心が透き通る瞬間。 【ソフィー ジョアン】のピアス #137

「雨に濡れると、透明になる花があるんだよ」あるとき、物知りの友人が教えてくれた。本来は白いはずの花びらが、濡れるとガラスのように透き通るらしい。サンカヨウという名前のその花は、別名「スケルトンフラワー」と呼ばれている。ただし、濡れたら必ず透明になるわけではない。濡れた状態が長時間続くことや、涼しい環境であることなど、いくつかの条件が重なったときだけ、不思議な現象は起きるという。

ソフィー ジョアンの「アイランドフラワー」ピアス

いまだ出合ったことのない神秘的なスケルトンフラワーに思いを馳せるきっかけをくれたのは、ソフィー ジョアンの「アイランドフラワー」ピアスだった。ほんのり透ける青紫色の花びらはタンザナイト。一つひとつを熟練の職人が手彫りすることで、まるで本物の花のように精巧につくられている。

全長1.2cmの小ぶりな花の中央には、混じり気ひとつないクリーンな輝きのダイヤモンドが一石配され、裏側には14Kリサイクルイエローゴールドのキャッチが添えられている。両耳に咲かせれば、意外にも涼しげで凛とした表情が生まれる。フラワーピアスは、ともすると可愛くなりすぎるのではと思っていた私にとってはうれしい誤算だった。高度なクラフツマンシップを駆使することで、石の澄んだ美しさが存分に引き出されている。

ソフィー ジョアンの「アイランドフラワー」ピアスで春の息吹を耳元に。〈K14YG、タンザナイト、ダイヤモンド〉¥638,000

ピアス〈K14YG、タンザナイト、ダイヤモンド〉¥638,000

タンザニア北部のメレラニという地域でしか採掘されないタンザナイトは、見る角度や光の入り方によって色が変わる希少な石だ。青から紫へ、色が移ろうことから、持ち主に「変容」をもたらすとされている。

スケルトンフラワーのことを教えてくれた友人は、人事異動で4月から新しい部署に配属されるという。自分の意思に反してかどうかはわからないが、新たな環境に適応していくのは、ストレスがかかることだろう。生きるとは、予期せぬことの連続だ。どんな幸運に恵まれようとも、どんな理不尽なことが起きようとも、現実を受け入れ、しなやかに進んでゆくほかない。

人は生きている限り、必ず衰え老いてゆく。だが年齢を重ねるにつれて、何かを変えることに慎重になり、今あるものを維持しようとしたがる生き物らしい。変化に抗おうとする気持ちは、わかるような気もするし、一方でそんなのくだらないとも思う。耳もとに添えた青紫に透き通るタンザナイトの花が、ケセラセラと笑っているかのよう。いくつになっても自分らしい生き方を貫く人を、静かに祝福しているかのようだ。

強欲で嫉妬深く愚かな私は、澄んだ色石を身につけたところで、清らかな心など持てないのかもしれない。それでも、たとえ心が濁っていようとも、条件が整えば透明になる瞬間がある。きっと誰しもが、心の中にスケルトンフラワーを秘めているのだと思う。自分の中の儚くて美しい部分を、私はタンザナイトの花に託すことに決めた。

ロンハーマン(ソフィー ジョアン)
http://ronherman.jp/
 0120-983-781

連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。