メゾンの卓越したクラフツマンシップ、比類なき完璧なデザイン、素材への飽くなき追求……。時代を超えタイムレスな輝きを放つ名品には必ず、“愛され続ける理由”がある。連載「人生を彩る名品図鑑」では、そんな名品が名品たる所以を徹底解剖。
今回紹介するのは、ヴァン クリーフ&アーペルの「アルハンブラ」。
四つ葉のクローバーに“幸福”を祈って。50年以上愛され続けるメゾンのアイコン、「アルハンブラ」コレクション
幸運のシンボルである四つ葉のクローバーをモチーフに、1968年に誕生したヴァン クリーフ&アーペルを象徴するコレクション、「アルハンブラ」。流れるようにしなやかで優美なデザインと、それを支えるメゾンの卓越したサヴォアフェール(匠の技)が光る芸術性の高いコレクションは、誕生から50年以上が経った今も、多くの人の心を惹きつけてやまないエターナルな魅力を秘めている。
人生に寄り添う、お守りのようなジュエリー
「幸運になりたければ、幸運を信じなさい」——これはメゾンの創業者、エステル・アーペルの甥であり、メゾンの経営陣の一人として活躍したジャック・アーペルの口癖だ。天性の収集家でもあったジャック・アーペルは、フランスのジェルミニー・レヴックにある自宅の庭で四つ葉のクローバーを見つけては摘み取り、「決して希望を失ってはならない」というメッセージが込められたアメリカの詩『Don’t Quit』とともに、同僚へ贈っていたといわれている。
ヴァン クリーフ&アーペルの長い歴史においても、“幸運”はメゾンの創造性を導く光であり、重要なテーマのひとつ。その象徴として、“四つ葉のクローバー”はアルハンブラ コレクションが誕生するもっと以前の1906年から、木製のお守りやチャーム、フェアリーなどとともに、メゾンのアーカイブに登場している。
その後、幸運というテーマをさまざまなコレクションを通して描いてきたメゾンはついに、1968年に「アルハンブラ ロングネックレス」を発表。ゴールドビーズで縁取られた、クリース(しわ)加工のイエローゴールドのクローバーという、その愛らしいデザインは瞬く間に世界中で人気を博し、「幸運のシンボル=アルハンブラ」として今日まで愛されている。
ヴァン クリーフ&アーペルがこれほどまでに、“四つ葉のクローバー”というモチーフを大切にする訳は、それらが人々の心を惹きつけるシンボルであり、想像力や感情を揺り動かす魔法のような力があると信じてやまないからだ。そしてそれはまさに真実であり、私たちはアルハンブラという可憐なクローバーを通して、自信や希望を見いだすことができる。人生において幸せな時も、そうでない時も、そっと側に寄り添いエンパワメントしてくれる、優しく凛とした唯一無二のジュエリー。その確固たる世界観が、色褪せることのないエターナルな魅力として、アルハンブラ コレクションを輝かせ続けている。
毎日の装いにマッチする、“デイリージュエリー”としての魅力
アルハンブラ コレクションが永く愛される理由は、デイリーなスタイリングに取り入れやすい、その使いやすさにもある。ゴールドや貴石、ハードストーンといった、鮮烈な色彩と輝きをまとった天然素材のジュエリーを、指に、デコルテに、そして手首にいくつも重ねたり、他のジュエリーと組み合わせてつけるというアルハンブラの遊び心溢れるスタイルは、日に日に柔らかく、流れるようなシルエットへ変化していった1960〜70年代当時のファッションとぴったりマッチしていた。
そして実際に、毎日身につけられることを想定してデザインされており、1968年に「アルハンブラ ロングネックレス」が誕生した際には、ハイジュエリーよりも身近でデイリーに取り入れられるジュエリーを提案する、当時としては新しいコンセプトを掲げたパリ・ヴァンドーム広場22番地にある店舗「ラ ブティック」に並べられ、そこから人気を集めていったという。
