【磯村勇斗】の郷土菓子紀行。世界の甘味を知り、新しい扉を開く

お菓子作りが上手な母の見よう見まねでスウィートポテトを自作したこともあるという磯村勇斗さん。甘いものも旅も愛する磯村さんは今、世界のスイーツに興味津々だ。初めて訪れた国に驚きや共感をもって味わうことができる各国の伝統菓子。その楽しみ方を「郷土菓子研究社」の林周作さんに教わりたどってみよう

磯村勇斗プロフィール画像
俳優磯村勇斗

1992年生まれ、静岡県出身。俳優。2014年にTVドラマでデビュー。精力的に映画にも出演し、実力派俳優としての呼び声も高い。『月』(’23)や『正欲』(’23)など硬派な作品にも出演。2024年1月より、宮藤官九郎脚本によるTVドラマ「不適切にもほどがある!」に出演。  

林 周作プロフィール画像
菓子職人林 周作

1988年生まれ。菓子職人。2008年にエコール辻大阪フランス・イタリア料理課程を卒業。世界の郷土菓子の面白さに惚れ込み、2012年6月から自転車でユーラシア大陸を横断。現在も時間を見つけては世界を巡っている。世田谷区太子堂にアトリエとテイクアウト専門の郷土菓子研究社を構えている。 

カヌレ in フランス

磯村勇斗
アンビバレントなカヌレの魅力にもフィットするディオールのスーツスタイル。ニットに描かれたピンクの「カナージュ」モチーフも美しい。ジャケット¥520,000・ニット¥270,000・パンツ¥320,000・ブローチ¥185,000・リング¥84,000(すべて予定価格)/クリスチャン ディオール(ディオール)
カヌレ
仏・ボルドー由来。仏語で"溝のある"という意味。外は硬く、中がふわりと柔らかくバニラが優しく香る

HAYASHI "食感好き"な日本人に響く、フランスの銘菓

「これまでに調査した郷土菓子は500種以上、訪問国は50カ国以上にわたります。僕のショップ郷土菓子研究社でも昔から人気なのがカヌレです。日本人は食感にこだわることが多いので、外がカリッとして中がフワッとしたところも好みかもしれません。本場の仏・ボルドーのカヌレって日本のものよりも不揃いで焼き加減も適当なんです。その中から柔らかさの具合など、自分の好みを店員に伝え、会話しながら選ぶ過程も楽しい。そのラフさも郷土菓子として長く定着した理由ですね」

ISOMURA これぞギャップ萌え。食感の楽しさを味わいたい

「カヌレはもともと好きで、自分で買いに行くこともあります。家で温め直して食べるのも絶品ですよね。外と中の食感のギャップが好み。カンヌ国際映画祭で弾丸渡仏したことがありますが、アイスもチョコレートも何でもおいしい。母がよく作ってくれていたからか、焼き菓子全般が好きです」

太陽餅 in 台湾

磯村勇斗
アブストラクトなパターンがクールなプラダのトップス。オリエンタルな配色に潜むのはエイリアンという遊び心も粋。シャツ¥291,500・外にはいたショートパンツ(参考色)¥161,700・中にはいたショートパンツ(参考色)¥127,600・サングラス¥73,700(すべて予定価格)/プラダ クライアントサービス(プラダ)
太陽餅
もちっとした餡が詰まったパイ菓子。繊細な層の生地が幾重にも重なり、ほろっと口の中で溶けるよう

HAYASHI 複雑なパイ生地作りに、職人魂が燃える

「太陽餅は台湾中部の郷土菓子。パイ生地は欧州では小麦粉の生地にバターを練り込むんですが、こちらのパイ生地はラードと小麦粉で作ります。何層にも重ねているのに欧州のサクッとしたものに比べてしっとりと軽やかに仕上がっているのはそのため。現地で15種類以上食べ比べたり、台湾太陽餅博物館を訪れて作り方の研究を重ねるうちに、中の水飴と餡の分量で口溶けのよさが変わることを発見。試行錯誤するうちに奥深さにハマりました。素朴で優しい味と食感で、今ではうちの看板商品です」

ISOMURA どこかに懐かしさを感じさせる郷愁の味

「パイ生地の中に餡が入っているお菓子、日本にもよくありますよね。近いものが台湾でも人気と聞いて、ますます行きたくなりました。粉の風味が強い生地と中の餡のしっとりした食感のバランスも絶妙。ちょうどバナナマンのラジオのPodcastを聞いて台湾のおいしいものが食べたいと思っていたところです」

ルークチュップ in タイ

磯村勇斗
新しいエレガンスの定義に挑んだドリス ヴァン ノッテンの新作。あえてリラクシングに仕立てたサルトリアルなジャケットにきらめくスパンコールのショーツが新鮮。ジャケット¥233,200・ショートパンツ¥149,600・グラデーションショートスリーブ¥130,900・シャツ¥130,900・サンダル¥72,600/ドリス ヴァン ノッテン
ルークチュップ
原料は緑豆とココナッツミルクのペースト、トウモロコシ、ナス、マンゴスチンなど。見た目も可愛らしい

HAYASHI 郷土菓子からその国の歴史が垣間見える

「ルークチュップは野菜やフルーツをかたどったお菓子。かつてポルトガルと交易が盛んだったタイ王国で、マジパン細工のアーモンドの代用品として緑豆餡を使ったのが始まりだそう。バンコクでは路上からデパ地下まで幅広く売られています。一番外側に寒天の層があるのですが、噛んだ瞬間にプチッと弾ける瞬間がたまらないです。ふわりと口の中に広がるココナッツの香りも爽やかでおいしいですよ。ちいさい造形にこだわったところも日本の練り切りみたいでちょっと共感できるのではないでしょうか」

