リボンの結び目に託された想い【プラダ】のブレスレット #121

息子がまだ保育園児だった頃に、蝶々結びを教えた。始めのうちは、何度やってもうまくいかなかった。片方の輪っかに、もう片方の紐を回しつけるところで、どうしても混乱が起きてしまう。根気のない私は早々に諦めてしまっていたのだが、息子はある日突然、何かを悟ったかのように、ひとりでするすると結べるようになった。

それからしばらくの間、彼の蝶々結びブームが続いた。靴紐やパーカの紐、スカーフから充電ケーブルまで、紐状のものはなんでも結びたがるようになった。部屋を掃除しているときに、カーペットの隅のフリンジが不器用に結ばれているのを発見することもあった。

普段はだらんと垂れたり伸びたりしているものが、たとえ不細工でもふたつの輪っかを作って結ばれているのを見ると、小さな幸せと不思議な高揚に包まれた。人が特別な日にリボンをつける理由が、なんとなくわかったような気がした。

小さな手で、慣れない手付きで、最後にキュッと両方の輪っかを引いたとき、彼はそこにどんな想いを託したのだろう。ただただ無心でやったのか、あるいは、今までできなかったことができるようになって、何が何だか受け止められていなかったのか。数年前まで自分の体内にいた我が子が、急に自分とは違う意志を持つひとりの人間としてそこに存在しているように思えて、胸がいっぱいになった。

絆をつなぐ、ボウモチーフ

プラダのリボンモチーフのブレスレット

人と人との絆を結び留めるもの。古くから愛されてきたボウモチーフには、そんな意味合いが込められているという。リボン付きの洋服は気恥ずかしくても、小さなジュエリーならば抵抗がない。そんなささやかな中年の思いに寄り添ってくれたのは、プラダのブレスレットだった。

ブラックタイを彷彿させるボウモチーフが、一糸乱れず整然と並んでいる。それも、クラスプまで抜かりなく。一つひとつのモチーフはシャープにデフォルメされ、ミニマルなチェーンブレスレットのような趣だ。男性の骨ばった手首にも馴染んでしまう、アンドロジナスな魅力に引き込まれた。

素材は、リサイクルされた18Kイエローゴールド。ブラックタイのなめらかなシルクとは相反する、強固な感触だ。それでいて、腕につけるとしなやかに沿う。まるで素肌と溶け合うかのように、有機物としての命が注ぎ込まれたかのように、みずみずしい輝きを放つ。ほのかに体温を含んだきらめきは、永遠に色褪せることがない。

熟練の手仕事が結んだもの

ブレスレット「エターナル ゴールド」〈K18YG〉¥1,375,000(予定価格)

「エターナル ゴールド」ブレスレット〈K18YG〉¥1,375,000(予定価格)

脳裏に浮かんだのは、決してほどけることのないリボンの結び目を作った、イタリアの職人の手。貴金属による繊細な意匠を生み出した、大きくてやわらかな手を想像してみる。不意に、見ず知らずのその手が、生まれて初めて蝶々結びをひとりで完成させた息子の小さな手と重なる。

人の手が結んだものは、それが卓越していようが未熟であろうが、かくもいとおしく、尊い。端正なボウをつなげた祈りのようなブレスレットが、かけがえのない思い出を連れてきてくれた。一度結ばれた絆は、簡単に途切れることはない。そう思える確かさを目の当たりにした私はいま、心底安堵している。

プラダ|ブレスレット

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連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。