03 愛するあんこ揚げ菓子たち

SPUR本誌にて好評(だと願いたい)連載中の、わたくし平野紗季子による「スイーツタイムトラベル」。「たったひとかけらのお菓子は、時間を巻き戻すこともできるのだ」をテーマに、お菓子を”時間旅行の装置”と捉え、味に歴史に文化に記憶、そのお菓子が持つストーリーをビジュアルとテキストでお届けします。9月号の第3回目に登場したのは、奈良時代にルーツを持つ唐菓子「清浄歓喜団」。

photo:Masaya Takagi styling:Keiko Hudson
photo:Masaya Takagi styling:Keiko Hudson

その内容はぜひ誌面でご覧いただくとして、こちらの番外編?というかおまけ?コーナーでは、「他にもあります、あんこ揚げ菓子」を徒然なるままに紹介したいと思います(というのも清浄歓喜団は白檀や竜脳の香りを練り込んだ漉し餡を、生地に包んで揚げたお菓子なので)。来る日も来る日もスイーツ求めて右往左往、お菓子食い平野の揚げ菓子メモ。糖分不足の休憩タイムなんかにぜひゆるりとお読みください〜。




御門屋の揚げまんじゅう


「オモンヤの揚げまんじゅう食べたい」「いやミカドヤだから」。そのやりとりを母と何回したかわからないくらい小さい頃から大好きな東京老舗の揚げまんじゅう。私にとってのヴェルタースオリジナル、といっていいほど大切な存在です。黄金色に揚げられた平べったいおまんじゅうは、なめらかな漉し餡と香ばしい生地のベストマッチ。バルミューダでリベイクするとサクッと食感が加わってベリーベストマッチ。大きな百貨店のデパ地下には高確率で出店しているのでついつい通り過ぎるたびに「おっ」と思って1-2個買ってしまう。揚げまんじゅうがかばんの中に入っていると一日機嫌がいい。レディのアンガーコントロールは御門屋の揚げまんじゅうから(?)。




中里の揚最中


最高級ぱりんこのような塩っぱい揚最中でこっくりとした粒あんをサンドしております。あまい、しょっぱい、あまじょっぱいの罪深きマリアージュで食べる手がとまらなくなるので、6個入りではとても足りません。二人分でも8個入りを買うべきです。12個入りなら万々歳でしょう。甘さに偏りがちな和菓子界にあって異端、味の調和が完璧に整った魔性のバランス菓子。和菓子は甘くて苦手なのよ、なんて言ってるそこのあなたにこそ食べていただきたいです。




天ぷら新宿つな八の新宿揚げ饅頭


新宿は苦手だけど新宿駅の中にある味なグルメストリート「メトロ食堂街」は大好きで、よく永坂更科の立ち食いスタンドで蕎麦を啜ったり(立ち食い蕎麦の最高峰だと思う)追分だんご本舗で味な散歩(という粋な名前のお菓子セット)を食べたりしています。天ぷらのつな八さんも店舗を構えていて、そこで出逢ったのが「新宿揚げ饅頭」。なんとこちらつな八と新宿中村屋という、押しも押されぬ新宿二大老舗によるコラボレーション菓子でして(仲が良いのは素敵なこと♡)、中村屋の酒香まんじゅう(&黒糖まんじゅう)をつな八がカラリと揚げてしまっているのです。しかも店内で食べられるのは、揚!げ!た!て! 好きな言葉は「揚げたて」です!とすんでのところで言いそうになるのを自己紹介のたびに堪えている私のような揚げたてフリーク(マックのフライドポテトも揚げたてを待つタイプ)には、つな八ならではのごま油の香りがたまらない熱々サックサクのおまんじゅうに心を奪われずにはいられませんでした。




平野紗季子プロフィール画像
平野紗季子

1991年、福岡県生まれのフードエッセイスト。小学生から食日記をつけ続ける生粋のごはん狂。雑誌での連載を中心に活動するほか、お菓子やイベントのプロデュースなども手掛ける。著書に『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)がある。日々の食生活はインスタグラムにて。

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