旬の【栗スイーツ】と【ナチュラルワイン】のベストペアリング!福田里香さん×bulbul店主鈴木純子さんがセレクト【うち飲み向上委員会vol.30】

食欲に誘われるように、酒欲もぐんぐん高まる秋。今回のうち飲み向上委員会では、スイーツ界とワイン界の“おいしい”の達人である、菓子研究家の福田里香さんとワインショップ「bulbul」店主の鈴木純子さんをゲストにお迎えし、甘美なペアリングを探求! 福田さんのおすすめ栗スイーツにぴったりのナチュラルワインを鈴木さんが選び、めくるめく美食ワールドの扉がオープン。さらに福田さんによる秋の果物を使ったデザートレシピもご紹介し、秋の宴にふさわしい豪華な内容でお届け!

秋の味覚・栗スイーツとナチュラルワインをとことん堪能!

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エディターAKIYAMA(以下A)今回は、食いしん坊&お酒好きの心を射抜くことを、前もって宣言します! 福田さんお墨付きの栗スイーツと、名だたる著名人のフーディが信頼を寄せる鈴木さんがペアリングしたナチュラルワインですから!

福田里香さん(以下F)プライベートでも、ワイン選びの際は相談させてもらっていて。信頼しているので、純子さんが言う通りに無条件に買っています(笑)。栗スイーツにどんなワインを合わせたのか楽しみ!

鈴木純子さん(以下S)光栄です、ありがとうございます(笑)。今日は絶品栗スイーツのペアリングに加えて、ワインとデザートを合わせるコツもお伝えできればと思います!

ライターYOKOMIZO(以下Z)福田さんにはオリジナルのデザートレシピも教えていただきました。恒例の「ベストうち飲み賞」の発表もあります! 最後までお見逃しなく〜!

栗粉のカヌレとシンクロする蜜味の泡「ガズゥイ 2020」

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栗粉のカヌレ¥540/メゾン ウィズ アーツ&サイエンス、ガズゥイ 2020〈750㎖〉¥4,620/ブルブル(シルヴァン・マルティネズ)

A カヌレってガツンとしっかりした味な印象でしたけど、これは軽やかで甘みも上品ですね!

F 今カヌレブームだけど、栗粉のカヌレはもっと人気が出てもいい気がするんです。 メゾン ウィズ アーツ&サイエンスのカヌレはフランス産の栗粉、種子島のきび砂糖などこだわりの食材で作られていて、栗本来の自然な甘みや香りがあっておすすめ!

S カヌレのペアリングに選んだガズゥイはナチュラルワインを飲み始めたばかりの人も素直においしいと感じてもらえる一本です。アプリコットのような酸に蜜っぽさもあり、甘酸っぱい味わい。

Z みずみずしく、梅酒のような風味があってスイスイ飲めちゃいます! 泡にされた理由は?

S まずカヌレは甘みが強いから、きちんと残糖があるような甘めのワインがいいですね。と言っても葡萄が持っている甘みだけで作っているガズゥイはキュートな甘酸っぱさですし、さらに泡があることで爽やかさも。栗粉のカヌレとワインの後味のテンションを合わせてみました!

Z 余韻のテンション……! なんという鋭い感覚と感受性なんでしょうか!

F 純子さんの味覚は、顕微鏡の拡大倍率が違うような感じがするんですよ。まるでマクロの世界を覗いているかのような。そのレベルの半分にも私は達していないけど、分析力も素晴らしくて話を聞くのが好きなんです。わかったふりしてウンウンって言ってます(笑)。

栗蒸し羊羹と桃の葉の予想外なケミストリー「ペルセギン2016」

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栗蒸し羊羹¥1,728/ちもと、ペルセギン2016〈500㎖〉 ¥3,520/ヴィナイオータ(ポッサ)

F ちもとの栗蒸し羊羹は竹皮に直接栗と餡を流して蒸しているから、竹の香りが残っているのがポイント。栗もごろっと贅沢に使われているんですよ。

S イタリアの北西部に位置するチンクエ・テッレに、 野生の桃の葉をアルコールに漬け込み、ワインと砂糖を加えたペルセギンという伝統的なリキュールがあります。このワイナリーのペルセギンは砂糖もアルコールも添加せず、白ワインに40日間桃の葉を漬け込んだナチュラルなもの。桃の葉由来のタンニンと複雑な味わいが、栗と小豆に合うと思い選びました!

