虹色のこころ【ロビンソン ペラム】 #78

虹色のこころ【ロビンソン ペラム】 #7の画像_1

はじめてこのリングを見たとき、あ、指に小さな虹がかかるんだな、と想像した。ロンドンのジュエラー、ロビンソン ペラムの「Love is All Around」というコレクション。すみれ色の透き通るような「EYE(目)」と、サファイヤのみずみずしい「LOVE(ハート)」、そして、ツァボライトがフレッシュにきらめく「U」のかたちをしているのは、どこかの誰かにとっての、かけがえのない「あなた」。プレイフルなモチーフが連なり、一本の指をぐるりとなめらかにひと巻きしながら、虹色に輝くそのリングは、「EYE(I) LOVE U(YOU)」と可憐に語りかける。

毎日を生きるのに一生懸命なわたしたちは、「この世界が愛であふれている」ことなど、簡単に忘れてしまうか、あるいは知っていてもつい知らないふりをして、通り過ぎようとしてしまう。けれどもこの小さな小さなエタニティリングが、大事なことを思い出させてくれたおかげで、わたしはその日、帰り道に少しだけ立ち止まって、星空をあおぐことができた。

虹色のこころ【ロビンソン ペラム】 #7の画像_2
リング〈K14YG、サファイア、ツァボライト〉¥1,050,000~

そもそも、愛ってなんなんだっけ。愛のために理想を求めよ、自ら分け与えよ、などと偉大な哲学者たちは説いてきた。中高時代はミッション系の学校に通っていたので、愛についてたくさん学んだはずだった。「わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい」。この聖書のことば、何度唱えたことだろう。それなのにわたしは、愛について考え始めると、いまだにこんがらがってしまうことがある。

誰かを愛するがために、多くを望んではいけないこともある。大切な人を守るために、厳しい決断に迫られるときもある。誰かのことが死ぬほど好きでも、相手を思いやればこそ、伝えられない苦しみもある。愛する人のことを思うと、途端にやさしい気持ちになったり、自分でもびっくりするくらい強くなれたり、壊れそうなほど狂おしくなったりして、心がたくさんの色で満ちてゆく。そうか、誰かを愛するとき、人のこころは虹色になるのかもしれないな。

虹色のこころ【ロビンソン ペラム】 #7の画像_3

虹色のこころは、さぞ美しいのだろうけれど、目には見えない。サン=テグジュペリが言ったように、「かんじんなことは、目に見えない」のだ。でも、ロビンソン ペラムのリングを見つめながらこう思った。見えないはずの虹色のこころは、きっとこんなふうに楽しげに、輪になって躍っているんじゃないかって。互いにぶつかり合って、ごちゃ混ぜになって、くすんだ灰色の世界になってしまわないように。

気が遠くなるほどの歳月を経て、運命的に巡り合った色とりどりの天然石が、こうして手を取り合い、精緻なクラフツマンシップと結びつき、とびきりチャーミングな「I LOVE YOU」を奏でている。その尊さとかけがえのなさに、わたしは震えるほど感動している。さて、この感動をどうしようか。すっかり虹色に染まってしまったわたしのこころの中の、一番やわらかくてあたたかいところに、大事に大事に、そっと隠しておこう。


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