「旅の楽しみのひとつは、知らなかった味に出合うこと」。現地の味を思い出したり、まだ見ぬ土地を想像しながら生まれたレシピが、旅情を刺激する。いつもの食卓で、非日常を味わおう。

【長尾智子の旅する食卓|レシピ】イギリスのシェパーズパイ
「旅の楽しみのひとつは、知らなかった味に出合うこと」。現地の味を思い出したり、まだ見ぬ土地を想像しながら生まれたレシピが、旅情を刺激する。いつもの食卓で、非日常を味わおう。
シェパーズパイとは
イギリスの伝統的なパイ料理。シェパーズは羊飼いの、という意味で、ラムのひき肉を使ったものを指す。もとはロースト肉などの残りものにマッシュポテトを添えて焼いた家庭料理で、パブメニューとしても人気がある。
冬が近づくにつれて恋しくなるのが、温かいオーブン料理。中でもイギリスのパイ料理は素朴で実直、家庭的な味わいが魅力。その代表ともいえるのが、"羊飼いのパイ"という名のシェパーズパイ。「羊飼いの名の通り、本来はラムのひき肉で作るものですが、今回は手に入りやすい牛肉とミックスで。本来、牛肉だけで作るとコテージパイと名前が変わります」。
パイといってもいわゆるパイ生地は使わず、パイディッシュと呼ばれる耐熱皿にフィリングを詰めて、マッシュポテトで蓋をして焼くユニークな形式が伝統のスタイル。「マッシュポテトの表面に筋状の模様をつけて焼くと、おいしそうな焦げ目が焼き上がりの演出に一役買ってくれます。小さめに作れば普段の食事やアペロに、大きな器でたっぷり焼くとパーティのメインディッシュにも。シンプルなサラダを添えるだけで、充分に満足感のある食卓になります」。
身近な材料で手軽に作れて、飽きずにいつでもおいしい。イギリスらしさが詰まった質実剛健なパイ料理を、ぜひ冬の定番に。
材料&レシピ
イギリスのシェパーズパイ
ラム肉(切り落とし、薄切りなど)
約200g
牛ひき肉
約200g
玉ねぎ
1/2個
にんじん
1/2個
ブラウンマッシュルーム
5個
にんにく
1片
薄力粉
小さじ1
トマトピュレ
大さじ4
ウスターソース
大さじ2
塩、こしょう
各少々
白ワイン
50㎖
植物油(米油など)
小さじ2
〈マッシュポテト〉
じゃがいも
大3個
塩
少々
無塩バター
30g
牛乳
80㎖
フィリングの準備をする。にんじんはよく洗い、皮つきのまま粗めのみじん切りにする。玉ねぎも同様に粗めのみじん切りに。マッシュルームは縦に薄切りにしてから粗みじん切りにする。にんにくは皮をむいて2等分し、芯を取って粗みじんに刻む。
ラム肉は細かく切り分けるように刻んでから、さらに叩くようにして細かく刻む。フライパンに油を入れ、①のにんにく、玉ねぎ、にんじん、マッシュルームを加えて中火にかけ、軽く塩、こしょうをふり炒める。
野菜に火が通ったら、牛ひき肉と②のラム肉を加える。ほぐしながら炒め、色が変わったら薄力粉をふるいながら加えて混ぜ、トマトピュレ、ウスターソース、白ワインと水100㎖を加え、煮詰めながら炒め合わせる。焦げないように火加減を調節しながら水分を飛ばす。よく煮えたら火を止め、バター(分量外)を薄く塗った耐熱容器に詰めておく。
マッシュポテトを作る。じゃがいもは皮をむき、1個を5〜6等分に切り分けて軽く水にさらしてから鍋に入れ、かぶるくらいの水を注いで中火でゆでる。柔らかくなるまで火が通ったら鍋に残った水分を捨て、粉ふきいもの要領で少し火を強めて水気を飛ばす。火を止め、マッシャーやフォークなどで粗くつぶし、塩、バター、牛乳を加えてペースト状に仕上げる。オーブンを190℃に温める。
④のマッシュポテトを3にのせ、木べらで平らにならしながら全面を覆う。フォークで表面に筋をつけてオーブンに入れ、筋状にくっきりと焼き色がつくまで30分ほど焼いて完成。お好みでサラダやパンを添えて。
ながお ともこ●フードコーディネーター。オンラインストア、SOUPsを展開。「オリジナルのオーブンウェアが2年越しでようやく完成し、ほっとしているところ。2サイズのオーバル型のグラタン皿です」