F 桃の葉がいい仕事していますね。言われないと普通のワインではないことがわからないくらいさりげないけど、なんだか違う味がしておいしい! 小豆を煮た時のような香りに似ている気がして、料理だったら豆の煮込みみたいなものとも合いそう。

S おっしゃる通り! 思いがけない味や香り、それが自然発酵のワインの面白いところなんです! 

Z フード王国の殿上人であるお二人のお導きが尊い〜! このありきたりではないペアリングをぜひ皆さんにも体験していただきたいです。

マロン コンフィの甘みを優しく受け止めるオレンジワイン「レ・マン・リーブル2020」

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マロン コンフィ〈6個入り〉¥3,219/ジャン=ポール・エヴァン、レ・マン・リーブル2020〈750㎖〉¥4,400/ブルブル(リエッシュ)

F 今回は秋なので栗縛りにしてみたのですが、栗のお菓子といえばマロングラッセは外せない!

S  ジャン=ポール・エヴァンのマロン コンフィは甘みが強く、栗そのもので直球勝負だったので、杏のような甘酸っぱい甘みが立った軽めのオレンジワインをセレクト。ワインの酸味がアクセントになり、食べ進めるときに口の中をリフレッシュしてくれることも狙っています。

F これまたキレイなオレンジ色! マロン コンフィといえばバニラが効いているものが一般的だけど、これは風味がちょっとオレンジっぽくてワインとすごく相性が良いですね。

A スイーツには泡や赤のイメージがありましたが、今回鈴木さんがセレクトされたワインの多くが白とオレンジだったので、良い意味で裏切られました!

S デザートに合わせる場合、葡萄の残糖を残した甘口ワインが一般的ですが、ナチュラルワインは基本的に葡萄の完熟を待ってから収穫をしているので、果実味がしっかりあるものが多いんです。だから色にとらわれず自由に選んでください!

Z それは目から鱗なお話です、ワインから学ぶことって多いなあ。先入観にとらわれず自由な気持ち……恋愛も仕事も一緒ですよね。心を解き放てば、運命は動き出す!

A その妄想力は単純に韓国ドラマの見過ぎです!(笑)

岐阜グルメ・栗粉餅に寄り添うアロマ「キュヴェ ヌメロ ソワサント ユイット2018」

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栗粉餅8入¥810/恵那福堂、キュヴェ ヌメロ ソワサント ユイット2018 〈750㎖〉¥3,740/ブルブル(アレクサンドル・バン )

S 栗粉餅のペアリング、じつは一番悩みました……! 餅が難しかったんですけど、そぼろ状にした栗きんとんの味はシンプルで甘みが優しかったのでロワールで造られたアルザスワインを。複雑味がありつつもアロマティックな果実味や穏やかな丸みが栗粉餅に合うなと思いました。いかがでしょう?

F 野花のような華やかさとキレのいい酸も栗粉餅にぴったりでさすが! アロマティックというのはどういうことを言っているんですか?

S 葡萄による香りの違いが明確にわかることで、例えばこのワインだと、ちょっと白桃っぽい、甘やかな香りのことになります。もともとアレクサンドル・バンはソーヴィニヨン・ブランでワインを造っているんですけど、これはアルザスの葡萄を使って、ソーヴィニヨン・ブランのシュール・リー(澱)を重ねて長期熟成させています。ソーヴィニヨン・ブランを重ねることで、複雑味があり、より料理に合うようにチューニングもされていて。いつもと違う葡萄で造っても、造り手らしさがちゃんと伝わる良いワイン。

A これ好きだ〜っ、おいしいです! 

