知的な女性とお酒を交えながら語らえる銀座のクラブは、まさに別世界。コロナ渦で“夜の街”と名指しで冷たい視線が向けられたことを静かに受け止め、凛として働く女性がいる。彼女たちの声に耳を傾けるべく、夜の街を舞台に誇りを持ち生きる二人をモデルに迎え、夢と現実が交錯するジュエリー・スタイルを提案。この仕事の醍醐味、自粛要請解除後の状況について話を聞いた。めくるめく魅惑の夜の世界へ――。
※この特集中、以下の表記は略号になります。SV(シルバー)、YG(イエローゴールド)、WG(ホワイトゴールド)、Pt(プラチナ)
ゴールドとビジューで輝きを増す、麗しき女神
ゴールドと色石のジュエリーをアミュレットのように重ね、大人のマキシマリズムを堪能する。
強めのジュエリーでしなやかに武装
黒猫がプリントされた個性的なドレスは、ボリュームのあるチェーンネックレスやリングでハードにドレスアップ。耳もとにパンサーモチーフのイヤリングをあしらって、遊び心も忘れずに。
レトロモダンな映画女優のように
マスキュリンなシルバーのジュエリーは、イヤーカフを主役に粋な演出を。カウンターに映り込む様子は、マン・レイの作品「ノワール エ ブランシュ」を彷彿とさせる。
唯吹明日香
30歳という若さで銀座に自身のクラブをオープン。現在は、ブレア銀座のオーナーママを務めるほか、美容皮膚科、美容室、バーを経営。YouTubeのVlogも好評。
Blair GINZA●東京都中央区銀座8の7の8 GINZA8ビル 6F 03-6274-6398(会員制)
銀座のクラブ界を牽引するゲームチェンジャー
宝石のような瞳と、内からにじみ出るチャーミングな人柄。一度会うだけで、誰もがとりこになってしまう。そんな“明日香ママ”は、弱冠30歳にして銀座に自身の高級クラブを構えた。この世界に入ったのは大学3年生の頃。
「学費のためにと働き始めました。証券会社の内定が決まっていましたが夜の道をもっと極めたいと思い、内定を辞退し北新地のクラブで働くことにしたんです」と語る。そこまでのめり込んだ理由とは?
「年功序列ではないので、若くてもチャンスがあるのがこの世界の魅力。目に見える形で売り上げが上がり、お客さまに認めてもらえたと感じるとき、この仕事にやりがいを感じます」
彼女がほかのオーナーと一線を画すのは、新たな取り組み。店で勤務する期間は学費を全額サポートするという条件を掲げ、キャストを求人した。「140名もの応募がありました。80名を面接し、最終的に3名を採用しました」
コロナ禍で学費を払い続けることが困難になった女性を支援するという姿勢は、まさに業界のゲームチェンジャーと言えるだろう。
数カ月前「新型コロナの主な感染源は夜の街」とひと括りにされ非難されたことについては、「批判されやすい職種であることは仕方がないと受け止めています。休業要請中はもちろん自粛していましたが、今は会員制ですので理解のある方が飲みにいらっしゃる。その方々をしっかりおもてなしするだけです。徐々にお客さまも戻ってきました」と語る。
今年、結婚した。夜の世界では結婚後引退する人や、秘密にする人が多い中、あえてオープンに。だからこそお客さんにも応援されているという。常識に縛られず信念を貫く彼女の姿は、多くの人に勇気を届けているのだ。
イノセントな真珠を艶やかにまとう
大胆なピンクのドレスで大人の魅力を強調し、パールであどけない少女の表情を引き出して。
ARISA
大学卒業後、別の仕事の経験を経て現職に就く。銀座で57年続く老舗の高級クラブ、ランデルに勤務。
クラブ ランデル●東京都中央区銀座8の5の13 銀座STビル 2F(BAR)&3F 03-3572-3844(会員制)
クラブの文化を守りつつ銀座を活性化させたい
「私服ではあまりジュエリーをつけないので、こうやってジュエリーをまとうと仕事のスイッチが入りますね」と、今回の撮影を振り返るARISAさん。
彼女は銀座の老舗の高級クラブ、ランデルに勤務する33歳だ。大学生の頃にキャバクラでアルバイトをしたのが夜の世界に入るきっかけに。一度昼の仕事を経て、5年前に再び夜の世界へ。今は銀座でママになるためホステスとして日々経験を積んでいるところだが、いつかは自分のワインバーを出すという夢を持っている。
「この仕事の魅力は、自由な環境と自分の時間が持てるということ。今年、ソムリエの試験を受けるために、空いた時間は勉強に費やしています。でもお客さまとお店でお話ししているときは、200%の力でおもてなしします。お店で全力を出しきるので、実はアフターがちょっと苦手です(笑)」
この仕事の醍醐味を尋ねると、「ずっときれいでいられることかな。周りの女の子たちも美しくなろうと努力しているし、足を運んでくださるお客さまのためにも、そうありたいと思うんです」と言う。
コロナ禍で夜の街に冷たい視線が向けられたときは、「少し悲しかった」そうだ。「自粛期間中、銀座のお店はほぼ休業していたのに、まだ言われるの?と思うことはありました。でも今は仕方がないなと受け入れています」と打ち明ける。街全体の活気が減り、出勤回数も少なくなってしまったが、「ランデルの温かい環境とチームワークのよさ、新人のこともしっかり面倒をみようというママの愛情深さに励まされています。私も銀座を活性化させたいし、この文化を守っていきたい、と心から思います」と瞳に希望をにじませる。
SOURCE:SPUR 2020年12月号「夜の街の彼女」
photography: UMMMI. styling: Satoko Takebuchi hair: Miho Emori〈KiKi inc.〉 make-up: Shino Ariizumi〈Y’s C〉 model: Asuka Ibuki, Arisa edit: Kaeko Shabana