Appleのゴーグル型デバイス「Apple Vision Pro」でワクワクする未来へ! vol.196

今年の2月からアメリカ限定で先行発売が始まっていたAppleのゴーグル型デバイス「Apple Vision Pro(以下、AVP)」。先月末から、日本でも販売が始まりました。

Apple Vision Pro

初体験で感じた未来へのワクワク感

ゴーグル型のデバイスはこれまでも色々試してきましたが、正直なところAVPにはあまり興味が湧いていませんでした。ところが、実機を体験する機会を得たところ、案の定、魅了されてしまい……(笑)。なぜかというと、約20年前にiPhoneが登場し初めて触ったときに感じた「今すぐ必需品にはならないだろうけど、近い未来これが“普通”になっていったりして……!」と、まだ見ぬ未来へのワクワク感を久しぶりに感じたんですよね。

現実世界にレイヤーを増やす、空間コンピューティング

初めて使ったときにびっくりしたのが、眼の前の景色がほぼそのまま見えるので、閉鎖感を全く感じなかったことです。そして、見慣れたアイコンたちが眼の前に浮かんでいる……。

Apple Vision Proを装着した際の見え方イメージ

これまでのゴーグル型のデバイスが、どちらかというとメタバースのような、VR上に作られた“別の世界”に没入することに重きを置いているのと比べると、AVPは今見えている眼の前の現実世界の空間に“情報のレイヤーを一枚増やす”ような設計がなされています。AppleはAVPを通した体験を「空間コンピューティング」と呼んでいますが、映像コンテンツを見たり、Macで仕事をしたり、友人とビデオ通話をしたりといった、これまで画面を通して行っていたことが、空間でできるようになる、そんな感覚。

Appleのゴーグル型デバイス「Applの画像_3
自分の手も見えますし、自分のMacをミラーリングしてAVPの中で作業をすることもできます

視線と手だけで操作

操作はコントローラー要らず。視線がマウスのカーソルのような「選択」の役割を果たし、それに加えて、自分の人差し指と親指を合わせて、タップしたり、動かしたりすることで、一通りの操作ができるようになっています。細かい作業には向いていませんが、慣れればストレスなくスムーズに操作することができます。

Apple Vision Proを操作しているイメージ

また、セキュリティ面では、iPhoneにおけるFace IDの代わりに目の虹彩情報を使った「Optic ID」が搭載されており、持ち主がただ見つめるだけでロックが解除されます。 また、普段からiCloudキーチェーンのパスワード管理機能を活用していれば、各種サービスへのログインもスムーズ。

周囲の環境をどのくらい見えるようにするのかは、本体右上に付いているデジタルクラウンを回すことでコントロールすることができるようになっています。完全に周囲が見えない状態にすれば、AVPの世界に浸れます。

Apple Vision Proの背景を切り替えた様子

デフォルトで用意されている環境背景はどれも美しくて、疲れたときにはただその環境に浸って休憩する、なんてのもアリです。私はMacの画面をミラーリングして作業に集中したいとき、自分の視界の範囲だけを環境で覆い、斜め後ろを見れば周囲の状況を確認できるようにして使うのが気に入っています。

多様なコンテンツ、すでに対応アプリもいろいろ

高精細な映像と没入感を生かして楽しめる3Dコンテンツは、思わず「おおお!」と声が出てしまうほど。3D映画も色々と楽しめるようになっていますし、AVPでしか見られない「Apple Immersive Video」は視界に広がる180度3D映像と空間オーディオで、サッカーの試合やアーティストのレコーディング会場にお邪魔したかのような、まさにイマーシブな体験をすることができます。あいにく、この凄さは動画や静止画のキャプチャーでは伝えづらいものなので……ぜひ実際に体験してみてほしいところ。iPhone 15 Proシリーズで撮影できる空間ビデオやパノラマ写真も楽しむことができます。

Appleのゴーグル型デバイス「Applの画像_6
Source: Apple

おなじみのOffice系ソフトやDJが楽しめるアプリ、機械の構造や使い方を3Dで学べるアプリや各種ゲームなど、すでにAVPに対応したアプリも多くリリースされているのですが、個人的に気に入っているのがテーブルの上に3Dの地形図を広げて覗ける「スーパー地形」と、空間に線が描ける「AirDraw - Finger Paint」というシンプルなお絵描きアプリ。AirDrawは線の金属っぽい質感が可愛くて、旅先でVlogのタイトルをこれを使って書いたら面白いかも、なんて。

空間に線を描けるアプリ「AirDraw」
空間に線を描ける「AirDraw」
サバト・デ・サルノのファーストコレクションの舞台裏に浸れるGUCCIのアプリ
サバト・デ・サルノのファーストコレクションの舞台裏に浸れるGUCCIのアプリ

周囲にAVPユーザーがいれば、AVPを使って作れる自分の3Dアバター「空間Persona」を使って、次世代のFaceTime通話を楽しむこともできます。

AVPを使って作れる自分の3Dアバター「空間Persona」
私のPersonaです

実際に友人と試してみたのですが、表情だけでなく身振り手振りも反映されることと、音声がその人のPersonaが表示されている方向から聞こえるのも相まって、まるでその場に集っているかのような感覚で会話を楽しめました。コロナ禍にこれがあったら、もっとオンライン飲み会が楽しめたのになあ……なんて。

Appleのゴーグル型デバイス「Applの画像_10
通話時はこんな感じで空間Personaが現れます(Source: Apple)

気になる点と今後の期待

「これは色々な未来を見せてくれるデバイスだ」と感激しきりだったAVPですが、もちろんいくつか気になる点も。バッテリーが本体とは別になっており、使用中は常にバッテリーと一緒に行動しなければなりません。デニムなどを着ているときはポケットに入れればよいのですが、繊細な素材の服を着ている時、やり場に困ることがあります(笑)。

Apple Vision Pro本体とバッテリー
本体とケーブルでつながるバッテリー

そして、長時間使っていると気になってくるのが、重さ。付属している2つのバンドのうち、2点で支えるタイプの「デュアルループバンド」を使うと多少は楽になるものの、数時間連続して使っていると首筋に違和感が……。また、顔に密着させて使うので、メイクや髪型の崩れが気になり、外出前に使うのは憚られるなと感じています。

特徴的なニット素材で作られたApple Vision Proのソロニットバンドとカバー
特徴的なニット素材で作られたソロニットバンドとカバー

円安の影響もあり、価格は599,800円(税込)からとラグジュアリーブランドのバッグと天秤にかけたくなるプライスで、おいそれと手を出しにくい製品ではありますが、Appleストアの各店舗ではAVPを体験できるデモを予約制で開催中です。少し先の未来、ぜひ体験してみてください。