「青い目の人形」のことを知ったのは、今年の初め頃だった。今から約1世紀前の1927年、悪化していた日米間の国民感情を和らげようと、宣教師のシドニー・ギューリック博士と渋沢栄一が中心となって相互の親善を図り、日本全国の幼稚園や小学校に約1万2千体もの青い目の人形が贈られた。その後、太平洋戦争が開戦すると、友好の証だったはずの人形は敵国の人形とされ、多くは叩き壊されたり、焼き払われたり、悲しい運命をたどった。
一方で、人形を引き取り、軍に見つからない場所に隠して守ろうとした人たちもいた。戦況が悪化していく中で、次々と出征して命を落としていく若者たちも、いっそ人形のように隠してしまえたなら。人形を隠すという行為は、当時の人びとの切なる思いの表れだったのだろうか。戦禍を生き延びることができた青い目の人形は、戦後各地で発見され、全国に300体ほど現存する。それらは大切に保管され、子どもたちの平和教育に活用されているという。
あれから半年以上が経ち、ふとグレース・エッサのことを思い出したのは、トーカティブのリングに出合ったからだった。K18YGの縄目模様のアームで仕立てられたそれは、どこかアンティークのような趣がある。青紫色にきらめくハート型の色石はタンザナイトで、グレース・エッサの瞳よりも濃くて深い。見る角度によって色が変わる、神秘的な輝きを前にすると、自分の中の本質的な部分を見透かされているような気がしてくる。色も形も違うのに、不思議とグレース・エッサの青い眼差しを連想させる。
連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。

