いい腕時計をしている人は、どんなパーソナリティなんだろう? 時計の値段に関係なく、その人の価値観や文化資本にリンクして、ともに素敵な時を刻んでいる。さあ、6人6様の背景を分析してみよう。
※この特集中、以下の表記は略号になります。YG(イエローゴールド)、PG(ピンクゴールド)、SS(ステンレススチール)
CARTIER - 憧れの人物像を時計に託す
カルティエの名作ウォッチ「パンテール ドゥ カルティエ」とともに、タクシーを待つ女性。シルクのようにしなやかなゴールドのブレスレットが優美な輝きを放つ。センスと知性を兼ね備えた、屈託のない人物像が立ち上ってくる。彼女が目指しているのはそう、90年代を駆け抜けた、キャロリン・べセット・ケネディだ。
HERMES - 知的好奇心が新たな扉を開く
王子と結婚しないシンデレラの物語。現代的な解釈で生まれた絵本を手に取る彼女の手もとには、まるでチェーンブレスレットのように煌めくエルメスの時計「ナンタケット」がなじんでいる。メゾンのコードである「シェーヌ・ダンクル」由来のデザインはタイムレスで上品、そしてエフォートレスだ。世界を学び始めた彼女の背中をそっと押してくれるはず。
VAN CLEEF & ARPELS - キュートなチャームに夢中
陶製の宝石で飾られたジュエリーボックスを、とても大事そうに抱える婦人。素材に関係なく、心ときめくチャームであれば彼女にとってはそれが「ほんもの」だ。その最高峰は、シックなサテンストラップの腕時計「アルハンブラ」。1968年の誕生以来、メゾンのアイコンとして愛されてきた幸運の四つ葉のクローバーモチーフは、ブラウスにもちりばめている。
DIOR - 人生の選択を支える文字盤
映画『Spencer』(’21)で描かれるダイアナ元妃はどんな人物なんだろう。先達の人生を思うとき、自分自身の生き方を同時に考えてみたくなる。人生の岐路に立つ彼女を支えるのは「ラ デ ドゥ ディオール サティーヌ」ウォッチ。インデックスのないマラカイトの文字盤は、石そのものの美しさが際立つ。眺めているだけで癒やされるような、不思議な魅力がある。
GUCCI - ミューズの本心を垣間見る
インターロッキングGモチーフが躍るダイヤルに、タフな5連リンクのブレスレット。GUCCI 25H」を身につけた彼女は、芸術家の創造欲をかき立てるミューズとして、じっと窓辺の景色を眺めている。しっとりと憂いを帯びながらも、愛用時計の名前の由来が、アレッサンドロ・ミケーレのラッキーナンバーだという事実にウィットを感じ、内心は笑顔だ。
LOUIS VUITTON - 知性でいいものを見極めたい
ジャン=リュック・ゴダールの『中国女』(’67)に触発された学生は、ルーツの文化について考える。モノグラム・キャンバスの質感を再現したフェイスがキャッチーな時計「タンブール モノグラム ブラウン&ゴールド」は、メゾンのアイコンが詰まった逸品。経済・社会思想に左右されることなく、いいと感じたものを選びとる力を養いたいと思っている。
SOURCE:SPUR 2022年1月号「彼女のプロファイル時計」
photography: Reiko Toyama styling: Naomi Shimizu hair: HORI 〈BE NATURAL〉 make-up: Kie Kiyohara 〈beauty direction〉 model: Jessica, Kanon Hirata, Effy,Hiromi Yamamura, Senping cooperation: Kudan House special thanks: nine stories