちゃってるんですか?」と令和のファッション賢者たちに冷笑されるかもしれない。MIKIMOTO Comme des Garçons(ミキモト コム デ ギャルソン)のパールネックレスが華々しいデビューを飾ったのは、2020年2月。奇しくもパンデミック時代の幕開けとほぼ同時期に発表されたものだった。そういえばマーク・ジェイコブスがMIKIMOTOの1連ネックレスをヘビロテし始めたのも、ちょうど同じ頃だったっけ。彼のジェンダーレスで自由なパール使いは、今でも鮮烈な印象として残っている。
「男性がパールをつける」という新たな価値観を、気鋭の若手ブランドではなく日本の老舗ジュエラーが提示した。それも、世界一のパールと称されるMIKIMOTOが。そのファクト自体がジュエリー界に相当なインパクトを与えたことは間違いない。しかし私たちはその後のコロナ禍で、あまりにも大きな変化を経験し過ぎてしまった。「男性にパールを」という力強いメッセージがかすんでしまうほど、目の前の景色が一変してしまったのだった。
世界が混迷を極めた2022年は、個人的にも波乱万丈の年だった。終わりと始まりが同時にやってきて、ライフスタイルがガラリと変わった。まさに人生の転機ともいえる大きな節目を迎えた今、ふと思うことがある。自分にとっての「幸せ」って何なんだろう? 仕事に追われて育児に専念しない私を見て、両親は孫たちが不憫だと呟く。シングルマザーになった私の先の人生を案じて、これからどうしていくつもりだろう、とため息を漏らす。親世代からすれば、私は無責任で自分勝手な娘なのかもしれない。
年の瀬に湿っぽい話をしてしまったが、当の本人は決して悲観的にはなっておらず、むしろ新たなスタートを切れて能天気にワクワクしている。“普通”とは違う、幸せのカタチとは。2023年は、自分なりの答えを見つける年にしたい。そんな今の気持ちを後押ししてくれるジュエリーがあるとしたら、それは間違いなくMIKIMOTOのパールだと確信した。伝統を重んじながらも時代の流れをつかみ、パールの魅力を再解釈してモードへと昇華させる。そんな柔軟性と大胆さと創造力を兼ね備えた人間に、私もいつかなりたい。
激動の1年を走り抜いた労いにチョイスしたのは、ブランドの頭文字である「M」をグラフィカルにかたどったイヤーカフ。イエローゴールドのソリッドな地金に、純白のアコヤ真珠がまろやかな光沢を添える。このたったひと粒に宿る、確かな気品と華やぎ。表面のなめらかさや真珠層の厚さ、色の均質性など、厳しい品質基準をクリアした選ばれし真珠だけに、「MIKIMOTOパール」の名が冠せられる。
反骨精神すら感じさせる立体的な造形と、真円パールの清らかでタイムレスな輝き。耳もとにそのモダンなコントラストが生まれるとき、ガチガチの鎧をまとった自分の心の中にも、ひと粒のやわらかな光を見出せたような、晴れやかな気持ちになる。2022年は決して明るい年ではなかったけれど、それでも生きている限り、私たちは前に進まなければならない。混沌とした世の中でも、というかそんな世の中だからこそ、しなやかに、口角を上げて歩いていきたい。進むべき方向を見失いそうになったとき、日常を彩るひと粒の類い稀なる輝きが、そっと道しるべになってくれると信じて。