上質を知る、14人にリサーチ。「あなたの贅沢はなんですか?」

「贅沢」とひと口に言っても、その価値観はそれぞれ。さまざまなものに触れてきた人々にとって、本当の豊かさとは?それは決してひけらかすためではなく、もっと個人的で自分の心を灯すもの。 人となりを表す物選びを、熱量たっぷりのコメントとともに紹介する。

サンタ・マリア・ノヴェッラのポプリ

サンタ・マリア・ノヴェッラのポプリ
ポプリ(100g)¥4,840/サンタ・マリア・ノヴェッラ銀座(サンタ・マリア・ノヴェッラ)

1221年、世界最古の薬局としてフィレンツェに誕生したサンタ・マリア・ノヴェッラ。慈愛と癒やしの信念は今も変わらない。ブランドを象徴するアイテムのひとつ、ポプリは数世紀にわたって自社の工房で丁寧に作り続けられている。使用されているのは、ローレル、ラベンダー、タイム、ローズマリー、シダーウッドなど香り高い植物。小皿に少し出すだけで、豊かな自然の中にいるような空間に。

私が私であるために、 常にまとっていたい香り

〝匂いフェチ〟の門脇さんが愛してやまないのが、サンタ・マリア・ノヴェッラのポプリだ。トスカーナ地方に自生する草花や植物の実が複雑に絡み合う、ナチュラルなフローラルノートにファンが多い。「まだ香水という概念がない幼少期、バニラビーンズやラベンダーを手首にこすりつけて登校していたほど香りもの好き。そんな私が〝ひと鼻惚れ〟したのが、10年ほど前に知人が使っていたこのポプリの香り。『やっと探していた香りにたどり着いた!』というほどの感動がありました」

今では、自宅のいたるところに置いて、芳香で満たしている。門脇さんにとって、大好きな香りに包まれている瞬間が何よりの贅沢。「ずっとまとっているので、ないと落ち着きません。帰宅してこの香りを胸いっぱいに吸い込むと、いかに日頃呼吸が浅くなっているかよくわかります。このポプリは、常に私をニュートラルに保つ大切な存在。気持ちをフラットに戻してくれる、かけがえのないお守りです」

門脇麦プロフィール画像
Actor門脇麦

1992年生まれ。2011年のデビュー以降、映画やドラマなど幅広く活躍。舞台『ねじまき鳥クロニクル』に出演。日本テレビ系日曜ドラマ「厨房のアリス」が来年1月スタート。

開化堂の茶筒

開化堂の茶筒
銅製茶筒[手前](取込盆用120g)¥19,800・[中央](長型200g)¥20,900・[奥](40g)¥17,600/開化堂

文明開化まっただ中の1875年、開化堂は京都で創業した。当時は珍しかった丸銅製造の草分けとして愛されること約150年。今もなお初代の製法を守り、手作りしている。大量生産ではかなわない、装飾を排した美しいデザインと湿気から食品を守る高い気密性を両立。さらに銅製の茶筒は日々使用すると2、3週間で色みや光沢に変化が生まれ始める。何げない日常の歴史を刻んでくれるのだ。

物のバックボーンまで知り、 確かな価値を見つめたい

アーレムさんにとっての贅沢は、背景やルーツを知り、感動できること。「金額ではなく、自分自身が納得し信頼できるかが大切です。そういう意味では、最近友人が贈ってくれた開化堂の茶筒は、とても特別。ひとつずつ手仕事で仕上げる職人の技術は唯一無二。常に最高のものを作ろうとする姿勢に感銘を受けました。お店で、『アーレム』とカタカナで刻印してもらえたのもうれしかった。美しく使い心地も快適で、毎朝お茶を淹れるときに私の心を満たしてくれます。信じられる背景にこそ、物の価値は宿っているのです」

その美学は仕事にも共通する。先日アーレムさんは、クラシックスタイルをモダンに再構築するファッションブランド、ゴシェールとのコラボレーションを発表した。「いつもはアイウェアと顔の関係性を考えますが、今回は服のためにデザインしました。ルック全体を想像しスタイルを提案。パリシックの真髄を背景に感じるこのブランドに、最大限の敬意を表しました」

Ahlem Manai Plattプロフィール画像
DesignerAhlem Manai Platt

パリ生まれ。アクネ ストゥディオズやミュウミュウなどで経験を積んだのち、2014年にアイウェアブランド「アーレム」を設立。長らくLAを拠点に活動していたが、現在はこよなく愛するパリに再び帰ってきた。

