「仕事も育児も頑張ってて、すごいね」子を持ち、シングルマザーになってから、そう言っていただくことが増えた。「すごいね」と言われるたびに面映ゆい。ときにはどうしようもなく惨めな気持ちになることもある。なぜなら、本当はぜんぜんすごくなんかないことがあまりに自明だからだ。日々のやるべきことに忙殺されて子どものことは放ったらかしになることもしょっちゅうだし、家の中は整っていることの方が珍しいし、仕事で切羽詰まると子どもにイライラをぶつけて自己嫌悪になり、勝手に傷つく。母親として落第なのに、それでもはたから見ればそれなりに見えていて、気がつけば自分で自分に「すごい」のレッテルを貼っていた。このままでいいのかと胸が張り裂けそうなときも、声をあげて泣きたいときも、誰かに会えば笑顔を向け、明るく元気な人間であろうと努める。そうやって自分自身に鎧を着せ、心の砦を築いてきた。