【神保町最新ガイド】世界から熱視線を浴びる、文化と歴史の交差点

今世界中のアーティストやセレブリティの注目を集める神保町。その魅力は古書店街を中心とした、独自のカルチャーにある。来日したアーティストBlondshellとともに、奥深きこの街の魅力に触れる

矢口書店

矢口書店
ドレス ¥279,400・靴¥132,000/ステラ マッカートニー カスタマーサービス(ステラ マッカートニー)

歴史風情漂う外観を今に残しながら靖国通り沿いに佇む矢口書店。大正7年創業の、映画や演劇等にまつわる専門古書店だ。外壁一面に建てつけられた本棚は、圧巻。店内も床から天井まで商品が並んでおり、書籍や雑誌はもちろん、パンフレットやポスター、DVD、カセットテープなど幅広く取り揃えている。貴重な資料も見つかることから、俳優や映画監督などクリエイターの来訪も多い。

古書店が放つ重厚感とは対照的な、軽やかなミニドレスをまとって。ケープ状のスリーブが、球体のようなダイナミックなシルエットを描き出す。ハリのあるリサイクルポリエステルは空気をたっぷりと含み、まとう人のボディを優しく包み込む。「自由に動けるドレスが好き! ゆったりとしていてグランジのムードも感じます」。

矢口書店
ドレス¥726,000(予定価格)/バーバリー・ジャパン(バーバリー)

胸もとを飾るのは、なめらかなビスコースが作り出すハンカチーフヘム。エレガンスを印象づけるアシンメトリーのドレスには、あえてエッジのきいたハードウェアのプリントを。さらにストラップやヘムラインに施したアイレットディテールがパンキッシュなムードを加速させる。反骨精神が薫る一着は、創作への飽くなき意欲をかき立てるこの場所にこそふさわしい。

 

東京都千代田区神田神保町2の5の1
03-3261-5708
営業時間:10時あ30分〜18時30分、11時30分〜17時30分(日・祝日)
定休日:無休(年末年始を除く)
http://yaguchishoten.jp/

学士会館

学士会館
ジャケット¥88,000(参考価格)/THE WALL SHOWROOM(ワイ プロジェクト) パンツ¥66,000/3.1 フィリップ リム ジャパン(3.1 フィリップ リム) 靴゙¥133,000/エドストローム オフィス(クレージュ)

旧帝国大学出身者の交流の場として誕生した学士会館。建築家の高橋貞太郎が設計を手がけたビルディングは、1928年に開業した。2003年には有形文化財に登録され、現在は誰でも利用可能なホテル、レストラン、会議室、結婚式場を備える複合施設に。クラシカルさとモダンな魅力が共存する意匠で、多くの人に愛され続けている。2024年12月をもって休館するため、その前にぜひとも訪れておきたい場所だ。

「歴史を感じさせる設えが印象的。重厚感のある建築の中で、食事をしている人がいたり勉強している人がいたり。開かれた様子に驚きました」。カットアウトが施されたデニムジャケットに、ニットパンツのモダンなカジュアルスタイルで。

学士会館
ジャケット¥275,000・スカート¥242,000・イヤリング¥92,400・ブーツ¥203,500(すべて予定価格)/セリーヌ ジャパン(セリーヌ バイ エディ・スリマン)

神保町に来たなら時代を彩ったあらゆるジャンルのスターたちのアーカイブスに触れるのも楽しみのひとつ。2000年代初頭のポップスターとパンクの美学を融合したスタイルで気分を高めて。オーセンティックなアイテムをマイクロミニ丈にすることで、ツイストのきいたルックが完成。

 

東京都千代田区神田錦町3の28
03-3292-5936
https://www.gakushikaikan.co.jp

PASSAGE bis!