S 推しているワインの造り手なんですけど、ナチュラルワインは推しの造り手を見つけるとぐっと世界が深まりますよ!

A ワインでも推し活ができるんですか!?

S ひとりの造り手のワインを飲み継いでいく方が、ナチュラルワインを理解することになるかもって言っている造り手もいるくらい。メンターみたいなレストランやワインショップを見つけるのが初めの一歩で、そこから好きな造り手を見つけるのが次の一歩。そのうちにこの年は暑い年だったから果実味が強いなとか、だんだん風景が浮かぶようになってきますよ!

Z 福田さんは推しを見つけられましたか?

F いやいや私はまだそこまでは! でもワインって音楽に近くて好みがあると思うから、感性が合うメンターの純子さんに全幅の信頼を置いています。

S ありがとうございます! ワインは誰かの言う良い悪いじゃなく、自分の好みを大事にして欲しいです。

福岡名店発マロンパイのベストパートナー「ウララ」

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マロンパイ〈6個入り〉¥3,067/フランス菓子16区、ウララ〈750㎖〉¥5,280/ブルブル(クロ・マソット)

Z 福田さんイチオシのマロンパイは福岡の老舗フランス菓子店から。こちらはダックワーズを作ったシェフのお店なんですよね?

F そうなんです。パリの名店で勤めていらしたオーナーシェフが考案し、世界に旋風を巻き起こされて! 

A ダックワーズ大好きです! まさかの背景に驚きました。

F シェフが日本に帰ってきて、80年代の前半くらいに16区の人気は大爆発しました。店名の由来となったパリの16区は洗練されたおしゃれなスノッブな地区で、当時まだそんなことを知らない日本の女子たちにとっては16区のお菓子がパリを夢見るきっかけに。私も初めてパリに行った時は16区巡礼したものです(笑)。ダックワーズは一年中販売しているんだけど、秋の季節限定で出てくるのがこの栗がまるごと一個入ったマロンパイ。

Z サクサクのパイの中にマロンクリームと大きな栗が♡ 栗好きにはたまらないです!

S ペアリングで合わせたのはオレンジワインなんですけど、先ほどのものよりボリュームがあります。マロンパイに砂糖も乳製品もしっかり使われていて、かなり食べ応えがあるので白ワインよりは、ウララのようにマセラシオンをかけている、少し甘みの残ったワインが合うと思います。このピチッとした口に当たる微発泡な感じも、パイ生地と相性がいいですよ。

Z スイーツのボリューム感に合わせてワインを選ぶというのもひとつの基準になるのですね!

S そうですね! 栗粉餅や栗蒸し羊羹のような、乳脂肪分を使っていないようなお菓子なら、マセラシオンをかけてない、果実の甘みがある白ワインともうまくペアリングができると思います。

大人のチーズクッキーには赤ワインを果実ソースに見立てて「ル ケ ア レザン 2019」

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チージィーポッシュ¥3,600/ZAXFOX、ル ケ ア レザン 2019 〈750㎖〉¥4,070/ブルブル(ロパン)

A 栗スイーツではないですが、私が熱烈リクエストしたスイーツがこちら。福田さんがクリエイティブスタジオの「KIGI」と富山の洋菓子専門工房「ZAXFOX」とタッグを組んだクッキー缶で、メレンゲとペコリーノロマーノを使用したチーズクッキーが焼き加減を変えて2種入ってるんです。すごくお酒呑み好みの味わいなので、鈴木さんにペアリングをぜひ教えてほしいです!

