先月はクラフトビールの注目株、 サワーエール を紹介しましたが、今月はワインにフォーカスします! 今年4月に北海道と北海道大学が“北海道ワインバレー”(各地域でワイン産地が集積し発展する北海道全体を指す名称)を提唱したり、フランスの銘醸地・ブルゴーニュの老舗ワイナリーが函館に進出したりと、ワイン産地として国内のみならず世界的にも熱視線を浴びている北海道。
日本ワインに強い酒屋、IMADEYAの営業企画部・白土暁子さんいわく、「北海道は近年、小規模の新ワイナリーが増えています。冷涼な気候で雨が少なく、ワイン産地として優れているだけでなく、各ワイナリーがその利点を踏まえながらそれぞれの個性をいかしたワインを造っているところが魅力」とのこと。そう聞くと、実際に飲んでみたくなっちゃいますよね……! 今回は比較的新しいワイナリーを中心に、北海道産ワインの魅力に迫ります。
まるで葡萄ジュース!? 華やかな香りに心奪われる「Yoi Yoi Hour 2019」
Yoi Yoi Hour 2019(750ml/アルコール度数10%) ¥3,300/OSA WINERY
最初に紹介するのは、非常に華やかな香りをもつスパークリングワイン「Yoi Yoi Hour(ヨイヨイアワー) 2019」。 造っているのは北海道・小樽の街なかにあるOSA WINERY。ワイン好きの長(おさ)さん夫婦が一念発起して、ワイン造りにふさわしい土地を求めて全国をまわり、たどり着いたのが北海道。福岡から移住して、2015年に“幸せのワイン”をコンセプトに掲げて創業したワイナリーです。できるだけ添加物を使わず丁寧なワイン造りを心がけ、葡萄の栽培から販売までを一貫して手がけるOSA WINERYが目指すのは、香りがよく、日々の食事に合うワイン。「Yoi Yoi Hour 2019」もまさにその通り! マスカットを思わせる甘い香りは、飲む前から楽しい気分になってしまうほど。葡萄は自社畑産を100%使用。華やかな香りをもつ白葡萄のナイアガラに黒葡萄のツヴァイゲルトを少しブレンドして、味わいにふくよかさや厚みをプラスしているのが特徴です。 葡萄ジュースのように親しみやすい香りをもちながら、飲んでみるとコクやほどよい酸味、かすかな渋味があり、バランスのよい味わい。細やかな泡も心地よく、ぐいぐい飲み進んでしまいます(笑)。ナイアガラとツヴァイゲルトを組み合わせたワインってめずらしいように思いますが、これはナイスコンビ! 長さんのおすすめは「きりっと冷やして食前酒にするほか、焼鳥や串焼き、中華、エスニックとも好相性です」。中国茶を思わせるオリエンタルなニュアンスがあるので、中華やエスニックと合いそうですね。マジックアワーをイメージしたラベルもキュートなので、手土産やギフトにもぴったりだと思います。
爽やかさと旨味をあわせもった、二度おいしいワイン「que sera 2020」
que sera 2020(750ml/アルコール度数11%) ¥2,860/さっぽろ藤野ワイナリー
続いて紹介するのは、2000年から約10年がかりで葡萄栽培に取り組み、2009年から醸造をスタートしたさっぽろ藤野ワイナリーのワイン。自社畑と契約農家による北海道産の葡萄を使い、できるだけ添加物を使用せず、自然に寄り添ったワインを造っています。 「気取らず、日常的に楽しんでもらいたい」と、1,000円~2,000円台と良心的な価格で販売されているのも特徴。ワインショップや飲食店からの支持も厚く、私も信頼しているワインショップのSNSでこちらを知りました。「que sera 2020」は、葡萄畑にこだわった「VINYARDシリーズ」のワイン。上質な葡萄が多く栽培されていることで知られる北海道・三笠市達布産のバッカスを100%使用した白ワインです。 バッカスはドイツでうまれた白葡萄。マスカットやハーブ、白い花などを思わせる華やかな香りが特徴です。「que sera 2020」はバッカス特有の香りや爽やかな味わいに加えて、糖度の高い貴腐葡萄を少し使っていることから、しっかりとした旨味やコクがあってふくよかな印象も。爽やかさと旨味をあわせもった1本ですね。キンキンに冷やして飲めば爽やかさが際立ち、飲むうちに少し温度が上がってきたら旨味が感じられるという……1本で二度楽しめるワインと言えるかもしれません。ワイナリーいわく、自然な造りのため、いずれにしてもしっかり冷やして早めに飲みきるのがおすすめとのこと。また、酸味のある料理と合わせるのがベストマッチだとか。サラダやシーフードのマリネのほか、スパイシーなエスニック料理も好相性な予感。爽やかな味からちょっとクセのある味わいまで、幅広い料理に寄り添ってくれそうなワインです。