PASSAGE bis!
トップス¥184,800・スカート¥286,000/THE WALL SHOWROOM(ピーター ドゥ)

ビルのエレベーターに乗って3階に上がると、広がるのは異国情緒あふれる空間。ここは共同書店「PASSAGE by ALL REVIEWS」が手がけるブックカフェだ。ベーシックなメニューのほかに烏龍茶ベースのフレーバーティーも提供する。フードは神保町の名店「ドース イスピーガ」や「さゝま」のお菓子が並ぶのもうれしい。棚主がキュレーションした個性あふれる書棚を見て回りながら、穏やかな時間を過ごしたい。

ニットでできた4つの輪をバンデージ状に組み合わせたユニークなトップスは、オフショルダーなどさまざまな着こなしを楽しむことができる。プリーツを施したハイウエストのラップスカートも、アシンメトリーなデザイン。動くたびに肌がのぞく設計だ。自由なアイデアで洗練された着こなしができるスタイリングと、知的好奇心を解放する時間を過ごしたい。

 

東京都千代田区神田神保町1の15の3 サンサイド神保町 3F
営業時間:12時〜19時 不定休
https://passage.allreviews.jp

レコード社本店

レコード社本店
ドレス¥484,000・ピアス¥110,000/サンローラン クライアントサービス(サンロー ラン バイ アンソニー・ヴァカレロ)

創業90年を超える老舗のコンセプトは「レコードの歴史、 レコード文化の継承」。ジャンル問わず取り扱い、所蔵数は実に10万枚! SP盤は、明治、大正、昭和時代のものを特に注力して揃えている。1階は日本の音楽、2階はポピュラー音楽、3階はクラシック音楽で構成。レコードのほかに、CDや蓄音器なども豊富に並び、世界中から音楽マニアが足を運ぶショップ。

最後の目的地はレコードショップ。ここには時を経ても色あせない音楽を求める人が集う。まとうのはドット柄のチュールで仕立てたミニドレス。時代を超えて引き継がれるメゾンのパターンで歴史に思いを馳せる。「日本はネオンの明るさがやっぱり違いますね。脳にいい刺激をもらっている気がします(笑)」。

 

東京都千代田区神田神保町2の26
03-3262-2553
営業時間:11時〜20時、〜19時(日)
https://www.recordsha.com

Blondshell 初来日で神保町を来訪

90年代のグランジやオルタナティブを感じさせる楽曲で、若者から当時を知る大人まで幅広い世代を魅了するBlondshell。神保町を来訪した前日には、ライブハウスWWW Xで初来日公演があった。その経験を彼女は「とても楽しかった!」と笑顔で語る。セルフタイトルアルバム『Blondshell』の楽曲を中心に披露した中で、お気に入りは「Sepsis」だ。「作っている曲と作りたい曲にはどうしてもギャップが生じます。でもこの曲は理想の形にできた手ごたえがあったんです」。

歌詞は恋愛にまつわる内容で、普段人間関係から着想を得ることが多いという。「何かのきっかけに対して、人はどう心が動き、どう行動をするのかに興味があるんです。本も友人とのつながりや、コミュニティの構築に関する内容のものをよく手に取ります。今は川上未映子の『乳と卵』を読み進めているところ。さまざまなことから学びを得て、楽曲にはありのままの自分を反映しているんです。普段の私を感じてほしいので、基本的に自宅で制作しているんですよ」。

その意識はステージ衣装にも表れている。「普段のライブではTシャツやデニムを選ぶようにしています。ステージは等身大の自分を見せる場所だと思うから。私は常に、自分以外の何者にもなろうとしていないんです。でも、ハイファッションも好きなので、こういう撮影は楽しい。今日はたくさんかっこいい衣装を着ることができてうれしかったです」

 

Profile
NY生まれ、LA育ち。シンガーソングライター。2022年に活動を開始し、同年シングル「Olympus」でデビュー。評論家をはじめ、各方面から注目を集める存在に。昨年4月には、セルフタイトルアルバム『Blondshell』をリリース。

神保町フリークの行きつけの店

この街に詳しい"あの人"は、どんなスポットを楽しんでいる?老舗から新店までおすすめをご紹介

サロン書齊

サロン書齊

髙橋優香さん
ブックキュレーター。小宮山書店に5年間勤務し、2023年に独立。昨年アポイント制のブックストア「Hi Bridge Books」を代々木八幡にオープン。

アートピースを傍らにお酒を嗜む社交場

「大人が楽しめる場所を」との思いで、アートや写真集を専門とする小宮山出版の飲食部が同ビルの5階に31年前にオープン。文豪、経営者、政治家など、そうそうたる面々が訪れてきた名店だ。「細江英公氏が撮影した三島由紀夫のポートレートプリントや荒木経惟氏のドローイングなど、貴重な作品が店内に飾られています。年代ものの調度品に囲まれていると、まるでタイムスリップしたような気持ちに。わいわい盛り上がるのではなく、素敵な空間で静かにお酒と会話を楽しむ雰囲気が素晴らしいです」。開店当初から一貫してスタッフは全員女性。若い世代や一人客も温かく歓迎してもらえるため、気軽に足を運んでみて。