エレガントにもモードにも、そしてカジュアルにも、どんなスタイルにも見事に調和する、洗練されたデザイン。職人技が光る、なめらかなつけ心地。そして、日常に寄り添う“お守り”としてのアルハンブラの世界観。これらすべてが、“ラグジュアリーなデイリージュエリー”という全く新しい価値観を築き、今日のジュエリーの在り方にも多大なる影響を与えている。
アートピースとしての輝きを支える、卓越したサヴォアフェール
そしてもうひとつ。アルハンブラ コレクションの魅力として忘れてはいけないのが、優れた専門技術を基に製作された、その精巧さだ。アルハンブラ コレクションは素材の選択から製作、品質検査に至るまで15以上もの工程を有し、その各工程ごとに、宝石細工職人、ジュエリー職人、セッティング職人、研磨職人などのスペシャリストが携わっている。
まずはじめに、厳格な品質基準のもとにセレクトされたダイヤモンド、マザー・オブ・パール、ハードストーンなどの天然素材を厳密にカットし、独特のニュアンスと光沢が生まれるよう丁寧に研磨。次にゴールドを融解してアイコニックなゴールドビーズの外枠を形成し、モチーフを外枠にセットする。そして、プロング(爪)によって丁寧に固定した後、最後に再び手作業で研磨することで、時が経っても常に美しく輝き続けるアルハンブラが誕生する。
この工程の様子はメゾンの公式動画でも紹介されているので、ぜひその卓越したサヴォアフェールを一度見てほしい。ヴァン クリーフ&アーペルだからこそ成し得る比類なきクオリティと、職人たちの誇りと情熱が注がれたアルハンブラを手に入れるということ。それはすなわち、“アートピース”を手に入れることと同等だということがよく分かるはずだ。
1968年の誕生から50年以上、アルハンブラ コレクションはオリジナルのデザインを反映した「ヴィンテージ アルハンブラ」を中心に、幅広い天然素材や多彩なシンボル、サイズ違いのモチーフを加えながら、絶えず新しいデザインを提案し続けている。特にターコイズ、ダイヤモンド、オニキス、カーネリアン、マラカイト、真珠といった貴重な天然素材のバリエーションの豊富さは見事。素材によりそれぞれ表情が異なるので、コレクター心をくすぐるはずだ。
現在展開しているコレクションは全部で6つ。ここからは各コレクションの特色を紹介しよう。
ヴィンテージ アルハンブラ(発表:1968年)
1968年発表の「アルハンブラ ロングネックレス」に忠実なデザインの“ヴィンテージ アルハンブラ”は、まさにアルハンブラの原点。モチーフすべてがゴールドビーズで縁取られ、洗練された天然素材をセットしている。“ファースト・アルハンブラ”に選ぶ人も多い、人気コレクションだ。
ピュア アルハンブラ(発表:2001年)
アルハンブラモチーフを新たな解釈で表現した“ピュア アルハンブラ”は、シンプルでしなやかな曲線と、なめらかなゴールドが際立つデザインが特徴。ポリッシュ仕上げを施し、わずかに丸みをもたせたモチーフは、マザー・オブ・パールやオニキス、ダイヤモンドによりピュアな美しさを放つ。
マジック アルハンブラ(発表:2006年)
カーネリアンとタイガーズアイ、ホワイトとグレーのマザーオブパール、ホワイトゴールドとダイヤモンドなど、異なる素材やサイズ違いのモチーフを組み合わせた“マジック アルハンブラ”。遊び心を感じる大胆なアシンメトリーのデザインも用意し、楽しげな装いを生み出す。
ラッキー アルハンブラ(発表:2006年)
ヴァン クリーフ&アーペルが愛してやまないテーマのひとつ、“自然”からインスパイアされたコレクション。ハートや蝶、葉っぱ、星といった、鮮やかでエレガントなフォルムのモチーフがドラマチックに組み合わさり、心弾むハーモニーを奏でる。
ビザンチン アルハンブラ(発表:2006年)
“ビザンチン アルハンブラ”は、控えめなエレガンスが貫かれた、グラフィカルなアルハンブラ。イエローゴールドのみで作られた、ソリッドモチーフとオープンワークモチーフのペンダントとブレスレットを用意している。
スウィート アルハンブラ(発表:2007年)
