【WING】「アジアのベストレストラン50」のシェフが手がける、中国料理の美しき新境地
ナスを編み込み、自家製のオリジナルソースに漬け込んだ「煙燻酸汁茄子」。
躍進するスターシェフの一皿を、29階の特等席で味わう
活気あふれる中環(セントラル)の街歩きやギャラリー巡りを楽しんだ後に、旅のハイライトとして訪れたいのが、「The Wellington(威靈頓大廈)」29階にある「WING」。今、世界中の美食家が熱視線を送る、香港ガストロノミーの最前線だ。シェフ兼オーナーのヴィッキー・チェンは、中国料理を新たな解釈で提示する気鋭の料理人。2025年の「アジアのベストレストラン50」で3位、同時に「世界のベストレストラン50」でも11位に名を連ねるなど、国際的な舞台で確固たる存在感を見せている。 チェンが掲げるのは、広東料理の枠を超えた「Refined Chinese Cuisine(洗練された中国料理)」。中国各地の素材や調理法を緻密に研究し、フレンチで培ったロジックを活かして、中国料理を再定義。現代的に昇華させた。素材のポテンシャルを極限まで引き出す調理法や美しいプレゼンテーション、ワインと中国茶との麗しいペアリングで、知的な好奇心を存分に満たしてくれるはず。中環のネオンを眼下に、伝統を更新し続ける香港のエネルギーを五感で享受して。
〈Editor’s Note〉 かつて「フレンチ×香港食材」のフュージョンで旋風を巻き起こしたヴィッキー・チェン。その彼が、あえて自身のルーツである「中国料理」に軸足を置き、真っ直ぐに表現した潔さに感動! 予約は争奪戦なので、旅のスケジューリングはここを起点にするのが正解。(エディターYOSHIMURA、以下同様)Profile: 香港旅の目的は、ほぼグルメ。滞在中に“おめかしダイニング”を挟むのがマイルール。自由度の高い、香港のワインシーンにも興味津々です。
Vicky Cheng(ヴィッキー・チェン)
Chef's PROFILE
Vicky Cheng(ヴィッキー・チェン) 2015年に先進的なガストロノミー「VEA」を開業し、「ミシュランガイド香港・マカオ 2017」で一ツ星を獲得。2021年に「WING」をオープン。「アジアのベストレストラン50」で上位ランク入りを果たすなど、国際的な評価を得ている。アジアのフードシーンを牽引する、今最も目が離せないスターシェフの一人。
モスグリーンを基調にしたシックな空間が料理を引き立てる。
WING 29F, The Wellington 198 Wellington Street, Central, Hong Kong 営業時間:18時〜、18時30分〜、19時〜の3部制、ランチは金曜のみ13時〜、13時30分〜の2部制 定休日:日曜https://wingrestaurant.hk/
【TATE Dining Room】「アジアの最優秀女性シェフ」が奏でる、エディブル・ストーリーズ
(上)自家製のバックウィート・ヌードル(蕎麦)にトマトのコンフィを添えた一品。ブラッディ・マリーに見立てたビーフブロスの冷製スープとともに楽しむ。(下)3種の「プティ・サレ」。ピータンのミモザや里芋のクロケットなど、中国料理の食材を宝石のようなフィンガーフードに仕立てた。※メニューは季節ごとに異なる。写真の2品はイベントで振る舞われた特別メニュー。
フレンチ×中国料理の可能性を追求
骨董店が並ぶ上環(ションワン)のハリウッドロード沿いに佇むのが、「TATE Dining Room」。「ミシュランガイド香港・マカオ 2025」にて二ツ星に輝くこちらのテーブルで展開されるのは、女性シェフのヴィッキー・ラウが紡ぐ“エディブル・ストーリーズ(食べられる物語)”だ。 グラフィックデザイナーとしての経歴を持つラウの料理は、視覚的な美しさはもちろん、一皿ごとに表現される詩的な構成が最大の見どころ。コースは、「Ode to Scallop」や「Ode to Kumquat」など、“素材へのOde(オード/頌歌)”をテーマに、爽やかな前菜から華やかなメインまで、まるで一編の詩を読み進めるように供される。その独自の美学に彩られた世界観では、フレンチの洗練と中国料理のアイデンティティが縦横に織り交ざり、見事に調和。単なる食事を超えて、食の叙情詩を味わうような特別な体験ができる。圧倒的なセンスが導く至福のひとときを、ぜひ実際に訪れて感じてほしい。
〈Editor’s Note〉 現代を象徴するクリエイターとして評価されているヴィッキー・ラウはセンスの塊で、その美意識がメディアに取り上げられることも。見目麗しい料理の数々に、心躍ること間違いなしです!
