小さな四角い窓の中に広がる、ブルーグリーンの世界。アマゾナイトがクォーツ(水晶)と混ざり合ったその石は、アマゾナイト イン クォーツという。透き通った部分と鮮やかな部分、ほんの少し褐色に濁った部分が混在し、まるで移りゆく心模様を映し出しているかのよう。この混沌とした、されど息をのむほど美しい景色が、18Kゴールドの窓の向こう側にどこまでも続いているんじゃないかと錯覚してしまう。
幼い頃、好きな絵本を開いて、その絵の中に入り込むという妄想遊びをよくやっていた。それは、本には描かれていない先の世界を覗きにいくための秘密の方法であり、母や父に叱られたときに逃げるための特別な抜け道でもあった。中でも海や川などの水中世界を描いた絵本は、妄想遊びにうってつけだった。宮沢賢治の『やまなし』、レオ=レオニの『スイミー』、マリア・テルリコフスカの『しずくのぼうけん』。それぞれのお気に入りのページの中に、自分だけの隠れ家をつくり出していた。いま思えば、子どもなりの方法で知らない世界と繋がろうとしていたのかもしれない。


