思いがけない繋がり。【The Ouze(ウーズ)】のリング #135

息子が保育園に通っていた頃、彼の中で粘土ブームがきていた時期があって、毎日いろんなものをこしらえていた。夕方迎えに行くと、ロッカーの上に不思議な白い物体が置かれていて、時折ビー玉がめり込んでいることもあった。これは、生き物なのか、何なのか。未確認の物体に首を傾げながらも、小さな手で一生懸命つくったんだろうなと思うと微笑ましかった。

そうは言っても、持ち帰っては溜まっていく一方だったので、気付かれないようにこっそり処分していた。今になってほんの少しだけ、惜しいことをしたなと思っている。でも、仮に残しておいたとしても、どこかのタイミングで手放していただろうなという気もする。不恰好だけれど愛おしかった息子の粘土作品を再び目にすることはもうない。あれは、あの年齢ならではの感性なのだろう。

それなりに歳を重ねたからだろうか。新しいものに出合うと、私の場合なぜか過去の思い出が蘇ってくることが多い。断片的な記憶の中から、子どもがつくった粘土作品を呼び起こすきっかけとなったのは、The Ouze(ウーズ)のシルバーリングだった。

The Ouze(ウーズ)のリング、ロンドンの工房で制作。リサイクルメタルと倫理的に調達された石だけを用いて、時間をかけて丁寧につくられている。

ウェストミンスター大学でファッションデザインを専攻していたトビー・ヴァーノンが、ジュエリー制作に携わるようになったのはほぼ偶然だった。在学中、誕生日に姉がプレゼントしてくれた道具を使って、独学で実験的に始めた。ちょうど新型コロナウイルス感染症のロックダウン期間中だったこともあり、ジュエリーづくりにのめり込むことができたという。

彼が習得したのは、伝統的なロストワックス鋳造技法。蝋で原型を彫り、耐火性の型で覆い、中の蝋を溶かしてできた空洞に金属を流し込んで成形する、古代から用いられてきた鋳造技法だ。試行錯誤を繰り返す中で生み出されたのは、指紋や工具の跡が残る、不均一の小さな造形だった。あえて研磨加工を施さないことで、本来なら消えてしまうものがくっきりと残されたままになっている。それがどのようにしてつくられたのかを、誠実に物語っているようにも思える。

The Ouze(ウーズ)リング、左から:リング〈シルバー925、ルビー、サファイア〉¥96,800・リング〈シルバー925〉¥59,400

左から:リング〈シルバー925、ルビー、サファイア〉¥96,800・リング〈シルバー925〉¥59,400

人の手の痕跡が刻み込まれたThe Ouzeのリングは、どこかアンティークジュエリーのような風情があり、すでにいくらかの時を経たような佇まいだ。かつての幼い息子がつくった粘土作品をも彷彿させ、独特の親密さを伴う。ジュエリーってこんなに自由でいいんだなと、目から鱗が落ちた。

The Ouzeの作品はすべて、ロンドンの工房で制作されている。リサイクルメタルと倫理的に調達された石だけを用いて、時間をかけて丁寧につくられている。地金も石も荒削りで、ピカピカに輝いているわけではない。不完全な美しさを讃えたリングは、細かいシワが増えて骨張ってきた自分の指にしっくりなじむ。そして、二度と戻ってこない我が子との尊い時間をも呼び戻してくれる。遠い国で、あたたかな人の手でつくられたものが、思いがけない繋がりをもたらしてくれた。

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連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。