サンルイの「フォリア」ポータブルランプ

サンルイの「フォリア」ポータブルランプ
「フォリア」ポータブルランプ¥404,800/エルメスジャポン(サンルイ)

サンルイの工房を囲む、豊かな森から着想を得た「フォリア」コレクション。美しいカットが施されたクリスタルが、木漏れ日のようなやわらかい光と影を映し出す。「仕事柄時間に追われ、忙しなくしていることが多い日々。たまに仕事が一段落したときは、夜寝る前にこのランプをつけて、ゆっくりと過ごします。もともと山が好きなので、この明かりを見つめ、街にいながらも森を思う時間が贅沢。キャンドルブランドLOの焚き火の香り『ember remember』を一緒に灯すのがお気に入りです」。充電式で4段階の調光が可能。床や棚の上など、自由な置き場所で楽しめるのがうれしい。(Stylist:Natsuko Kaneko)

listudeの「vision」スピーカー

listudeの「vision」スピーカー
「vision」スピーカー(ホワイトオーク仕上げ)¥219,000(2台1セット)・専用スタンド¥21,000(2台1セット)/listude

数値では表せない音楽の素晴らしさを表現するために、音質はもちろん空間におけるスピーカーの佇まいまで研究。正八面体の「ビジョン」は、360度どこへでもクリアな音が広がる設計だ。置き型のほか、天吊り設置も可能。「初めてこのスピーカーを通して音を聞いたとき、まるで音楽が降ってくるかのような感覚になりました。それがあまりに気持ちよくて。後日出力に深いこだわりを持って制作されていることを知り、自宅に迎えることにしました。どこに設置したら音がどんなふうに聞こえるか、配線はどうすればよいかなどにも親身なアドバイスをいただき、そのホスピタリティも含め贅沢なお買い物でした」(Stylist:Naoko Shiina)

ロエベのシャツ

ロエベのシャツ
シャツ¥152,900/ロエベ ジャパン クライアントサービス(ロエベ)

ロエベのシャツを数枚所有している飯島さん。好きなポイントは一枚で決まるところだ。「スタイリストなのに、自分のスタイリングが苦手なんです(笑)。朝、ロエベのシャツが視界に入るたびに『今日は考えなくていいんだ』と安堵します。カジュアルに着たいときは洗濯中に脱水をかけずシワを伸ばして干し、ドレスアップしたいときはきちんとアイロンをかける。素材がいいからこそ、扱い方を変えるだけでさまざまな質感を楽しめます。新作のホワイトとブルーストライプのレイヤードデザインは、本当にコーディネートいらず。考えなくていいシャツは、私にとって最強のアイテムです」(Stylist:Tomoko Iijima)

ドリス ヴァン ノッテンの服

ドリス ヴァン ノッテンの服
リバーシブルコート¥476,300/ドリス ヴァン ノッテン

「毎年、ドリス ヴァン ノッテンのアイテムを少しずつ買い足していくことが私の贅沢。時間がたっても決して色褪せることがありません。一枚一枚が素敵ではありますが、過去と今のウェアが合わさると、自分の想像を超えた新しい発見があり日々に喜びを与えてくれる存在です」。日本上陸当時からずっと購入しているが、昔のものも手放すことができないという浜田さん。セルフヴィンテージとの組み合わせを楽しむのは、深い愛とともにブランドを長く見続けてきた人だけが得られる至福のとき。2023-’24年秋冬コレクションに登場したコートはリバーシブル仕様。ランウェイでも緻密なフラワープリントを露出してまとっていた。(Stylist:Fusae Hamada)

ディオールのバージャケット

ディオールのバージャケット
ジャケット¥670,000/クリスチャン ディオール(ディオール)

ウールとシルクの混紡素材を使用した定番ジャケット。小さめのノッチドラペルと、ウエストを絞ったシルエットがエレガント。「一見シンプルなのですが、袖を通した瞬間感動! クラシックなフォルムとハリのある生地感に加えて、着心地のよさが素晴らしい。高額ではありますが、『人生のどんなシーンもこれさえあれば』と思わせてくれる心強い一着です」(Stylist:Mayu Yauchi)

ショーメの「ジョゼフィーヌ」ネックレス

ショーメの「ジョゼフィーヌ」ネックレス
「ジョゼフィーヌ」ネックレス〈WG、ダイヤモンド、アクアマリン〉¥805,200/ショーメ

「背景のあるジュエリーに感情を揺さぶられます。約200年以上にわたってメゾンのミューズに君臨する皇后ジョゼフィーヌ。躍動感あるペンダントトップのデザインから彼女の独創的で自由な精神を感じます。身につけるだけで軽やかなマインドを授けてもらえるよう」。ペアシェイプカットのアクアマリンとブリリアントカットのダイヤモンドを交互にセットした。(Writer:Mai Ueno)

