息子がまだ保育園児だった頃に、蝶々結びを教えた。始めのうちは、何度やってもうまくいかなかった。片方の輪っかに、もう片方の紐を回しつけるところで、どうしても混乱が起きてしまう。根気のない私は早々に諦めてしまっていたのだが、息子はある日突然、何かを悟ったかのように、ひとりでするすると結べるようになった。
それからしばらくの間、彼の蝶々結びブームが続いた。靴紐やパーカの紐、スカーフから充電ケーブルまで、紐状のものはなんでも結びたがるようになった。部屋を掃除しているときに、カーペットの隅のフリンジが不器用に結ばれているのを発見することもあった。
普段はだらんと垂れたり伸びたりしているものが、たとえ不細工でもふたつの輪っかを作って結ばれているのを見ると、小さな幸せと不思議な高揚に包まれた。人が特別な日にリボンをつける理由が、なんとなくわかったような気がした。
小さな手で、慣れない手付きで、最後にキュッと両方の輪っかを引いたとき、彼はそこにどんな想いを託したのだろう。ただただ無心でやったのか、あるいは、今までできなかったことができるようになって、何が何だか受け止められていなかったのか。数年前まで自分の体内にいた我が子が、急に自分とは違う意志を持つひとりの人間としてそこに存在しているように思えて、胸がいっぱいになった。
連載「寝ても覚めてもきらめきたいの」:SPURエディターがパーソナルな感情とともに綴るジュエリーエッセイを堪能して。