経験豊かな醸造家兼ソムリエと酒屋がコラボして造った、完成度の高いロゼワイン「サンパ 2020」
【IMADEYA限定ワイン】平川ワイナリー サンパ オリジナル ロゼ2020(750ml/アルコール度数11.5%) ¥4,400/IMADEYA
最後に紹介するのは、チャーミングな色からして気分が上がるロゼ。冒頭でもコメントを紹介した、日本ワインに強い酒屋 IMADEYAと北海道・余市を拠点とする平川ワイナリーがコラボレーションして誕生したワインです。 平川ワイナリーは、数々の著名なフランスのワイナリーで葡萄栽培とワイン醸造に携わり、日仏のレストランやホテルにソムリエとして勤務した平川敦雄さんが2015年に設立。栽培、醸造、テイスティング、サービスについて豊富な知識と経験をもつ醸造家兼ソムリエによるワイナリーです。 「サンパ」は2019年から造られているワイン。「先入観をもってほしくない」という平川さんの考えから葡萄の品種は非公開ですが、2020年は白ワインの比率を上げて飲みやすくしたそう。「ロゼだけだと肉料理にも合うしっかりとした味わいですが、白ワインで軽やかさを加えました。ガストロノミックな料理に合う緻密できめ細かな造りが特徴の平川さんのワインを、より親しみやすく仕上げています」とは、「サンパ」のアッサンブラージュ(ブレンド)にも参加したIMADEYAの白土さん。 飲んでみると、ベリー系のチャーミングな香りがありつつ、味わいはドライで食中酒向き。きれいな果実味とコクがあり、単品で飲んでもおいしいですが、料理と合わせることでより威力を発揮しそうなワインです。 「白ワインを20%ブレンドしたことで柑橘のような風味が加わり、旨味と酸味のバランスがぐっとよくなりました。ナンプラーを使ったエスニック料理や生春巻きなど、旨味のある魚介系の料理がおすすめ」と白土さん。やや低めのアルコール度数で飲みやすさを備えながら、しっかりとした味わいでボリュームがあり、さっぱりした味付けであれば鶏や豚の肉料理とも合いそう。親しみやすいけれどメイン級の料理にも匹敵する強さをもった、完成度の高いワインです。
今回は、世界的にもワイン産地として注目を浴びている北海道にフォーカスしました。ごくごく飲みたいものからボリュームのあるワインまでタイプはさまざまですが、共通しているのは上質な葡萄と丁寧な造りからうまれるクオリティの高さ、価格とのバランスのよさ。これから北海道が名だたる世界の銘醸地に匹敵する存在になるのではないかという予感がします。 魅力的なワイン揃いで選び難いですが、今回の「ベストうち飲み大賞」はチャーミングな色と香り、完成度の高さを備えた「サンパ 2020」 にしたいと思います。今回紹介したほかにも、新進気鋭のワイナリーが増えている北海道。恵まれた気候や土壌をもつ土地で、老舗から若手まで個性あふれる造り手が切磋琢磨することで、より豊かなワイン産地になっていくのではないかと。ぜひ今後も注目していきたいですね!
【うち飲み向上委員会メンバー】門前直子(もんぜん なおこ) 食べること&飲むことが大好きなフリーランスエディター/ライター。エンゲル係数がやたら高いものの、日々見て見ぬ振り。セレクトショップ「ガリャルダガランテ」から昨年スタートしたライフスタイルライン「カーサ ガリャルダガランテ」では、期間限定で販売するフード&ドリンク(ワインや日本酒、シードルなど)のセレクトを担当。 https://www.instagram.com/gkgkmgmg/?hl=ja