街路樹の葉が色づき、近所の雑貨屋の店先にクリスマスツリーが飾られ始めた。夕飯の買い出しで立ち寄ったスーパーでは、早くもしめ縄飾りが売られている。息つく暇もなく、今年も年末がやってきた。ドタバタと、せわしない足音を立てて。
行きたいところは山ほどある。なのに今すぐやるべきことが波のように押し寄せてきて、1日の大半をラップトップの画面と睨めっこしながら過ごしている。かつて昭和の時代にチェッカーズとして一世を風靡したやんちゃな少年たちが生意気に歌ったように、令和を奔走する中年の私もまた「心はギザギザ」である。わかってくれとは言わないが、わかってくれる人もいると信じたい。
鉄紺のような深い色に、ところどころ褐色がにじむ色石は、まるで複雑な心と対峙しているかのよう。ピーターサイトと呼ばれるその石は、持ち主の心の迷いや不安を取り去る「前進の石」といわれている。嵐のような忙しさに追われても、厳しい逆風に立たされても、この独特のうねりのある石の模様に視線を向けるたび、自分自身を見つめ直す時間を持てるような気がする。
連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。