S イタリアの北西部に位置するチンクエ・テッレに、 野生の桃の葉をアルコールに漬け込み、ワインと砂糖を加えたペルセギンという伝統的なリキュールがあります。このワイナリーのペルセギンは砂糖もアルコールも添加せず、白ワインに40日間桃の葉を漬け込んだナチュラルなもの。桃の葉由来のタンニンと複雑な味わいが、栗と小豆に合うと思い選びました!
F 桃の葉がいい仕事していますね。言われないと普通のワインではないことがわからないくらいさりげないけど、なんだか違う味がしておいしい! 小豆を煮た時のような香りに似ている気がして、料理だったら豆の煮込みみたいなものとも合いそう。
S おっしゃる通り! 思いがけない味や香り、それが自然発酵のワインの面白いところなんです!
Z フード王国の殿上人であるお二人のお導きが尊い〜! このありきたりではないペアリングをぜひ皆さんにも体験していただきたいです。
S 葡萄による香りの違いが明確にわかることで、例えばこのワインだと、ちょっと白桃っぽい、甘やかな香りのことになります。もともとアレクサンドル・バンはソーヴィニヨン・ブランでワインを造っているんですけど、これはアルザスの葡萄を使って、ソーヴィニヨン・ブランのシュール・リー(澱)を重ねて長期熟成させています。ソーヴィニヨン・ブランを重ねることで、複雑味があり、より料理に合うようにチューニングもされていて。いつもと違う葡萄で造っても、造り手らしさがちゃんと伝わる良いワイン。
A これ好きだ〜っ、おいしいです!
S 推しているワインの造り手なんですけど、ナチュラルワインは推しの造り手を見つけるとぐっと世界が深まりますよ!
A ワインでも推し活ができるんですか!?
S ひとりの造り手のワインを飲み継いでいく方が、ナチュラルワインを理解することになるかもって言っている造り手もいるくらい。メンターみたいなレストランやワインショップを見つけるのが初めの一歩で、そこから好きな造り手を見つけるのが次の一歩。そのうちにこの年は暑い年だったから果実味が強いなとか、だんだん風景が浮かぶようになってきますよ!
Z 福田さんは推しを見つけられましたか?
F いやいや私はまだそこまでは! でもワインって音楽に近くて好みがあると思うから、感性が合うメンターの純子さんに全幅の信頼を置いています。
Z 福田さんイチオシのマロンパイは福岡の老舗フランス菓子店から。こちらはダックワーズを作ったシェフのお店なんですよね?
F そうなんです。パリの名店で勤めていらしたオーナーシェフが考案し、世界に旋風を巻き起こされて!
A ダックワーズ大好きです! まさかの背景に驚きました。
F シェフが日本に帰ってきて、80年代の前半くらいに16区の人気は大爆発しました。店名の由来となったパリの16区は洗練されたおしゃれなスノッブな地区で、当時まだそんなことを知らない日本の女子たちにとっては16区のお菓子がパリを夢見るきっかけに。私も初めてパリに行った時は16区巡礼したものです(笑)。ダックワーズは一年中販売しているんだけど、秋の季節限定で出てくるのがこの栗がまるごと一個入ったマロンパイ。
Z サクサクのパイの中にマロンクリームと大きな栗が♡ 栗好きにはたまらないです!
S ペアリングで合わせたのはオレンジワインなんですけど、先ほどのものよりボリュームがあります。マロンパイに砂糖も乳製品もしっかり使われていて、かなり食べ応えがあるので白ワインよりは、ウララのようにマセラシオンをかけている、少し甘みの残ったワインが合うと思います。このピチッとした口に当たる微発泡な感じも、パイ生地と相性がいいですよ。
Z スイーツのボリューム感に合わせてワインを選ぶというのもひとつの基準になるのですね!
S そうですね! 栗粉餅や栗蒸し羊羹のような、乳脂肪分を使っていないようなお菓子なら、マセラシオンをかけてない、果実の甘みがある白ワインともうまくペアリングができると思います。
A 栗スイーツではないですが、私が熱烈リクエストしたスイーツがこちら。福田さんがクリエイティブスタジオの「KIGI」と富山の洋菓子専門工房「ZAXFOX」とタッグを組んだクッキー缶で、メレンゲとペコリーノロマーノを使用したチーズクッキーが焼き加減を変えて2種入ってるんです。すごくお酒呑み好みの味わいなので、鈴木さんにペアリングをぜひ教えてほしいです!
F そうですね。今流行っているクッキー缶は、大体5〜8種類の詰め合わせが多いでしょう。私、クッキー缶=アイドル説を唱えているんです(笑)。
Z え! 気になりすぎて、このまま聞き流せません(笑)! その説を教えてください!
F 缶はステージなんですよ。中に詰まっているクッキーがアイドル。現在よく見かける多種類詰め合わせ缶は、グループアイドル。一方でアイドルにはソロアイドルがいて、古くは松田聖子ちゃんとかキョンキョンとか。このクッキーは後者を作ろうというプロジェクトだったんです! 同じ生地の焼き具合を変えて2種類あるのは、アイドルなんだけど女優もやりますっていう意味で(笑)。真ん中のメレンゲはバックダンサーという構成です。
A このチーズクッキーは塩対応アイドルですよ! 媚びない魅力に沼落ちして何度でも握手会、つまりリピ買いしてしまうっ。