ゆらゆら、赤く染まってゆく【グレイン モートン】 #77

ゆらゆら、赤く染まってゆく【グレイン モの画像_1

「グレイン モートンに動物の精神が宿っているとするなら、間違いなくカササギだ。普通の人なら見落としてしまうような小さなピースも、彼女は決して見逃さない。これまでに収集された膨大なコレクションの数々は、やがてそれぞれが理想的な居場所を見つけ、ジュエリーとなり、新たな物語を紡ぎ出す日を夢見ている」

ブランドの公式ホームページに記されている紹介文がすごく好きで、読み返すたびに小説を読んだ後のような、うっとりした気持ちになる。スコットランドを拠点に活動するグレイン モートンさんは、ジュエリーデザイナーであると同時に、熱狂的なアンティークコレクターでもある。ヴィンテージのボタンやガラス、貝殻など、自身が集めたピースと天然石とを自由な感性で組み合わせ、ハンドメイドでジュエリーを製作している。どれも、耳をすませば遠い国のおとぎ話が聞こえてきそうなポエティックな意匠だ。グレイン モートンさんの作るジュエリーは、まさに「物語を紡ぐ」という表現がぴったりだと思う。

ゆらゆら、赤く染まってゆく【グレイン モの画像_2
ピアス〈K18ゴールドメッキシルバー、コーラル、ガーネット、シーバンブー、ヴィンテージガラス〉¥64,900

たとえば、ロンハーマンで見つけたこのドロップピアス。ガーネットやコーラル、ヴィンテージガラスなどでかたどられた3つのチャームが、したたる露のように連なっている。身につければ、小さな赤い実たちが、耳もとでクスクスと微笑みながら揺れているよう。しかもただ可憐なだけではなく、キッチュでユーモラスな世界観も持ち合わせているのがにくい。ノスタルジックでありながらも現代的だし、気まぐれなように見えて、じつは緻密に考え抜かれている。その絶妙なバランス感覚が、見るものの心を掴んで離さない。

このピアスを眺めながら、片山令子さんの『惑星』の中の石について書かれた章をふと思い出した。飛行機に乗って地上をみおろしたとき、なだらかに広がる地表に流れる川が、まるで人の血管のようだったと片山さんはいう。すると、隣に座っていたスコットランド人の地質学者が片山さんにこう話しかける。「あなたの血……。わかりますか? この血の赤い色は、宇宙から地球に落ちてきた、隕石にふくまれていた鉄の赤なんです」。この一節が頭に浮かんだとき、レッドベリーのように愛らしいピアスのモチーフたちが、地球に降り注ぐ隕石のように思えたのだった。

耳もとに添えるだけで、ファンタジーの世界に紛れ込んだ気持ちにさせてくれる、グレイン モートンのジュエリー。幻想と現実の狭間を漂うかのごとく、ゆらゆらと揺らめくその姿を前に、わたしの心は静かに熱を持ち、赤く染まってゆく。


ロンハーマン(グレイン モートン)
https://ronherman.jp/

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