朝の連続テレビ小説での存在感ある演技も記憶に新しい、ベテラン女優・三林京子。生まれて初めて感情を揺さぶられたという映画『ローマの休日』(’53)に、自身の芳醇な人生の物語を重ねて。年月を経ても色あせない至極のジュエリーが、エモーショナルな結晶となって輝く。
※この特集中、以下の表記は略号になります。WG(ホワイトゴールド)、YG(イエローゴールド)、RG(ローズゴールド)
初めて『ローマの休日』を観たとき、若い王女なのになんて大人やのって感動した。小学生やったけど余韻に浸ったのを覚えてる。
幼い三林さんが『ローマの休日』を初めて観て感じた高揚感を、計8カラット以上ものダイヤモンドが視線を奪うシャンデリア・イヤリングに託して。キラキラした気持ちを表現するのは、ハリー・ウィンストンが誇るペアシェイプ、マーキース、ラウンド型のダイヤモンド。それらを立体的に組み合わせることで、あらゆる角度から光を取り込めるデザインに。極細のプラチナワイヤーを使った画期的なセッティングで、宝石を肌の上に直接飾っているようなリッチなムードを楽しみたい。
アン王女にとっての初デート、何やっても楽しいわなぁ。グレゴリー・ペックが演じた記者には誰でも惚れてしまうやろ(笑)
アン王女と新聞記者のジョーがお忍びで繰り広げるたった一日のデート。イタリアの「ドルチェ・ヴィータ」を体現するブルガリの“ディーヴァドリーム”コレクションがそのワクワク感を表現する。着想源はローマの古代遺跡、カラカラ浴場の床を彩る扇形のモザイク画。グラマラスな扇形アイコンを、フェミニンかつ気品あふれるルベライトが彩る。リングでもラグジュアリーな輝きをリフレイン。存在感たっぷりのジュエリーが、自らの人生を謳歌する情熱的なヒロインにふさわしい輝きを放つ。
どこで恋に落ちたかはわからないけど、気がついたら好きになってたんやろね。自制心も飛び越えて。
今まで経験したことのない自由やときめきに興奮しつつ、それが刹那的であることも自覚していたアン王女。その気高さに寄り添うのは、「翼を持たずに生まれてきたとしても、自分の翼が育つのを妨げてはならない」というガブリエル シャネルの言葉。プリュム(羽根)モチーフは、今も昔もメゾンにとって大切なインスピレーションのひとつ。彼女の自立心あふれるエスプリにオマージュを捧げ、優美なブローチが誕生した。当時のデザインの革新性はそのまま、羽根ならではの軽やかさ、繊細さ、そして自由な精神をモダンに。胸元にはもちろん、髪飾りとしても煌めきを添えてくれる。そのしなやかな曲線美に、見果てぬ夢と希望を託して。
初めて他人を愛した、つまり生まれて初めて他人に心を許したってこと。現実を考えたら苦しいなあ。
楽しくて幸せだけど、苦しい。さまざまな感情が交錯し物思いにふける夜は、“真珠層のような”という意味を持つ“ナクレアス”を手に取って。幾重にも巻かれた真珠層の乱反射が、パールならではの艶やかで神秘的な虹色を手もとにもたらす。多面的な魅力に満ちたこの上なくエレガントな輝きは、オーガニックな流線形のラインで大胆にマッシュアップ。ダイヤモンドとイエローサファイアの存在感が、パールの持つ静謐な美しさを引き立てる。モダンなハンドカフブレスレットには、本物だけが放つことのできる真実の煌めきが。
きっと相思相愛やのにふたりは離れ離れになるなんて……。今思うと義務感に縛られすぎてる。
絶対的な現実の前に、別々の道を歩むことを決意するふたり。相手への思いと敬意が、稀少なイエローダイヤモンドの涙となってあふれ出す。カラーダイヤモンドはカッティングによって色彩が大きく変化するため、グラフでは自社工房で専門の熟練したカッターが原石のポテンシャルを最大限に引き出している。華やかな太陽を思わせるイエローのカラートーンは統一しつつ、ペア、オーバル、ラウンドのそれぞれが放つ個性的な煌めきに酔いしれて。胸元につけると3つのダイヤモンドがまっすぐに凛と並ぶペンダントは、高潔な愛の物語にふさわしい。
今この年になって改めて映画を観ると、王女も記者もカメラマンも、みんな崇高なまでにプロフェッショナルやったなって感心する。
悲恋に終わるけれど、この映画の指し示す未来はどこかポジティブ。何十年たっても色あせることのない本作の魅力を、スパンコールを連ねたようなグラフィカルなデザインの“ブトンドール”に重ねた。光をやさしく反射するローズゴールドが、マザーオブパールの繊細な光沢と生命を象徴するカーネリアンを包み込む。仕上げには高貴に輝くダイヤモンドをセッティング。さまざまなピースが奏でるプレイフルなシンフォニー。これこそが人生の醍醐味なのかもしれない。
みつばやし きょうこ/Kyoko Mitsubayashi女優。大阪府出身。噺家・桂すずめとしても高座に上がる。現在放送中のNHK連続テレビ小説「スカーレット」で、昭和、平成、令和の3時代にわたって8作品目の朝ドラ出演を果たす。大阪市いちょう大学の初代学長、日本芸術文化振興基金運営委員も務める。2月には大阪松竹座で『なにわ夫婦八景』に出演予定。
SOURCE:SPUR 2020年3月号「人生を重ねるエモーショナル・ジュエリー」
model: Kyoko Mitsubayashi photography: Osamu Yokonami styling: Maki Yanagita hair: ABE〈M0〉 make-up: COCO〈sekikawa office〉 manicure: Ayaka Tanaka〈Salon N〉 edit: Akane Chuma