先日、とある取材で戦争を体験した80代の女性に話を聞く機会があった。計り知れないほどの苦労を乗り越え、激動の時代を耐え忍び生きてきたその女性は、「今が天国だ」と生き生きした表情で話してくれた。別れ際に彼女のあたたかい手に触れたとき、左手の薬指に大ぶりのシルバーリングが光るのが見えた。頭の中で重ね合わせたのは、クロムハーツのジュエリー。歴史を刻んだその美しい手に、量感のある造形がよく似合いそうだなと思った。
いつか私もクロムハーツが似合うおばあちゃんになりたい。40歳を迎える今、そんな理想を思い描くようになった。シワやシミで表情豊かになった素肌にこそ、存在感のあるシルバージュエリーが効くんじゃないかと心ひそかに期待している。
連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。