1・2 写真集『薔薇刑』(集英社)に収録された三島由紀夫の大判プリントがひと際存在感を放つ。ほかにも、夏目漱石の手紙、ウィリアム・クラインのプリント、井上ひさしの色紙など、普段なかなかお目にかかれない品々が飾られている。オーナーが定期的に変える花のアレンジにも注目を。下の階にはカラオケルームも用意されている

東京都千代田区神田神保町1の7 小宮山ビル 5F
03-3259-1234
営業時間:18時~23時
定休日:土・日曜
チャージ料¥3,000
Instagram: @salon_shosai

ブックハウスカフェ

ブックハウスカフェ

柚木麻子さん
小説家。2008年『フォーゲットミー、ノットブルー』でオール讀物新人賞を受賞。最新短篇集『あいにくあんたのためじゃない』(新潮社)が現在発売中。

記憶に残る読書体験を提供するために

2017年オープンの絵本と児童書の専門書店。大人にもファンが多く幅広い年代の人が訪れる。本を選ぶだけでなく心に刻む時間を過ごしてほしい、とカフェを併設した。「まるで英国児童文学に迷い込んだような、二本の大理石でできた柱、煉瓦仕上げ、天井の高いドラマティックな路面店。らせん階段や壁一面の本棚で囲まれたカフェにわくわくします。書店員さんたちが心から推薦する児童書のみを並べているので、本を読むのがただただ楽しかったあの頃に戻り、時間を忘れてしまう」。原画展や読み聞かせなどのイベントを毎日開催。さまざまな施策には、子どもたちが大人になって、また子どもを連れてきてほしいという願いが込められている。

3 ビルの裏手にある扉を開けるとバーが出現! ランプが点灯しているのが開店中の印
4 開放感あふれる店内の真ん中にカフェスペースを設置。

東京都千代田区神田神保町2の5の3 北沢ビル 1F 03-6261-6177
営業時間:11時〜18時 無休(年末年始を除く)
https://bookhousecafe.jp

キッチンカロリー

キッチンカロリー

ぼる塾 田辺さん
芸人。お笑いカルテット「ぼる塾」のメンバーとして活躍中。YouTube「ぼる塾田辺の食べるわよチャンネル」が好評。「神保町よしもと漫才劇場」に所属し、定期的にステージに立つ。

愛があふれる"高カロリー飯"がここに

「お気に入りのメニューはカニクリームコロッケ鉄板焼! 鉄板のおかげで熱々の状態で食べられます。おなかが空いてるときのごはんに最高。口いっぱいに頰張れる幸せを満喫できます」。昭和28年に洋食店として創業してすぐ、パスタの上にニンニクじょうゆで味つけした牛バラ肉を盛った名物のカロリー焼きが誕生。当時神保町は戦後間もない学生街だったため「おなかいっぱいになれるカロリーたっぷりなものを作ろう!」という思いが始まりだった。有機の玉ねぎやイタリア産パスタなど、厳選した素材を使用。令和になった今も「安い、ボリューム満点、おいしい」の三拍子揃った料理で愛され続けている。

5 カニクリームコロッケ鉄板焼(¥890)。味噌汁がつくのは平日のみ。カロリー焼きの上にベシャメルソースから手作りするコロッケをトッピング 

東京都千代田区神田小川町3の10 江本ビル 1F
03-3291-3266
営業時間:11時〜16時
定休日:木曜

神保町やきそば威風みかさ

神保町やきそば威風みかさ

佐藤栞里さん
2001年にモデルデビュー。多くのファッション誌で活躍する一方、タレントとしても人気に。仕事などで神保町に通うこと15年以上。 

もちもち麺と濃厚ソースに悶絶!

