アルハンブラといえば、誠に勝手ながらコンサバなイメージだと思い込んでいたのだが、先日のパリ五輪でテニス選手たちがプレー時に身につけているのを見て、スポーツウェアとのミックスマッチがこんなにも効くのかと開眼した。あんなに激しい動きを長時間続けるのだから全身に相当な汗をかくだろうに、アルハンブラの石は汗水に強いのだろうか、そもそもプレー中にラケットや顔にあたって邪魔になったりしないのだろうか、などと素朴な疑問が浮かんできたことはさておき、ゲームの行方よりも選手たちがどんなジュエリーをつけているのかが気になってしまって、そればかりを目で追っていた。
四つ葉のクローバーをかたどったジェムストーンに、ゴールドビーズの繊細な縁取りをほどこした精巧なアルハンブラ。いわずと知れたヴァン クリーフ&アーペルのアイコンコレクションは、1968年の誕生以来「幸運のシンボル」として世界中の人びとに愛され続けている。実力のみならず運も必要とされるのがスポーツの世界。ゲン担ぎに身につけるアルハンブラは、オリンピックの大舞台でも視線を奪うほどの存在感を放つ。その可憐ながら力強い輝きを前にすれば、幸運の女神も思わずにこりと微笑んでくれそうだ。
連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。