22回続いた連載「井之脇海と、山の話」がいったん終了して、今月号からタイトルもデザインもリニューアルして再スタートです!(バックナンバーはSPURオンラインで読めますよ)。山旅やアウトドアの先輩たちとの対談を通じて、自分らしいスタイルが見えてきました。だから外遊びをもっと深めたい、山だけでなく興味あることはなんでもやってみよう、というわけで連載初回は、念願の「焚き火」です。
森での念願の焚き火。「焚き火ってどこでもしていいわけじゃないんだよね」と小林さん。河川敷や海辺、森の中など焚き火をしたら楽しそうな場所でも、必ず行政や所有者の許可が下りているか、そしてその場のルールの確認を。
焚き火、したことあります? 僕、実はなかったんですよ。映画の撮影で、ジャングルに隠れている日本兵の役をやったときに一度だけ。それも、自分では火をつけていない。焚き火ってどうやるの?というところからのスタートです。そこで、この連載でも担当してもらっているヘア&メイクアップアーティストの“こば兄”こと、小林雄美さんに先生をお願いしました。MTBが趣味のこば兄は河川敷や森林のコースをMTBで走っては、帰りに焚き火ができる場所を探して楽しんでいるとか。
ウィスキー好きな井之脇さん。焚き火の友には、スモーキーな風味のアードベッグをストレートで。ハンモックに揺られ、火にあたり、酒を飲んでリフレッシュ。
焚き火台ってバーベキューグリルやテーブルつきのオートキャンプ向きのもの、手のひらにのるような一人用などいろんなサイズ、タイプがあるんです。その中からこば兄が「海くんらしい」と、持ってきたのがアウトドアのインディーズブランド「MONORAL」の焚き火台。パーツは耐熱クロスに折りたたみできる脚だけ。「連れて歩く焚き火台」というキャッチコピーどおり、ザックに放りこめるコンパクトさで重量わずか980g。合理的なものが好きな僕のことをわかってくれています!
焚き火台の次に、必要なのが燃料となる薪です。今回、訪れた森の中には枯れた枝がたくさん落ちていて、ぐるぐる歩きながら拾うこと30分。乾燥していないと燃やすのが大変だよ、というアドバイスで、よく乾燥した枝や葉を集めます。事前に準備するタイプなので、自然の中で、その状況に合わせて対応していく体験が新鮮で楽しい!
火打ち石で火をつける!? 道具はできるだけシンプルに
薪が足りない、火がつかないときのために、市販の薪も用意しました。東京・檜原村で林業を営む東京チェンソーズ(連載20回目でおじゃましました)の間伐材を利用したサステイナブルな薪です。自然の中で遊ばせてもらっているので選ぶなら少しでも環境にやさしいものを、とオンラインでポチッと。
焚き火の本なんかを読んでいると、火のつけ方にスキルや美意識が表れるとか。着火剤やバーナーを使うのは邪道、なんて意見もあります。「火がつくならなんでもいいんじゃない?」と言うこば兄ですが、僕には厳しく火打ち石を渡してきました(笑)。火打ち石といっても現代版の使いやすいもの。ファイヤースターターといって、マグネシウムでできた棒同士をこすり合わせ、出てきた粉を火種となる麻ひもや新聞紙にまぶします。火打ち石の要領で、火種に火がついたら消さないように息を吹きかける! 乾いた葉っぱや松ぼっくりなど油を含んで燃えやすいものを仕込んでおくのもコツ。奥深いので、火おこしにいろいろな流儀があるというのもわかる気がします。
スモークベーコンの塊を厚めに切って、スキレットで焼く。串にさして直接火であぶったほうが、香ばしさが増して美味。
さて、火がおきたらあとはなにをする? なにもしないんです。火のそばに座って、ぼーっとウィスキーを飲みながら見るだけ。あ、ベーコンは厚切りにしてスキレットと直火で焼いて食べました。焚き火で直接あぶると煤がつくんですが、それが逆に香ばしく、最高にうまくなる。ウィスキーもスモーキーなものを持ってきたので、よく合うんです。ああ、しみじみ。
携帯電話は家において、台本と読みたい本だけ持って2日くらいこうしていたいなあ。アメリカのロングトレイルみたいに衣食住を詰め込んだザックを背負って、数週間かけて好きな場所で焚き火をしながら寝泊まりする。そんな過ごし方、理想です。
帰る時間を考えて、薪は燃やせる分だけ足すこと。僕は知らずにどんどん薪を足してしまっていました(笑)。灰になるまで燃え尽きるのを待ち、しっかり火を消してから、指定の場所に片づけて帰りましょう!
集めた枝を鋸で細かくカット。「こういう準備をするのが楽しいよね」と黙々と作業。無事火もおこせて笑顔。
Profile
いのわき かい●俳優。1995年神奈川県・横須賀生まれ。父の影響で登山を始め、日本百名山制覇が目標。インスタグラム(@kai_inowaki)で、山の写真や撮影のオフショットなど発信。現在、金曜ドラマ「俺の家の話」(TBS系)にプロレスラー役で出演中。
SOURCE:SPUR 2021年4月号「井之脇海、山と自然を遊びつくす」
photography: Nao Shimizu styling: Kentaro Higaki 〈tsujimanagement〉 hair & make-up: Takeharu Kobayashi edit: Tomoko Yanagisawa special thanks: Takibi Village Ino