星になった坂本九さんと星座のペンダント【ヴァン クリーフ&アーペル】#112

昔から星を見るのが好きな子どもだった。そう言うと星のことをよく知っていそうだが、恥ずかしながらこれといった知識を持っているわけではない。ただ星空をキャンバスにして、名前の知らない星と星を線でつなぎ、自分だけの星座を描いて楽しんでいるような子どもだった。いまだにオリオン座ぐらいしか識別できないが、大人になった今も星空を見上げる癖がある。

星座にまつわるジュエリーといえば、憧れるのはヴァン クリーフ&アーペルの「ゾディアック」

星座にまつわるジュエリーといえば、憧れるのはヴァン クリーフ&アーペルの「ゾディアック」。12星座のシンボルを、18Kイエローゴールドのメダルに詩的に描き出したマスターピースだ。表側には星座を象徴するモチーフが、裏側には星座のサインと期間が、緻密な浮き彫りで立体的に表現されている。

もともとは、1950年代に誕生したもの。現代のゾディアックは、そのアーカイブスに着想を得て再解釈された。真円ではない、いびつなシェイプやマットな仕上げ、縁の切れ込みなど、どこかアンティークコインのような風合いを醸し出す。直径21ミリの小さな世界に、メゾンのサヴォアフェールが凝縮されている。

星座とは、星と星を結んで描かれるもの。古くから人びとは空を見上げて、瞬く星々を生き物や神話の英雄にたとえてきた。科学技術の発展とともに地球環境は大きく変わってしまったが、私たちが見上げる星空は、古代の人たちが見ていたそれとほとんど変わらないのだろうか。胸もとにゾディアックのペンダントを添えて、壮大なスケールの宇宙に思いを馳せてみたい。

「ゾディアック メダル アクアリィ (水瓶座)」〈K18YG〉¥396,000
「ゾディアック メダル アクアリィ (水瓶座)」ペンダント〈K18YG〉¥396,000・「フォルサ チェーン、70cm」〈K18YG〉¥228,800

ところで、大人になってからも星空を見上げるのは、だいたい何か辛いことがあったときだ。負の感情に飲み込まれそうになったとき、心が折れそうになったとき、「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」と背中を押してくれたのは、坂本九さんだった。もちろんタイムリーに聴いていた世代ではないが、これまで何度励まされてきたかわからない。

「見上げてごらん」とやさしい声で歌った坂本九さんも、「にじんだ星をかぞえて」とあたたかな詞を綴った永六輔さんも、今ではおふたりとも星になった。きっと空の上で笑い合いながら、ささやかな幸せを歌っていらっしゃることだろう。

星座に該当する期間とサインが、浮き彫りで描かれている。
星座のシンボルがあしらわれた裏面。星座に該当する期間とサインが、浮き彫りで描かれている。

星になった坂本九さんといえば、私たちが見上げる空には実際に「坂本九」という名前の小惑星が存在する。1993年に北海道の天文家が発見したその星には「6980」という小惑星番号がついていて、永六輔さんの「6」、坂本九さんの「9」、そして『見上げてごらん夜の星を』を作曲した中村八大さんの「8」が入っていることから命名された。

坂本九さんは、本当の意味で私たちの星になった。でもその星は、決して肉眼では見えない明るさだという。「坂本九」という暗闇を照らす微かな光。「見上げてごらん」の声を胸に、見上げた人の心にしか届かない、小さな小さな光。いつかきっと探し当てたい。

さて。ゾディアックのペンダント、身につけたいと思いながらも、どの星座を選ぶべきか考えあぐねていた。でもこの原稿を書きながら、自分の星座であり坂本九さんの星座でもある「射手座」にしようと決めることができた。細やかに研磨された小さなメダルに、自分だけの物語を刻むのだ。落ち込んだとき以外にも、星空を見上げるきっかけが増えると思う。



ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク
http://www.vancleefarpels.com/
0120-10-1906

連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。