真珠の養殖が始まったのは19世紀末。それまで、天然真珠はごくわずかな確率でしか出合えないものだった。乳白色のまろやかな艶をたたえた自然の産物は、今よりもずっと稀少価値が高かった。だからこそ、ひと粒を丸ごと使う、などという発想は、あまりに贅沢すぎたのだろう。天然真珠はふたつにカットされ、ハーフパールとしてジュエリーに用いられてきた。
そんな背景に着想を得たのが、「ハーフ ケシパール」ネックレス。恵比寿にあるジュエリーのセレクトショップ、ソウス オブジェクツのオリジナル作品だ。
唯一無二のその造形は、ゴールドの台座にぴたりとおさまり、とっておきの居場所が与えられた。表面をなめらかにする研磨加工はあえて施さず、生まれ持った本来の美しさをそのまま宿している。不規則に盛り上がったり、くぼんだりして、見る角度によって表情が変化する。
サイズは約10ミリと真珠の中では大ぶりだ。身につけると、ちょうど鎖骨の下あたりで、でこぼこハートが健気に揺れる。「私は、ハートということでよろしいのでしょうか」そう問いかけるような控えめな様子が、なんともいじらしい。
連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。