ISOMURA 誰かとこの体験を分かち合いたくなる、ユニークなお菓子

「プチッという食感が面白いですね。中はしっとりと甘く、異なる味がココナッツの風味でまとまっていますね。どこか異国情緒もあるのが楽しい。一度みんなに体験してみてほしい味です。プライベートでタイは行ったことがあるんですが、辛い料理ばかり食べていて。お菓子も食べればよかったな」

ブッチェッラート in イタリア

磯村勇斗
オーバーサイズのシルエットは、どこかモダンさもたたえて。凛としたグリーンのタイがフレッシュなムードに誘う。シャツ¥193,600(予定価格)・ジャケット¥440,000・パンツ¥214,500・ネクタイ(参考色)¥61,600・リング(上)¥61,600・(下・指つけ根)¥74,800/ボッテガ・ヴェネタ ジャパン(ボッテガ・ヴェネタ)  アイウェア¥51,700/ケリング アイウエア ジャパン カスタマーサービス(ボッテガ・ヴェネタ)
ブッチェッラート
シチリア発祥。クッキー生地の中にスパイスを練り込んだラム酒漬けのドライフルーツとナッツがぎっしり

HAYASHI みんなでワイワイと楽しんでほしい、遊び心あるケーキ

「ブッチェッラートはイタリアのクリスマスに食べる郷土菓子といわれていますが、僕が出合ったのは4月のシチリアだったので、地域によっては季節を問わず食べられると思います。大きな輪っかにドライフルーツがのっている見た目に惹かれ思わずホールで購入。ナポリに向かう船の中で乗客と分け合って食べたのも思い出です。クッキーのようにサクサクした生地の中に、スパイスやお酒に漬けたドライフルーツなどを合わせたフィリングがぎっしり詰まって贅沢。ラードの生地でさっぱりした味わいです」

ISOMURA パーティが始まりそうな予感がする、具材のにぎやかさが最高

「切ると断面にみっちり具材が入っていて驚きます。レーズンやシナモンの香りがフワッと漂って、それだけで"イエーイ"って言いたくなるようなパーティ感がありますね。2023年のコレクションで一瞬だけミラノに滞在したけど、おいしいものばかりでした。またゆっくり訪れてみたいな、イタリア」

ツガーキルシュトルテ in スイス

磯村勇斗
マチュアに着たいピンクのトランスペアレントなジャケットはレイヤリング次第で表情も多彩に。素材の重なりを楽しんで。ジャケット¥115,500・ニット¥86,900・タンクトップ¥44,000/Acne Studios Aoya ma/(Acne Studios)  シルバーチェーンネックレス¥52,800・シルバー、ゴールドネックレス(ロング)¥59,400・リング(人さし指)¥69,300・(薬指)¥40,700/トムウッド 青山店(トムウッド)
ツガーキルシュトルテ
1921年にスイス中部ツークの菓子職人が考えたケーキ。地元では小さい子どもたちも好んで食べる

HAYASHI 風光明媚なスイスでくらったパンチのある味が忘れられない

「料理学校に通っていた20歳ぐらいの頃、ヨーロッパに3カ月滞在し、お菓子を食べてまわる旅をしました。スイスのツークという湖の美しい街にたどり着き、そこで食べて衝撃を受けたのがツガーキルシュトルテです。薄いピンク色の粉砂糖がかかった優しそうな見た目なのに、一口食べたらお酒がガツンときいてくる。さくらんぼの蒸留酒である"キルシュヴァッサー"をふんだんに使っているんです。スポンジ生地とメレンゲ生地が層になっていて、食感の楽しさもありますよ」

ISOMURA 裏切りこそが大人のスイーツの証し

「可愛いなと思ってデートを申し込んだら、とんでもないパンチのきいたフレーズを飛ばしてくるおてんば娘って感じですね、このケーキ(笑)。でも実はすごく大人な味で、クリームも上品です。僕が初めて自主製作した映画の舞台が東京とスイスを行き来する物語だったので、一度は行ってみたいんです」

薬果 in ソウル

磯村勇斗
あえて無名の白い花を配したエレガントなパジャマセットアップ。上品な艶がノーブルなスタイリングに導いてくれる。シャツ¥374,000/ヴァレンティノ インフォメーションデスク(ヴァレンティノ)
薬果
贈答品にも好まれる。作り手によって材料や大きさもさまざま。ジュワッと口の中に広がる油と甘さがクセになる

HAYASHI 近くて、遠い感じがする、新しい食感が面白い

「小麦粉、米粉、ごま油、はちみつ、焼酎、しょうが汁、シナモン、こしょうなどの材料を加えて練り、花形に型抜きし、低温の油でじっくりと揚げてシロップに漬けたもの。かつては宮廷でも供された韓国の郷土菓子としてスタンダードですよね。韓国の甘味はいろいろな種類があるのですが、油を使うものが多いです。ホットクとかもそうですが、仕上げにシナモンを使っているのも特徴的だと思います。韓国のおしるこにもシナモンが入っているんですよ。日本よりもスパイスの使い方がうまいなと思って、注目しています」

ISOMURA ほのかに香るシナモンに旅心をくすぐられる

「噛んだときにぎゅっと硬いんだけど、あとからサクッと。小麦と油とはちみつを濃厚に感じられます。この歯ごたえはクセになりそう。親しみのある味だけではなくて、初めて出合う食感から海外を感じられる経験は楽しいですね。近いのに実は韓国に行ったことがなくて。本場の韓国料理を今年こそは!」

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