色石と紫陽花【ポメラート】#97

紫陽花が好きになったのはここ数年。年齢を重ねたせいか、梅雨に打たれて凛と咲くその姿を見ると、しみじみと胸を打たれるようになった。先日、物知りな人が教えてくれたのだが、紫陽花は育った土壌の酸性度合いによって色が変化するらしい。酸性の土では青く色づき、アルカリ性ならピンクに染まる。植える場所によって色が変わる気まぐれな咲き方にも、なんともいえない愛おしさを感じる。

青でもピンクでも紫でもない、真っ白な紫陽花もある。白はもともと色素を持たない品種ゆえ、どんな性質の土壌でも色が変わることはないそうだ。「わたしは何色にも染まらない」そう声高に宣言するかのごとく純白に咲き誇る姿を見ると、道すがら思わず足を止めてしまう。その瞬間、むせ返るような湿気を含んだ空気が、すっきりと澄み渡るような気がするのだ。

色石と紫陽花【ポメラート】#97の画像_1

小花が集まり、こぼれるように咲く紫陽花を、宝石のように身にまとえたなら。願いを叶えるジュエリーは、ポメラートにあった。奇しくも紫陽花の季節に発表されたそのイヤリングは、スカイブルートパーズと、パヴェセッティングされたダイヤモンドとのアンサンブル。まるで雨露に濡れた水色と白の紫陽花が寄り添うように、横顔を艶やかに彩る。

耳もとに涼を運ぶその耳飾りは、ポメラートを象徴する「ヌード」コレクションの新作。爪などを使わず石を“裸”で、ありのままのストーンがまるで台座から浮いているようなセッティングは、メゾン独自の技法にちなんで、そのように名付けられた。みずみずしいスカイブルートパーズには、57面の不規則なファセットがほどこされている。一見ランダムなようで、じつは計算されたもの。無機質な鉱物にやわらかな表情を与える造形美は、アルチザンによる精緻な技巧の賜物だ。57といえば、ダイヤモンドが最も理想的に輝くとされるブリリアントカットも57面体。同じファセット数を、あえてダイヤモンドではないストーンに採用する。大胆で型破りなデザインに、イタリアンジュエラーらしい遊び心と茶目っけがうかがえる。

色石と紫陽花【ポメラート】#97の画像_2
「ヌード」イヤリング〈K18RG、WG、スカイブルートパーズ、ダイヤモンド〉¥1,859,000

紫陽花で思い出したのだが、私の祖母は生き物や植物を育てるのが好きな人だった。祖母が飼っていた犬や猫はみんな丸まると太っていたし、祖母が作る野菜はなぜかいつも規格外の大きさだった。梅雨の時期に祖母の家の庭に咲いていた色とりどりの紫陽花も、そういえばとても立派だったことを思い出した。どうしてあんなに何でもかんでも大きく育てられたのだろう。生きているときに、もっといろんな話を聞きたかった。まだ小さかった私に、会うたびに「大きくなあれ」と呪文のように唱えていた祖母の言葉だけが、いつまでも心にくっきりと響いている。

無駄なものは極力省き、削ぎ落として生きていきたいと思う昨今だが、ポメラートのジュエリーを見ていると、大きいことも悪くないなと思えてくる。ころんとボリュームのある大粒のジェムストーンのやさしい色彩ときらめきが、祖母の庭に咲く大きな紫陽花の思い出へと、鮮やかに導いてくれた。


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連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。