働く私の勲章。【ヴァン クリーフ&アーペル】のホース クリップ #134

年齢差について話すとき、「〇〇さんとはひと回り違う」と表現することがある。若い頃は、十二支が一巡するなんてとんでもなく長い年月のように感じたものだが、40代にもなると、12年前なんてつい「最近」だと思うようになってきた。

ヴァン クリーフ & アーペルのホース クリップ。2026年を軽やかに駆け抜けられそう

今よりもひと回り若かった私は、ちょうど30歳を迎える節目にあった。当時は会社員をやっていて、自分を除く全員が20代30代男性という若くてガッツのある部署に所属していた。もともと勤務時間が不規則なうえに、コンプライアンスが今ほど厳しくなかったこともあり、ハードワークは覚悟の上と思って飛び込んだ業界だった。長時間労働は当たり前と思っていたし、もっと言うと、定時で退勤すれば「暇な人」と揶揄される風潮すらあった。昨年某政治家が意気揚々と宣言していたが、12年前の私もワークライフバランスを捨て、馬車馬のように働いていた。

その後、私は会社員を辞めてフリーランスになり、ふたりの子どもを持った。男性ばかりの部署から一転して、ここ数年は女性ばかりの雑誌編集部と密接に関わりながら生きている。「働き方改革」が叫ばれて久しく、12年前と比べると労働環境はずいぶん変わったと思う。それでも、子どもがいなかった頃と同じように仕事をこなし続けるためには、どうしたって過酷にならざるを得ない。パートナーや祖父母の全面的な協力を得るか、民間サービスをフル活用するか、それが難しいなら一時的にでも何かをセーブするか、諦めるかしなければ、自分自身が破綻してしまう状況に追い込まれることがある。私たちは、ときに仕事か子育てかの二者択一を迫られるような社会を生きている。

ヴァン クリーフ & アーペルのラッキー アニマルズ ホース クリップ〈K18RG、オニキス、カーネリアン〉¥1,333,200

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12年前の自分と比べると、立場も環境もライフステージも大きく変わった。しかし干支が一巡してもなお、私は馬車馬のままである。そんな自分を少しだけ労うために手に取ったのは、ヴァン クリーフ & アーペルのホース クリップだった。今にも駆け出しそうな駿馬の生き生きとした姿に無条件に引き寄せられ、「私に必要なのは君のような可愛げと軽やかさだ」と確信した。

馬体は鮮烈な赤のカーネリアンで、たてがみと瞳と尻尾は漆黒のオニキス。熟練のクラフツマンによって丹念に研磨され、均整のとれた深くなめらかな色調に仕上がっている。繊細なゴールドビーズで縁取られたしなやかな佇まいは、「赤い馬の年」とされる丙午の2026年にふさわしい。視界に入るたびに、色の力を網膜から吸収できそうだ。

大切な人とゆったり過ごす時間の一部を犠牲にしてもなお働き続ける道を選んできた私は、もしかしたら馬車馬というよりも、ただ自分の思い通りに行動しなければ気が済まないじゃじゃ馬なのかもしれない。私よりひと回りもふた回りも上の世代の先輩方からすれば、理解しがたいようなことをしているのかもしれない。それでも、がむしゃらに駆けめぐってきたこの12年間を、せめて自分だけはささやかに讃えたいと思っている。チャーミングで力強いこのホース クリップを、胸もとに勲章のように輝かせてみたい。決してサラブレッドでもなんでもない、平凡な自分へのファンファーレとして。


ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク
https://www.vancleefarpels.com/
0120-10-1906

連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。