タツノオトシゴの探しもの【ビジュードエム】 #87

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愛と幸せを象徴する海の生きものを、ジュエリーのモチーフに。タツノオトシゴを可憐に表現したのは、Bijou de M(ビジュードエム)のシングルピアス。およそ魚とは思えない、なめらかに湾曲した直立姿勢をイエローゴールドでかたどり、流れるようなカーブに沿ってダイヤモンドが燦然と発光する。まるで海中に差し込む陽の光を、キラキラと反射させるかのように。装着すると耳たぶの際をふわりと遊泳しているようで、いっそう愛らしく、微笑ましく感じる。2cmにも満たない体をめいっぱい煌めかせながら、耳もとを優雅に浮遊するその姿は、愛すべき誰かを探し求めているようにも思える。

タツノオトシゴ。その不思議な形態が龍(タツ)を連想させることから、日本では「龍の落とし子」と名付けられた。龍が生み落とした子のように見える、ということなのだろうけれど、幼い頃は「落とし子」という名前を気の毒に思った。落とし子には、身分の高い男性が正妻以外の女性に生ませた子という意味がある。なぜ、タツノオトシゴは「落とし子」でなければならないのだろう。シンプルに「タツノコ」ではダメだったのだろうか。その方がタケノコみたいで可愛いのに。仮にもし、龍との間に授かった命を誰かが海中に生み落としたのだとしたら、その親とはいったい誰なんだろう。

祖父が生きていた頃、まだ小さかった私は「おまえは橋の下で拾ってきた子だ」と会うたびにからかわれていた。今となっては懐かしい思い出だが、子どもながらに悩んでいた時期もあった。自分が父にも母にもあまり似ていないこと、妹に対しては誰もそんなふうに言わなかったこと、「そんなの冗談に決まってるでしょ」と真剣に取り合ってくれなかった母が、何かをはぐらかしているように思えたことが、余計に真実味を帯びさせた。「私は本当は誰の子なんだろう」そんなふうに真に受けてしまう無垢な少女にとって、タツノオトシゴという名前はあまりにも不憫に思えたのだった。だが大人になるにつれ、次第にそんなイメージも薄れていった。

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たつのおとしごピアス〈K18YG、ダイヤモンド、ブラックダイヤモンド〉¥139,700

タツノオトシゴは、この地球上でオスが出産する唯一の動物だといわれている。オスのお腹にある育児嚢(いくじのう)という袋の中にメスが卵を生みつけ、オスがその卵をかえすのだ。タツノオトシゴは運命のパートナーに出会うと、互いの体を寄せ合い、尾を絡ませながら、2匹でハートの形を描き出す。そのままダンスを踊るように愛を深め合い、そうして授かった子どもたちを、オスが育てあげる。なんと神秘的な存在なんだろう。一生をかけて全力で愛を表現する彼らは、全然気の毒なんかじゃない。むしろ憧憬の的である。

Bijou de Mのタツノオトシゴピアスは、ペアではなくシングルなのがいい。両耳で愛を成立させるのではなく、片耳で愛をただよわせるところに、新たな物語の始まりを予感させる。もしかしたら、いつかどこかで思いがけない出会いがあるかもしれない。そのとき私は出会った相手と、どんなハートを描くことができるだろう。そんな幻想が勝手に膨らみ、耳に添えられた小さな輝きに、いっそうときめく。愛し合う2匹のタツノオトシゴのような美しいハートではないかもしれない。でも、どんなにいびつな形でもきっと気にすることはない。愛があれば、それでいいのだから。

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ビジュードエム
https://www.bijou-de-m.com/

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