S チーズにベリー系のソースを添えるイメージでワインを飲んでもらえたらいいなと、軽やかな赤ワインを選びました。 これはサンソーという品種で、ワインの世界だとサンソーは補助品種。すみれの花のようなスパイシーさがあって、ちょっと入れるだけでワインが変わるくらい良い役割をしてくれます。ナチュラルワインの作り手は自由な考えの人が多いので、サンソー100%で作ったりもしちゃう。2種のチーズクッキーを受け止められる複雑味があります。

Z 監修されたクッキーとの相性はいかがですか?

F すごくおいしいです!

Z クッキーを作ったときにどんなことを意識したのでしょうか? 

F そうですね。今流行っているクッキー缶は、大体5〜8種類の詰め合わせが多いでしょう。私、クッキー缶=アイドル説を唱えているんです(笑)。

Z え! 気になりすぎて、このまま聞き流せません(笑)! その説を教えてください!

F 缶はステージなんですよ。中に詰まっているクッキーがアイドル。現在よく見かける多種類詰め合わせ缶は、グループアイドル。一方でアイドルにはソロアイドルがいて、古くは松田聖子ちゃんとかキョンキョンとか。このクッキーは後者を作ろうというプロジェクトだったんです! 同じ生地の焼き具合を変えて2種類あるのは、アイドルなんだけど女優もやりますっていう意味で(笑)。真ん中のメレンゲはバックダンサーという構成です。

A このチーズクッキーは塩対応アイドルですよ! 媚びない魅力に沼落ちして何度でも握手会、つまりリピ買いしてしまうっ。

秋の果物のフロマージュブラン添え【福田里香さんのうち飲みスイーツレシピ】

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ガズゥイ 2020〈750㎖〉¥4,620/ブルブル(シルヴァン・マルティネズ)

今回使用したイチジクやシャインマスカットのほか、柿や洋梨など秋の果物をお好みで。フロマージュブランはデザート風ではあるけれど、チーズなのでワインとの相性は言わずもがな。粗糖をふりかけることで食材の味が引き立ち、じゃりっとした食感も楽しい。果実と砂糖の甘みには、爽やかなガズゥイがぴったり!

秋の果物のフロマージュブラン添え
[材料](適量)

秋の果物(今回はイチジクとシャインマスカットを使用) 適量
くし形に切ったレモン 1切れ分
市販のフロマージュブラン 適量
粗糖 適量

[作り方]
❶イチジクとシャインマスカットを食べやすい大きさに切る。
❷果物を皿に盛り付け、レモンを絞りかける。
❸❷にフロマージュブランを添え、上から粗糖を振る。

ワインのお問い合わせ先:
ブルブル
https://bulbul.co.jp/wine-shop/

ヴィナイオータ
http://vinaiota.com/

【うち飲み向上委員会メンバー】

福田里香
菓子研究家。雑誌や書籍で活躍するかたわら、食品関連の商品開発も手掛ける。著書に『季節の果物でジャムを炊く』『民芸お菓子』、共著に『R先生のおやつ』がある。家飲みは頭が痛くならない自然派ワインで。アテはチョコやチーズケーキなどで結局甘党です。Instagram:riccafukuda


鈴木純子
ワインショップ「bulbul」店主/アタッシェ・ドゥ・プレス。食やライフスタイルの分野でPR・ブランディングを担う一方で、自然派ワインに魅せられ、フランスを中心に造り手を訪問することをライフワークに。和食に、だし感のあるワインを合わせるのがマイブーム。Instagram:bulbul_du_vin


ライターYOKOMIZO
おいしいお酒とごはんのためなら、高い海外輸送費も厭わず即ポチ。苦手な家事は休日に大好物の泡を飲みながらやっつけます。最近は海外の料理番組を観て、妄想トラベル。

エディターAKIYAMA
お酒はもっぱら外でハシゴ酒だったのが、ここ1年でうち飲みの魅力に開眼! おいしいお酒を飲みながら、ほろ酔い気分で愛猫と遊ぶのが至福の時間。

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