2019.06.12

シャネル“J12”がリニューアル、「何も変えずにすべてを変える」秘訣を探る

シャネルのアイコニックなタイムピース、“J12”が新しく生まれ変わった。2000年に、当時シャネルのアーティスティック ディレクターであった故ジャック エリュによって生み出された不朽の名作“J12”。誕生から20年目を迎える節目に向けて打ち出されたテーマは「何も変えずにすべてを変える」。一見して変化に気づかないほど控えめで、それでいて大胆なリニューアルの過程を、シャネルのウォッチ部門クリエイション スタジオ ディレクターであるアルノー シャスタンの言葉とともに共に紐解こう。

 

変わらないタイムレスなアイコン

“J12” 〈ケース径38mm、高耐性セラミックケース・ブレスレット〉¥632,500
“J12” 〈ケース径38mm、高耐性セラミックケース・ブレスレット〉¥632,500

 

“J12” のデビュー当初、何よりも話題を集めたのがハイテクセラミックという革新的なマテリアル。近未来的な光沢感を放つブラックとホワイトのケースは、デザイン面だけでなく耐久性の高さからも支持を集め、ウォッチ業界に一大ブームを巻き起こした。

当時を振り返り、「その大胆不敵さと威厳に心を引き付けられた」と語るのは、今回のリニューアルを手がけたアルノー シャスタン。当時の女性向けタイムピースにしてはかなり大きめの、38mmというケースサイズもあいまって、男女問わずファンを獲得した“J12”はメゾンのアイコンとしてその地位を確立した。

 

外科医のような精密さで、既存のデザインをモダンに昇華

“J12”のリニューアルについて、「既存のものをデザインし直すことは、一からデザインを考えるよりもずっと難しい」とコメントするアルノー シャスタン。あまりに広く知られたアイコンを生まれ変わらせるという一大任務には、外科医のような精密さが求められたという。

全体で約70%の構成要素を変更したという今回のリニューアルの中で、まずはじめに取り組んだのがケースデザイン。ベゼルを取り巻くメタルのリングをスリムにし、リング周囲の刻みを30から40へと細かく変更。同じくカボションカットのリュウズもコンパクトにすることで、全体がよりシャープでモダンな印象になると同時に、操作性の向上にも成功した。

どこまでもオリジナリティを追い求めるシャネルならではのこだわりが垣間見えるのが、タイポフェイス。インデックス、「SWISS MADE」の表記をはじめ、文字盤に用いられるタイポフェイスは、今回のリニューアルで全てオリジナルの書体に変更。見比べてみてもどこが変わったか判別できないほど微々たる違いだが、全体のコンポジションを見ると明らかにモダンに洗練されていることがわかる。

 

リニューアルの要、自社開発のスイスムーブメント

デザイン面でのブラッシュアップは控えめに。一方で、中身は大胆に大幅にリニューアル。新しい“J12”に取り入れられたのは、自社開発による新しい「キャリバー 12.1」。「私が唯一、譲歩できなかったのはローターのデザイン」というアルノー氏の言葉通り、通常自動巻ムーブメントに用いられる半月型のローターを、完全な円形のパーツに改良。デザインの美しさだけでなく、パワーリザーブは約70時間、スイス公認クロノメーター検査協会の認定も受けており、実用性、精度ともにその完成度はお墨付きだ。

クチュールメゾンでもあるシャネルならではのサヴォアフェールが、機能美へと昇華された美しいムーブメントは、同じくリニューアルモデルに採用された、サファイアクリスタルのケースバックからじっくりと眺めることができる。

シャネル(カスタマーケア)
https://www.chanel.com/
0120-525-519

text:Shunsuke Okabe

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