エルメスのリップバーム

エルメスのリップバーム
リップバーム¥9,020/エルメスジャポン(エルメス)

「普段、化粧をあまりしない私でも使いやすく、大人の嗜みとして強い味方に。持っているだけで気分が上がる美しいパッケージにもパワーをもらえます。日用品でもあるリップバームにエルメス、だなんて心がとろける贅沢さ。頻繁にコスメを買わないからこそ、いいものを少しだけ持つようにしています」。蜜ろうとキャンデリラワックスが唇をしっとりなめらかにケアしてくれる。(Photographer:Mai Kise)

ロロ・ピアーナの「コクーン」ソックス

ロロ・ピアーナの「コクーン」ソックス
レッグウォーマー¥85,800/ロロ・ピアーナ ジャパン(ロロ・ピアーナ)

上質なラウンジウェアを提案する「コクーン」コレクションより。「寒がりではない私も、この極上でふわふわな肌ざわりの虜に。ベビーカシミヤにハグされているようなリッチな質感が素晴らしく、防寒というより"癒やし"の意味が大きいです。直接肌に触れるものに投資し、ME TIMEを豊かにすることは、大人になったからこそできる余裕。これこそが真のラグジュアリーかもしれません」(Editor:Akane Chuma)

Cece Jewelleryのリング

Cece Jewelleryのリング
リング(左から)〈K18YG、ダイヤモンド、シードパール〉¥649,000・〈K18YG、ダイヤモンド〉¥649,000・〈K18YG、ダイヤモンド〉¥880,000/Cherish(Cece Jewellery)

2021年設立のジュエリーブランド。「SNSで1年ほど前に出合ったCeceが、ついに日本上陸。タトゥーのような繊細なイラストに、リボン、パール、ダイヤモンドと大好きなものばかり詰め込まれています。仕事柄数々のリングを目にしますが今のところ人生でNo.1の可愛さ。いつかデザイナーに会いビスポークの機会を狙いたいです」。モチーフはシャンルヴェ エナメル技法で描かれている。(Stylist:Yuuka Maruyama)

アルバート・ラドシーのドローイングアート

アルバート・ラドシーのドローイングアート
ドローイングアート(販売時額装予定)各¥43,780(予定価格)/fernweh(Albert Radoczy)

何十年も妻を描き続けたNYのアーティスト、アルバート・ラドシーの作品。「アート自体はもちろん、それを買う行為も非常に贅沢。彼の初期のドローイング作品は日本の居住空間にもなじむので、アート購入の入り口になったらうれしいです。僕にとっては買い付けるまでの、現地の有識者との出会いや、熱心な作品解説もかけがえのないもの。自分に新しい引き出しが増える瞬間です」(「fernweh」Owner:Tsubasa Mizoguchi)

ソフィー ブハイのハンドミラー

ソフィー ブハイのハンドミラー
ハンドミラー¥436,700/エスケーパーズオンライン(ソフィー ブハイ)

「手のひらに収まるくらいの小さな鏡です。シルバーでかたどられたシェルのシェイプがなんとも可愛い! ほかにもオニキスやラピスラズリなど、素材のバリエーションも豊富です。コンパクトなのに重いので、実用性には欠けるのが正直なところ(笑)。でも、オブジェのように眺めていたくなるビジュアルは、リップを塗るたびに心を満たしてくれます」。LAで一つひとつ丁寧にハンドメイドで制作。アンティーク調の質感で、置いておくだけでも様になる。(Stylist:Maiko Kimura)

Kaare Klintの「ファーボチェア」

Kaare Klintの「ファーボチェア」
「ファーボチェア」¥666,600/ロゴバ 東京店(カール・ハンセン&サン)

1914年、デンマークのファーボ美術館のためにデザインされた名作。「実家の父の書斎で使われている椅子です。前脚の直線と後ろ脚の曲線の対比が何とも言えない美しさ。背面の端正な編み、座面のしっとりとしたレザー使いと、どこをとってもうっとりします。父と同じように、私もこの椅子に座って、本を読んだり考え事をしたいと、ずっと焦がれていました。まだ自分の家に迎えることはできていませんが、かなえてみたい夢のひとつです」(Stylist:Naomi Shimizu)

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