コレクションで最も小さいサイズの“スウィート アルハンブラ”は、愛らしさの中に凛とした強さを感じさせる佇まいが魅力。四つ葉のクローバーのほか、ハートや蝶などのモチーフが、ブレスレットやリング、ペンダント、イヤリング、そしてウォッチの上でチャーミングに輝く。
時を超える優美さと洗練されたモダンなデザインで、数多くのセレブリティも虜にしてきた、アルハンブラ コレクション。その美しさは、しなやかにエレガントに生きる、自立した女性によく似合う。“アルハンブラをこよなく愛した女性”としてその名が知られる、3名の女性たちを紹介したい。
フランソワーズ・アルディ
2本のアルハンブラ ネックレスと1本のロングネックレスを身につけた、フランスの歌手・女優のフランソワーズ・アルディ。1960年代の“イエイエ族”ファッションのアイコンでもある、コケティッシュなフランソワーズの品の良さを、アルハンブラが絶妙に引き出している。
ロミー・シュナイダー
オーストリア・ウィーン出身の女優、ロミー・シュナイダーもアルハンブラに魅せられたひとり。1974年に公開されたミシェル・ドヴィル監督作『怒りの羊』では、ロングネックレスを身につけたエレガントなスタイルで、スクリーンに登場している。
グレース・ケリー
イエローゴールドのネックレスに、コーラルやラピスラズリ、マラカイトを配した色彩豊かなロングネックレスを、公的な場からプライベートな場までつけこなしていた、モナコ公妃グレース・ケリー。彼女の気品に満ちたその姿に、全世界の女性たちが憧れた。
SPUR.JP厳選の、アルハンブラ コレクション8選
ロングネックレスからスタートしたアルハンブラ コレクションも、今では多彩な6つのコレクションのもと、ブレスレット、リング、イヤリング、ウォッチなどカテゴリーも豊富にラインナップ。
最後に、新作からベストセラーまで、今こそ手に入れたいアイテムを厳選して紹介。すでにコレクターの人も、初めての購入を検討している人も、ぜひチェックして。
新たな歴史を作る、華やかなロングネックレス
「アルハンブラ ロングネックレス」からスタートしたアルハンブラ コレクションの歴史に、2023年6月、新しいロングネックレスが登場。ローズゴールドとカーネリアンの華やかな組み合わせが、実に優雅。
品格を宿すホワイトゴールドでクールな首元に
エレガントなアルハンブラの世界観に、洗練されたホワイトゴールドがクリーンでクールなムードを添える。モード派にぴったりな逸品。
マザー・オブ・パールが優美な表情を湛えて
ピュアな美しさに輝くマザー・オブ・パールのブレスレットが、優しげな手もとを完成。柔らかな色調で、目に入る度に心まで癒される。
ローズゴールドとカーネリアンのコントラストに釘付け
前出の「ヴィンテージ アルハンブラ ロングネックレス(20モチーフ)」と同じく、2023年6月に発売になったブレスレット。ネックレスと同素材なので、揃えてコーディネートするのもおすすめだ。
ゴールドビーズの縁が際立つ、気品に満ちたデザイン
こちらも2023年6月に登場の新しいリング。肌を美しく見せてくれる高貴なローズゴールドが、指に気品と自信を与えてくれる。リング全体をゴールドビーズで縁取り、華やかなデザインに。リバーシブル仕様で裏返すとカーネリアンが現れるサプライズも。
神秘的な魅力を纏った、オニキスのリング
メゾンで根強い人気を誇るオニキスを使った、「ヴィンテージ アルハンブラ リング」。イエローゴールドと上品なオニキスのコントラストが際立ち、魅惑の表情を醸してくれる。
鮮やかなマラカイトは差し色にぴったり
耳元をパッと華やかに彩る、鮮やかなマラカイトのイヤリング。ドレッシーなスタイルにはもちろん、ニットやTシャツなど、カジュアルウェアにも似合う汎用性の高い逸品。
ネックレス感覚で楽しめるペンダントウォッチ
サテンストラップやゴールドのブレスレットなど、種類もさまざまに揃う人気のウォッチの中で、あえてペンダント型をチョイス。ケースをスライドさせて時刻を確認するという、優雅な所作を楽しみたい。
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