メニューはやきそばのみの、行列ができる人気店。その秘密は毎日お店で製麺している生麺にある。調理前にゆでてから焼くことで、ハリツヤのあるもちもちとした食感に。具材を炒める香ばしい醤油ベース、卵の上にかける甘辛い追いがけ用、など風味の異なるソースを駆使して奥行きのある味わいを作り上げている。「父に教えてもらったのが来店のきっかけ。いい意味で"べったべた"の濃厚なソースが、具材と麺にこれでもかと絡まります。たくさん頰張ると口の中が幸せでいっぱいに! さすが親子、私の好みをよく知ってるな〜と父とハイタッチした思い出も」

6 もやし、キャベツ、ねぎ、豚バラ、卵が入ったやきそば(¥900)。ソースのほかに塩も用意。プラス¥100でイカとエビのトッピングも可能

東京都千代田区神田神保町 2の24の3
03-3239-5110
営業時間:11時〜21時(売り切れ次第終了)
定休日:日曜
http://mikasain.com

PASSAGE by ALL REVIEWS

PASSAGE by ALL REVIEWS

佐々木静代さん
神保町にある韓国書籍専門のブックカフェ「チェッコリ」の宣伝広報担当。イベント開催、書籍の取り寄せ代行、スペース貸し出しなども行なっている。 

本を介したコミュニケーションスペース

フランス文学者の鹿島茂さんがプロデュースする一棚貸しの共同書店。書評サイト「ALL REVIEWS」の利用者が推す本が並ぶ実店舗があったら面白い!という発想から生まれた。「作家や出版社、研究者、翻訳者などさまざまな人々がセレクトした書棚は、個性があふれていて、新しい本との出合いの宝庫。同じ本屋として、そのワクワク感をどうすれば自分たちにも生かせるのか、と刺激をもらっています」。オリジナルシステムで商品を管理し棚主の負担を軽減。WEB上で売れた本の発送も行う。徒歩1分の場所には、約600棚を備える3店舗目の「PASSAGE SOLIDA」が先日オープン。

7・8 パリの古書店をイメージした美しい店内。一棚¥5,500〜誰でも棚主になることができる。新刊、古書のほかポストカードなどの雑貨も販売可能。作家の棚にはサイン本も多く並ぶ

東京都千代田区神田神保町1の15の3 サンサイド神保町ビル 1F
営業時間:12時〜19時 不定休
https://passage.allreviews.jp

girotondo

girotondo

窪田裕介さん
山梨県北杜市長坂にあるヨーロッパのナチュラルワイン専門店「Soif」のオーナー。今年1月、神保町に「Soif Tokyo」がオープン。山梨と東京で二拠点生活を送る。 

仕入れから提供まですべてが丁寧な本格イタリアン

「季節の素材を生かした滋味あふれるイタリアの郷土料理と、厳選されたナチュラルワインが抜群においしい。体と心に染み渡ります。大切な人と伺いたいお店です」。イタリアで修行をしたオーナーソムリエの村上さんとシェフの阿部さんが営む。おいしいことは最低条件で、生産者の想いやサステイナビリティも考慮して仕入れを行なっている。料理とワインはお客さんの好みを考慮しながら的確におすすめし、満足してもらうために常にベストを尽くしている。

9・10 イタリア産グリンピースを使った手打ちパスタ、タリオリーニ(二人分¥2,600・写真は一人前)。ワインはヴィンテージも用意。グラス(¥1,000〜)、ペアリング(2杯分¥2,800〜)

東京都千代田区神田神保町1の36の1 新神保町ビル 1F
03-5244-5245
営業時間:17時〜24時、15時〜22時(土)
定休日:日曜
Instagram: @girotondo_jinbouchou

Tea House TAKANO

Tea House TAKANO

林士平さん
マンガ編集者。『チェンソーマン』や『SPY×FAMILY』など話題作を担当。仕事で神保町に通うこと18年。

こだわりの一杯に癒やされて

日本で2番目に誕生した紅茶専門店で、今年10月1日に創業50周年を迎える。「茶葉の種類が豊富で、どこか懐かしい空気が流れているのが魅力。連載作家さんとの打ち合わせでよく利用しています。品種の説明がしっかり書いてあるメニューを読むのも好きで、毎回違うものを頼み味の違いを楽しんでいます」。オーナーの高野さんが毎年さまざまな産地の出来をチェックし「おいしい!」と思ったものだけを提供。抽出に適した100度をキープしながら淹れた極上の1杯を求めて客足が絶えない。

11・12 ミルクでいただくセイロンティー(¥600)。ポットやカップはすべてオリジナル。手作りのスコーンはブレッドウォーマーにのせて提供(2個¥500)

東京都千代田区神田神保町1の3 寿ビル B1
03-3295-9048
営業時間:11時30分〜19時、〜18時30分(土・祝日)
定休日:日曜
https://www.teahouse-takano.com

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