Vicky Lau(ヴィッキー・ラウ)
Chef's PROFILE
Vicky Lau(ヴィッキー・ラウ) NYでグラフィックデザインを学び、広告界を経て料理の道へ。2015年に「アジアの最優秀女性シェフ」を受賞。独自の審美眼を活かし、多彩な料理で世界を魅了する。
東洋の植物が描かれた金の壁紙など、アジアのムードとモダンな家具が調和した、温もりのある空間。五感で料理と会話に集中してほしいという思いから、テーブルには「スマホ専用」の引き出しがある。
TATE Dining Room G/F, 210 Hollywood Road Sheung Wan, Hong Kong 営業時間:ディナー 18時〜24時(火曜〜木曜)、18時30分〜24時(金曜・土曜)/ランチ 12時〜16時(金曜・土曜) 定休日:日曜・月曜https://www.tate.com.hk/
【Bakehouse】名ホテル出身のペストリーシェフが、エッグタルトを再定義
Bakehouseの看板メニュー。「Sourdough Egg Tart」。1個14 HKD
サステイナブルな発想から生まれた、サワードゥのエッグタルト
フォーシーズンズホテルなどで腕を磨いたペストリーシェフのグレゴワール・ミショー。香港のベーカリーシーンを再定義するという思いを掲げてオープンした「Bakehouse」は、今や香港で行列が絶えない場所の一つ。 この店の名を一躍轟かせたのは、自家製サワードゥの生地を使ったエッグタルト。その美味しさの核となるのは、ミショーが18年以上も大切に育て続けてきたという天然酵母の「ロジャー」だ。ロジャーが醸し出す、サワードゥ特有の微かな酸味を帯びたパイ生地は、驚くほど軽やかでクリスピー。実はこれ、クロワッサンを作る際に出た生地の余りを無駄にしたくないという思いから、エッグタルトに使ったのが始まりだそう。リッチなカスタードクリームとのコントラストは、ストリートフードの域を超えた、本格的な仕上がり。SNSでも瞬く間に拡散され、今では「世界一のエッグタルト」と称賛する声も絶えないが、その魅力の根底には、シェフのサステイナブルな美意識が息づいている。焼き立てをその場で頬張る口福を、ぜひ、現地で!
〈Editor’s Note〉 行列必至の人気店なので、開店直前に訪れるのが正解。サクサクのパイ生地に、こっくりしたカスタードクリームのエッグタルトは、旅の疲れも吹き飛ぶおいしさです。何個でも食べられる小ぶりのサイズ感もうれしい。
Grégoire Michaud(グレゴワール・ミショー)
Chef's PROFILE
Grégoire Michaud(グレゴワール・ミショー) スイス出身。世界各地の著名なホテルやレストランで研鑽を積む。フォーシーズンズホテル香港のエグゼクティブ・ペストリーシェフを経て、2018年に「Bakehouse」をオープン。以来、香港のパン文化に革命を起こし続けている。
クロワッサン、パン・オ・ショコラなどのペストリーのほか、焼き菓子類も評判。パン&ベイク好きなら一度は訪れたい。湾仔(ワンチャイ)店には、イートインスペースあり。
Bakehouse Wan Chai G/F, 14 Tai Wong Street East, Wanchai, Hong Kong 営業時間:8時〜21時(月曜〜木曜)、8時〜21時30分(金曜〜日曜、祝日) 定休日:無しhttps://www.bakehouse.hk/ ※上記のほか、香港に7店舗あり
【Little Bao】“ストリート・ガストロノミー”の名手が、バオをモダンに再構築
香港のブランド鶏「三黄鶏(スリーイエローチキン)」を使用した、「Fried Chicken Bao」。1個108HKD
バオが香港ストリートフードの新たなアイコンに!
香港の街歩きで出合う楽しさは、伝統的な飲茶や定番の屋台料理だけにとどまらない。近年では、カジュアルなストリートフードに一流の技と哲学を注ぎ込み、新たな価値を与える“ストリート・ガストロノミー”の潮流がある。その中心にいるのが、メイ・チョウ率いる「Little Bao」だ。 2013年に中環で開業した「Little Bao」は、香港のソウルフードである「包(バオ)」を、ハンバーガースタイルで再解釈したパイオニア。オーナーシェフのメイ・チョウは「アジアの最優秀女性シェフ」を受賞した実力派で、彼女ならではの自由で遊び心のあるアイデアがメニュー全体に色濃く反映されている。例えば、ジューシーなフライドチキンを挟んだバオは、ジャンクな見た目を鮮やかに裏切る繊細な味わいが魅力。一流の手で小粋にアップデートされたバオは、香港の“ストリート・ガストロノミー”を体験する格好の入口になりそうだ。
〈Editor’s Note〉 ハイブランドやセレクトショップが集まるショッピングモール「Fashion Walk」で、買い物を楽しんだ後に立ち寄るのがおすすめ! 看板メニューの「Fried Chicken Bao」は、もっちりした食感が楽しいバオに、さくさくのフライドチキンの組み合わせが絶品。オリジナルカクテルやクラフトビールとのペアリングも楽しい。
May Chow(メイ・チョウ)
Chef's PROFILE
May Chow(メイ・チョウ) カナダ生まれ。2017年に「アジアの最優秀女性シェフ」を受賞。伝統的な香港のコンフォートフードを世界的な感性で再構築し、食文化を牽引する。LGBTQ+支援など、社会活動でも知られる。国際的なメディアにも多数出演。
銅鑼湾(コーズウェイ ベイ)店はテーブル席があり、ゆったり食事ができる。クラフトビールバー「Second Draft」も併設されているので、タップビールと一緒にバオを楽しみたい!
Little Bao DINER 9 Kingston Street, Causeway Bay, Hong Kong 営業時間:12時〜22時(LO 21時/日曜〜木曜)、12時〜23時(LO 22時/金曜・土曜) 定休日:無しhttps://www.little-bao.com/ ※セントラルにも店舗あり