アクアマリンと海の夢【MONAKA jewellery】 #76

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四方を山々に囲まれた盆地に生まれ育ったわたしは、海をよく知らない。知らないからこそ興味を掻き立てられるし、海への憧憬は人一倍強い。子どもが生まれたとき、ほんとうは息子の名前に「海」という字を入れたかったのだけど、なぜかそうしなかった。はっきりとした理由は自分でもよくわからない。もしかしたら、憧れは憧れとして自分の中だけにしまっておきたいのかもしれない。

わたしの日々の小さな幸せは、南仏に住む俳人の小津夜景さんのブログを読みながら、遠く離れた地中海に想いを馳せること。憧れの地に住む、憧れの人が紡ぎ出した言葉の波に、この身を委ねる。どこからが空でどこからが海なのかもわからないくらい、澄み切った青がにじむニースの海の写真に、心まで真っ青に溶け込ませる。ささやかながらも、この上なくまばゆい時間だ。

海の話をしていると、アクアマリンのみずみずしいきらめきが自然と脳裏に浮かんでくる。じっとりとへばりつくような蒸し暑さにひとさじの涼を運ぶ、透き通るような青。空と海のあわいのような幻想的な色を、夏の間じゅう指にのせて、ひたすら眺めていたい。MONAKA jewelleryの「ツイスト リング」が魅せるのは、アクアマリンの中でも極めて発色が美しいとされる、サンタマリア アクアマリンの青。

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ツイスト リング〈K18YG、アクアマリン〉¥176,000

海面に反射する陽の光のような、やさしさと奥行きを湛えた1.18カラットを、イエローゴールドの装飾がそっとすくい上げるように繊細に縁取る。シャーロット・ランプリングの瞳を彷彿させる凛とした石の輝きと、アンティークジュエリーのようなノスタルジックなぬくもりを持つ石枠。異質なもの同士の可憐なたわむれに耳を傾ければ、色石が奏でる異国の海の唄が聴こえてくる。

ところで、小津夜景さんのブログで印象深いのが、「海は言葉を与える」という話。「海は、そこにあるだけで、私の中の柔らかい部分をきざんだり、はぐくんだり、するようです。そしてまた私に言葉を、さらには文字を与えるものの正体も、どうやら海なのでした」。この一節を反芻しながら、昔、シンガーソングライターのカコイミクさんの曲の詞を書いたことを思い出した。自由にやっていいと言われたのをいいことに、わたしは迷わず海のことを書いた。とりとめのない感情を思いのままに綴った身勝手な詞だったが、カコイさんがさざなみのように優しい声で、心を撫でおろすように歌ってくれたおかげで、吐き出された言葉たちはなんとか救われた。いまやYouTubeでしか聴けない、幻の一曲。はからずも限られた人の耳にしか届かない、秘密めいたものになってしまったことが、カコイさんには申し訳ない気持ちだが、わたしはひそかにうれしく思っている。


久しぶりにカコイさんの幻の曲を聴きながら、そういえば彼女は3月生まれだから、アクアマリンが誕生石だと気がついた。カコイさんの手は少女のように小さくて、華奢な「ツイスト リング」がとてもよくお似合いになると思う。水平線のように伸びやかで、透明な水にかすかに気泡を含んだような彼女の歌声が、サンタマリア アクアマリンの淀みない青に共鳴する。海が好きだけど海をよく知らないわたしは、そんなキラキラした情景を思い浮かべながら、海の夢を見ている。


モナカ ジュエリー
https://www.monakajewellery.com/
03-6434-7816

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