SPUR11月号のフェルメールにちなんだ特集では、モデルではなくフェルメールが描いたモチーフに焦点をあててファッション誌としての提案をしたいというのが出発点でした。
そこで今回来日する作品の中で注目したのが『手紙を書く女』。フェルメールの作品には手紙や恋文というモチーフが多く出てくるのです。そして、「手紙」をテーマとするならぜひお願いしたいと思い浮かんだのが作家の原田マハ先生です。
キュレーターでもある原田先生に、フェルメールへの手紙を書いていただくことで、今回のテーマの核としたいと考えました。趣旨を先生に説明したところ、なんと先生からは「実はこの秋冬のÉCOLE DE CURIOSITÉSのテーマもフェルメールなんです」というお返事が。それを見て勝手に「運命!」と盛り上がったことは言うまでもありません。
ÉCOLE DE CURIOSITÉSとは、「モードとアートと文学の融合」をテーマにしたパリ発のブランドで、作家の原田マハさんがコレクションごとに掌編小説を書き、それをデザイナーの伊藤ハンスさんが服に落とし込んでいます。写真は今季のブランドのイメージビジュアルです。フェルメールブルーに包まれるモデルが美しく佇む姿が印象的。
誌面にモデルは全く登場しませんが、原田先生とフェルメールとSPURとファッション、全てがつながった今回の小さな偶然を象徴する一枚です。かくしていただいた原稿は、私たちがモデルでなく物にクローズアップをしてひとひねりしたように、原田先生もただのラブレターではなくてあるツイストを加えて手紙に魔法をかけてくださいました。ぜひこのラブレター、誌面でご覧ください。