クライミング熱に火がつき聖地の瑞牆山へ
僕の趣味である登山をはじめ、「自然のなかで遊びつくす」がテーマのこの連載。第1回は焚き火、2回は軽アイゼンで雪山ハイキング、3・4回は世界的なクライマー、平山ユージさんに教えていただいて、クライミングジム&外岩クライミング(愛あるスパルタ講習のおかげでクライミングに目覚めた!)を楽しみました。
クライミングに関しては、じわじわとやりたい熱が高まるばかり。先日もテントを買いに行ったのに、クライミングシューズをまさかの衝動買いしてしまいました。ジムにも近いうちに行きたいと思っています。
平山さんから習っているときに、「クライミングができると、岩場が多い登山道も楽になるよ」と聞きました。実践してみたくなって、今回は山梨・瑞牆山へ登山に。瑞牆山は、日本百名山のひとつで、全山制覇を目指している僕にとっては14座目です。
百名山とは、小説家・登山家の深田久弥氏が多くの山々から自分が好きな山百座を選んだものですが、随筆の中で瑞牆山のことをこう書いています。
「この山は岩峰の集合体とでも言うべきか。岩峰群を持った山は他にもあるが、瑞牆山のユニークな点は、その岩峰が樹林帯と混合しているところである。まるで針葉樹の大森林から、ニョキニョキと岩が生えているような趣である」
ニョキニョキと生えている!? 岩がゴロゴロしている道を歩くのが好きな僕にとっては歩きがいのある山。しかも日帰りで行けるんです。
登山口からゆるやかな階段を上り、50分ほどで富士見平小屋(5)へ(広いテント場があるので、いつか泊まりに来たい! ここをベースにして、クライミングをする人もいるのだとか)。しばらくアップダウンを繰り返しながら進むと、見どころのひとつである「桃太郎岩」(8)に。ぱっかーんと割れた大きな岩、と聞いていたのでどれくらいかと思っていたら想像していた以上に大きかった! 写真での僕との対比、わかります? 何人、桃太郎入っているんだろう?
頂上は富士山や南アルプス、八ヶ岳とパノラマの眺め
桃太郎岩を越えると、ニョキニョキという表現はウソじゃなかった、と納得。そびえ立つ大岩と奇岩の連続です。クライミングで教えてもらった極意「手の力で登るんじゃなくて、体重移動」を思い出しながら、岩を見極めて、どう手足を動かせばいいのかを考えるのが楽しい! 数十分前は山中からはるか山頂を見上げ、ノコギリのようと思っていた岩場に、今自分がたどり着いて登っている。そう思うと、山を歩く面白さを改めて感じます。
途中、高さ約30mの岩峰「大ヤスリ岩」(3)を横目で見ながら進むとゴールはもうすぐ。頂上は岩場で、数十人は立てる広さ。けれど、全体的に傾斜があって、南斜面は急に切れ落ちているため、風が強い日は煽られないように、腰を低くするようご注意を。僕は高所は平気なので、高度感のある景色を楽しみました。それにしても、富士山や南アルプス、八ヶ岳の眺めがすごい! さっきまで乗り越えるのに必死だった岩場も見えて、登りにかかった3時間以上の達成感があります。
瑞牆山、好きになりました。次はお隣の金峰山(こちらも百名山)にも登りたいなあ。道中、スタッフの方から「岩の山が好きなら、次は北穂高がいいよ」とおすすめされました。燕岳も行きたいし、北アルプスの山々をつないで歩く縦走もしたい。ああ、やっぱりテントを早く買わなきゃ。
Peofile
いのわき かい●俳優。1995年神奈川県・横須賀生まれ。父の影響で登山を始め、日本百名山を制覇することが目標。インスタグラム(@kai_inowaki)で、山の写真も発信。公開中の映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』に黒塩役で出演中。
SOURCE:SPUR 2021年8月号「井之脇海、山と自然を遊びつくす」
photography: Kasane Nogawa hair & make-up: Naoki Ishikawa edit: Tomoko Yanagisawa